第38話 買い物終わりのプレゼント
私とクラーナは、買い物をしていた。
テットアさんの八百屋さんで買い物を終えてから、色々な所を巡り、今は家に帰っているところだ。
クラーナの言った通り、テットアさん以外の店では、あまりいい感じではなかったが、特に問題もなく、買い物を終えられた。
やはり、商売なので、商品のやり取りだけはちゃんとしているようだ。接客業としては、どうかと思うが。
「……」
「あれ? クラーナ?」
そういう訳で通りを歩いていたのだが、クラーナが何故か足を止めてしまった。
どうやら、何かに目を奪われたらしい。
「うん?」
クラーナの視線を追ってみると、そこには小物屋があった。
もしかして、何か欲しいものでも見つけたのだろうか。
「クラーナ、何かあったの?」
「え? あ、なんでもないわ」
「そう言わずにさ、言ってみてよ」
「……そこの小物屋に、ちょっと惹かれるものがあって……」
私の言葉に、クラーナはそう言って答えてくれる。
やはり、欲しいものがあったようだ。
それなら、買っていけばいいだろう。
「あ、なら……」
そこで私は、あることを思いついた。
せっかくなら、私からの贈り物ということにしよう。
友好の証として、何かプレゼントするのは、悪いことではないはずだ。
「私が、プレゼントするから、買っていこうよ」
「え?」
「その友好の証として……ね?」
私の言葉に、クラーナは目を丸くする。
ただ、頬を赤くしており、尻尾を振っているので、嬉しんでくれてはいるようだ。
「決まりだね」
「アノン……ありがとう」
私がそう言うと、クラーナがお礼を言ってくれる。
これで、プレゼントすることは決まりだ。
後は、クラーナの欲しいものが何かである。
「それで、何が欲しいの?」
「あそこにある首輪……いや、チョーカーね」
「チョーカー?」
クラーナの言ったものは、確かにあった。
それは首につけるアクセサリー、チョーカーだ。
しかし、クラーナは首輪と言いかけた気がする。
まあ、よく似ているものなので、間違えたのかもしれない。
「何色がいいとかあるの?」
チョーカーには何色かあったため、私はそう聞いてみる。
「……せっかくだから、アノンが決めてくれない?」
「え? 私が?」
「ええ、駄目かしら?」
「いや、いいよ。選ばせてもらう」
すると、クラーナがそう言ってきたため、私が決めることになった。
そう言ってもらえるのは、とても嬉しい。
これは、クラーナに合う色を選ばなければならないだろう。
そこにあるチョーカーを見て、頭の中で想像してみる。
そう想像してみると、すぐに答えが出てきた。
「うーん、黒かな?」
「黒?」
「うん、これが一番似合う気がする」
「なら、それにしましょうか」
クラーナの同意も得られたため、私は店員さんに声をかける。
「定員さん、これをください」
「はあい、これでいいの?」
「あ、はい」
私が呼びかけると、派手な男性の店員さんがでてきた。
この店にはあまり来たことはなかったが、思ったより普通の対応なので少し驚きだ。
「それじゃあ、これで」
「ぴったりね、ありがとう」
店員さんにお金を渡して、商品のやり取りをする。
こうして、私の元にチョーカーが手渡された。
「ありがとう、また来てね」
「はい、ありがとうございました」
「ありがとうございました」
店員さんは、最後までいい対応だ。
どうやら、テットアさんと同じで、気にしないタイプのようである。
こういう人との買い物は、気持ちが良いものだ。
「さて、それじゃあ、これは……」
「……その、アノンがつけてくれない?」
少し店から離れて、チョーカーを渡そうとしたが、クラーナにそう言われる。
それなら、私がつけるとしよう。
「うん、いいよ。ちょっと、じっとしていてね」
「ええ……」
私はクラーナの首に手を伸ばし、チョーカーをつけた。
そのチョーカーは、クラーナによく似合っている。
やはり、プレゼントして正解だった。
「いい感じ、似合っているよ、クラーナ」
「ふふ、ありがとう、アノン」
「それじゃあ、帰ろう」
私が手を伸ばし、それをクラーナがとってくれる。
こうして、私達は家に帰るのだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます