第81話 その子に何があるのか

 私とクラーナは、ギルドにてリュウカさんと会った。

 どうやら、リュウカさんのパーティメンバーが風邪で休んでしまったらしく、替わりのメンバーとして私達を探していたらしい。

 残りのメンバーも問題ないそうなので、私達はそれを受けることにしたのだった。


「さて、それじゃあ、二人に紹介するな。といっても、アノンは知っているよな?」

「あ、はい」


 今私達は、残りのメンバーと顔合わせしている。

 私は、リュウカさんのパーティメンバーとは面識があるので、これはクラーナと残り一人の顔合わせということだ。


「こいつは、ティネ。こっちは、アノンとクラーナだ」

「久し振りだね、ティネちゃん」

「お、お久し振りです……」


 ティネちゃんは、リュウカさんのパーティで最年少の可愛い女の子だ。

 回復魔法を得意としていて、私もその実力は知っている。

 フードで頭を隠し、少々引っ込み思案なところもあるが、かなりいい子だ。


 私の隠していたことが知られてから初めての再会だったが、前と変わらない雰囲気だったので、少し安心する。


「……」

「……」


 しかし、ここで困ったことが起こった。

 クラーナとティネちゃんがお互いを見て、動かなくなったのだ。


 事前に、クラーナが獣人であるということは伝えてあったはずだが、驚いてしまったのだろうか。

 それで、クラーナがそれに反応してという流れかもしれない。


 ただ、少し変なのは、クラーナの様子である。

 クラーナは、ティネちゃんを見て、目を丸くしているのだ。

 その様子は、何かに驚いているようである。


「お、おい、ティネ、どうしたんだ?」

「クラーナ、何を驚いているの?」


 それに気づいた私とリュウカさんは、それぞれ問い掛けた。

 なんだか、不穏な様子なので、思わずそうしていたのだ。


「あ、いえ、なんでもないです」

「ええ、なんでもないわ」


 その質問に、ティネちゃんとクラーナはそう言ってきた。

 だが、明らかになんでもないことはない。恐らく、二人にしかわからない何かがあったのだ。

 このように示し合わせた答えが出るのも、違和感がある。


「本当に、なんでもないの?」

「ええ」

「ティネも、なんでもないのか?」

「はい……」


 さらに問い掛けても、二人はそう答えるだけだ。

 どうやら、二人とも話す気がないらしい。


「まあ、いいか……」


 そこで、リュウカさんは諦めた。

 こういう細かいことを気にしないのが、リュウカさんだ。


「そうですね……」


 私も、聞くのはやめることにした。

 違和感はあるが、そこまで気にすることでもない。

 それに、何からあるなら、今後わかるだろう。


「アノン……後で話すわ」

「え?」


 そう思った私に、クラーナが小声でそう言ってきた。

 リュウカさんにもティネちゃんにも聞こえないくらいの声でだ。

 やはり、何かあったらしい。


「それじゃあ、依頼に行くとするか」

「あ、はい」


 リュウカさんの言葉に答え、私達は依頼に向かうのだった。

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