第90話 安心させてくれるのは
私はクラーナとともに家に戻って来ていた。
風邪なので、私はベッドで大人しくしている。
「クラーナ、あんまり近寄ると、良くないよ」
そんな私の隣には、クラーナがいた。
クラーナは、食事を作る時以外は私の側から離れようとしないのだ。
「大丈夫よ」
「でも、風邪がうつるかもしれないし……」
風邪を移してしまうかもしれないため、近づくのは危険である。
何度もそう言ったのだが、クラーナは離れようとしない。私を心配してくれているからだとは思うが、風邪をうつしてしまはないかこちらの方が心配になってしまう。
「今、アノンと離れるなんて、絶対に嫌だわ。心配で、どうにかなってしまうもの」
「クラーナ……」
「それとも、アノンは傍にいて欲しくないの?」
「うっ……」
私の言葉に、クラーナはそう返してきた。
その言葉は、とても卑怯なものである。そう言われると、返せる言葉は一つしかない。
「クラーナが傍にいて、嫌な訳ないよ。とっても安心している」
「ええ、それなら問題ないわね」
「うん……」
結局、私はクラーナを受け入れざるを得なかった。
ああいわれた場合、そう答えるしか選択肢がないのだ。
「アノン……」
「ク、クラーナ……」
クラーナは、私にゆっくりと近づいてくる。
一緒のベッドだったが、今までは少しだけ間を開けていたのだ。それが、なくなり、クラーナと体が密着する。
「ペロ……」
「え……?」
クラーナは、私の頬を舐め始めた。
急なことに、私は驚いてしまう。
「クラーナ、どうしたの?」
「あ、ごめんなさい。心配だったから、つい……」
「心配だったから?」
私が聞いてみると、クラーナはそう答えてくれた。
ただ、その答えはよくわからない。心配だから顔を舐めるとは、どういうことなのだろうか。
「少し安心させたくて、舐めてしまったのよ」
「安心か……」
どうやら、クラーナは私を安心させたくて舐めたようだ。
確かに、顔を舐めてもらえると、クラーナの愛情を感じて、少しいい気分になった。
これは、安心したということなのだろうか。
「そうだったんだね。ありがとう、クラーナ」
「いえ、いきなり舐めて、ごめんなさいね」
「ううん。大丈夫……」
私はクラーナの頭をゆっくりと撫でた。
そのふわふわな髪が、気持ちよくて、私の心は癒されていく。
クラーナも、気持ちよさそうな表情をしてくれる。その表情も、私にとっては心地いいものだ。
「アノン、早く良くなってね」
「うん!」
クラーナがいてくれることで、私はどんどんと元気になれている気がした。
きっと、すぐに良くなるはずだ。
そう信じて、私は過ごすのだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます