第23話 怪我が治ったら

 昼食の後、私はクラーナに包帯を解いてもらっていた。

 傷の状態を、確認するためだ。


「あっ……」

「あら……」


 そこで、私達は同時に声をあげる。

 私の傷は、完全に消えており、完治したようだ。


「こんなに早く治るなんて、あの薬、すごいんだね……」

「そうね……魔法で作られた特別製だからかしら」


 クラーナが塗ってくれた薬の効果は、絶大だった。

 魔法で作られたものらしく、詳しいことはわからないが、それは気にしないことにする。

 私の手が治った。今はそれだけでいいのだ。


「まあ、細かいことはいいよね。これで、完治ってことなんだから!」

「……ええ、そうね」


 クラーナは、そこで何故か落ち込んだような表情をする。

 私が治ったのに、どうしてそんな顔をするのだろう。


「あ、違うのよ。アノンが治ったことは、喜ばしいことだわ」


 私が暗い表情になったからか、クラーナがそう言ってきた。

 それなら、どうしてあんな表情をしたのだろう。


 私が治ったことによって変わること。


「あっ……」


 そこで、私も理解する。

 元々クラーナの家にお邪魔したのは、怪我した私を手助けしてもらうためだった。

 その怪我治ったということは、私がこの家にいる理由がなくなったということなのだ。


 クラーナとは、パーティを組む約束をしたためこれからも会えるが、それでも寂しいような気がする。


 まだ、一日くらいしか一緒に生活していないのに、私はそう思っていた。


「そう、あなたも帰らないといけないわね」


 それは、クラーナも同じのようである。

 この暮らしは、私達にとって、これからも続けたいと思える程のものだったのだ。


「クラーナ……」


 だから、私は決意する。


「私も、ここに住む」

「え?」


 考えてみれば、今暮らしている所に戻る理由はない。


 私が暮らしているのは、ギルドに貸してもらっている集団住宅の一部屋だ。

 そのため、特に思い入れはない。


「そ、そんなこと……急に言われても……」


 私の言葉に、クラーナは笑顔になる。

 尻尾も振っており、かなり喜んでくれているみたいだ。


「もう決めたことだから」

「……し、仕方ないわね」


 クラーナは、もちろん許可してくれた。

 口ではこう言っているが、嬉しんでいるのは丸わかりだ。


「ギルドでの手続きは……明日でいいか。どうせ依頼とかするよね」

「ええ、荷物とかも、運ばないといけないわね。私も手伝うわ」


 手続きは明日ということで、とりあえず今日はゆっくりすることにする。

 今から動くのは、正直面倒くさい。


 こうして、私とクラーナは一緒に暮らすことになった。

 私は、これからの暮らしが楽しみで仕方ない。それが、友達と一緒だからなのか、好きな人と一緒だからかはわからないが。

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