第78話 その原因は恐らく……

 私はクラーナとともに夕食を作り、食べ終わっていた。

 それからしばらくして、お風呂の時間だ。

 そのため、私はソファから立ち上がろうとする。


「さて、アノン。今日は、どうしましょうか?」

「うん? どうしましょうかって?」


 しかし、クラーナがそんなことを聞いてきたので、動きを止めた。

 だけど、その言葉の意味が、よくわからない。


 どうするとは、なんのことだろうか。

 もしかして、お風呂に関わることかもしれない。

 ただ、思い当たる節がない。


「その、今日はしないのかという話よ」

「え?」

「最後まで言わないと、わからないかしら?」


 クラーナは、顔を赤くしながらそう言ってきた。

 その言葉で、私は理解する。

 クラーナが言っているのが、夜の話だということを。


 こんな時に、そんな話をするとは思っていなかった。

 クラーナは、意外とそういうのが気にならないタイプなのだろうか。


「ク、クラーナ、そういうのって、もう少し、雰囲気というか、なんというか、そういうのはないの?」

「ええ、そう考えたけど、なんだか、少し昂ってしまって……」

「昂る?」

「どうしてかわからないけど、興奮しているの……」


 どうやら、クラーナはそういう気分になってしまっているようだ。

 本人はわからないと言っているが、理由は明白だ。クラーナは、食事の前に私の胸を揉んでいた。明らかに、それが原因だと思う。


「夕食の前に、あんなことするからだよ?」

「ああ、確かに、それが原因かもしれないわね……」

「もしかして、ボディタッチが多かったのも、それが理由?」


 クラーナは、食事を作る時も食べている時も、私の体を触ってきていた。

 それも、これが原因だったということだろうか。


「……そうかもしれないわね。ごめんなさい、アノン」

「クラーナ……」


 クラーナは、私の言葉にゆっくりと頷く。

 尻尾も下がって、少し落ち込んでいるようだ。


 やはり、クラーナはあまり正常な状態ではないのだろう。

 少し興奮してしまって、判断力が鈍ってしまっているのだ。


「でも、クラーナ。明日も依頼に行くから、今日は駄目だよ」

「……そうよね。ごめんなさい、忘れてちょうだい」

「……いや」


 私の言葉に、クラーナはそう言ってきた。

 どうやら、自身の言葉を反省しているようだ。


 その表情を見ると、なんだかこちらも申し訳なくなってくる。


 というか、明日別に依頼に行かなくても、いいのではないだろうか。

 別に、絶対に行かなければいけない訳ではない。それに、簡単な依頼なら大丈夫なんじゃないだろうか。


「……わかった。今日はしようか」

「え?」

「多分、依頼も問題無いと思うし。簡単な依頼にすればいいだろうし、疲れていたら休んでもいいし……」

「アノン!」


 私が許可すると同時に、クラーナが私の腕をとってきた。

 そして、ゆっくりとソファの上で押し倒される。


「ク、クラーナ! どうしたの!?」

「いいんでしょう? それなら……」

「ま、待って、ここでは駄目だよ? それに、お風呂もまだだし……」

「その方が、匂いが濃くていいの」


 クラーナは、この場所でしたいらしい。

 恐らく、私の言葉が嬉しすぎてこうなっているのだろう。


 なんだか、色々とまずい気はするが、だんだんと私もそういう気分になってきている。

 そのため、私は受け入れてもいいと思ってしまう。


「もう、クラーナは、仕方ないなあ……」

「すー、すー」


 そんな風に、私とクラーナは過ごすのだった。

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