第93話 体を拭かれて
私は風邪を引いて、お風呂に入れないので、今日はクラーナに体を拭いてもらうことになったのだ。
「さて、それじゃあ、服を脱がないといけないわね」
「あ、うん……」
クラーナは濡れタオルを持って来て、私にそう言ってきた。
体を拭いてもらうためには、当然服を脱がなければならない。しかし、それを私は少し恥ずかしく感じてしまう。
裸なんて、何度も見られたし、なんなら触られたというのに、何故こんなに恥ずかしいのだろうか。
恥じらいを失いたくないという気持ちもあるが、なんとか慣れたいものである。
「脱がせてあげるわ」
「え?」
私がそんなことを考えていると、クラーナがそう言い出した。
単純に、親切心から言ってくれているのだとは思うが、それは私の動揺を加速させる提案だ。
「アノン?」
「あ、いや、お願い……」
しかし、無下にする訳にもいかないので、私は服を脱がせてもらう。
クラーナは躊躇うこともなく、服を脱がせ、下着まで脱がせてくれた。私はとても恥ずかしくなってしまう。
「アノン、隠したら駄目よ。拭けないから」
「え? あ、そうだね……」
私は手で胸を隠そうとしたが、それもクラーナに止められてしまった。
そのため、クラーナに全てを見られてしまう。とても、恥ずかしい。
「それじゃあ、拭くわよ?」
クラーナは、そう言って濡れタオルを手に取る。下は後でということだろう。
少し救いなのは、クラーナも照れていることだ。これで平常心だったら、少しショックだった。
とにかく、いよいよ、体を拭かれるのだ。
私の体に、クラーナがタオルをつけてくる。その感覚に、私は少し驚いてしまう。
「あっ……」
「アノン? 大丈夫?」
「う、うん……大丈夫。温かくて気持ちいいよ」
濡れタオルは、丁度いい温度で、とても気持ちよかった。
ここでも、クラーナの気遣いを感じる。本当に、クラーナはいい子だ。こんな恋人がいて、私はなんて幸せなんだろう。
「……すー」
「うん? クラーナ?」
私が感銘を受けていると、クラーナから奇妙な音が聞こえてきた。
この音は、匂いを嗅いでいる音だ。
つまり、クラーナは私の匂いを嗅いでいる。
「クラーナ、何をしているの?」
「あ、ごめんなさい。ちょっと、いい匂いがして……」
「ク、クラーナ?」
どうやら、クラーナは私の匂いを嗅いでいたようだ。
クラーナは汗の匂いが大好きなので、我慢できなかったのかもしれない。
ただ、今は病人なので、あまりそういうことは控えて欲しいとも思ってしまう。
「それじゃあ、拭くのを再開するわね」
「あ、うん……」
そう言って、クラーナは再び私の体を拭き始めた。
温かくて濡れているタオルは、とても気持ちいい。
こうして、私はクラーナに体を拭いてもらうのだった。
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