パーティを追放されたので、犬耳獣人少女と生きていく。

木山楽斗

本編

第1話 追放されて、犬耳と出会う

 私の名前は、アノン。

 どこにでもいる普通の冒険者だ。


 今日もいつも通り、パーティの皆とともに依頼に行こうと思い、集合場所に来たのだが、どうも様子がおかしかった。


 パーティの皆は、私を見つめると、ひそひそと話し始める。そんなことをされて、いい気分にはならない。

 私が怪訝そうな顔をしていると、パーティのリーダー格であるグラッサが話しかけてきた。


「アノン、お前はパーティ、クビだ」

「はあ!?」


 グラッサの言葉に、私は驚く。

 首とは一体、どういうことだ。私程、真面目に依頼をこなしていた者は、いないというのに、何故首なのだろう。


「お前の父親って、あの悪名高き、ガランなんだってな」

「うっ! それは……」


 ガランとは、とある罪人の名前である。犯罪と名のつく全てに手を染めている、悪魔のような男だ。そして、同時に、私の父親である。


「そんな奴の娘をパーティに入れておくなんて、考えられないぜ。さっさと出ていけよ!」

「そうよ! 罪人の娘!」

「そうだ! そうだ! 俺達のパーティにいらないんだ!」


 グラッサを皮切りに、他のパーティメンバーまで、私を責め立ててきた。なんとも気に食わないことだ。


 確かに、私は罪人の娘だが、だからといって、私まで罪人扱いとは、なんて失礼な連中なんだろう。


「私が、罪人の娘だからって、何をしたのさ! そんなの関係ないでしょ!」

「うるさいんだよ! 罪人の娘ってだけで、罪なんだよ! さっさと出ていけ!」

「そうだ、そうだ!」

「出ていきなさいよ!」


 パーティメンバーは、まったく聞き入れる気がないようだ。

 だったら、こんなパーティ、こっちから願い下げてやる。


「私が抜けて後悔しても知らないからね」

「ふん! さっさと出ていけ!」


 こうして、私はパーティを追い出されてしまったのだ。




◇◇◇




「どこも駄目か……グラッサめ、言いふらしたんだな!」


 パーティを追い出された後、他のパーティに入れてもらえないか相談したが、全て断られてしまった。

 恐らく、グラッサが周りに言いまわしたのだろう。


「まあ、いいさ。私なら、大丈夫」


 仕方がないので、私は一人で依頼をすることにした。一人で、名を上げて、あいつらを見返してやるのだ。


 冒険者ギルドの受付は、きちんと対応してくれ、依頼は受けられた。たまにピンハネするが、比較的公平な奴らなので、そこは評価できる。


「さて……」


 という訳で、森までやってきたのだが、一人だと意外にも心細いものだ。

 周りを警戒するのも、何倍も気を引き締めなければならないので、とても神経を使う。


「まあ、この辺りに、そんな凶悪な魔物なんて出ないか……」


 私がそう思っていると、近くの草むらが揺れた。どうやら、魔物がいるようだ。


「なんだ……!」

「グルルアアアッ!」

「うわっ! こいつは……」


 そこから魔物が出てきたが、その姿を認識して、私は驚いた。


「グシャアアア!」


 この魔物は、デビルベア。悪魔のように残虐で凶悪といわれる、中々に強い魔物だ。とても一人で相手できるような魔物ではない。


 つまり、これは私史上、最大のピンチということだ。


「嘘! 私の人生、ここで終わり!?」


 デビルベアが、ゆっくりと私との距離を詰めてくる。

 

 私は震えながら構えて、覚悟を決めることにした。ここで倒せれば、それなりに名を上げられる。負ければ死ぬ。簡単なものだ。


「――危ない!」


 その時、一つの声とともに、どこかから矢が飛んできた。


「グシャア!?」


 矢はデビルベアに当たり、その動きを止めさせる。


「グガ……!?」


 さらに、デビルベアは苦しんでいるようだ。どうやら、矢に毒か何かが塗ってあったらしい。


「チャンス!」


 その隙に私は、デビルベアの後ろに回り飛び掛かった。


「砕け散れ!」


 そのまま、全体重と力を込めて、デビルベアを地面に叩きつける。


「ウバシャア……」


 さらに、そこに無数の矢が叩き込まれた。矢は、私に当たることなく、デビルベアの体を貫いた。


「グオ……」

「まだ、まだ!」


 私は、デビルベアの後頭部に何度も拳を打ち付ける。 

 拳と矢によって、だんだんとデビルベアの体から力が抜けていく。


「グガ……」


 そして、デビルベアは動かなくなった。どうやら、絶命したようだ。


 そこで、私は、矢の飛んできた方向に目を向ける。


「あっ……」

「あっ……」


 そこには、私の同年代くらいの女の子が立っていた。

 黒い髪の綺麗で可愛らしい女の子だ。

 ただ一つ、私とは違う部分があった。


「じゅ、獣人……!?」

「うっ……」


 その女の子の頭からは、犬のような耳が生えており、お尻からは尻尾が生えている。

 どうやら、彼女は、犬の獣人のようだ。

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