第22話 テリアで手に入れちゃった


 超巨大城塞都市ルーデルにはなくて南の亜人街テルアにはあるもの、それは奴隷市場。


 へーあるんだねー。南はなんというか、〈ある〉時代レベルなんだねー。


 わが開拓地パールライトは超古代文明を復興させている都市(多分)なので、奴隷は無しで行きたい所存。いや、労働者さんこき使っている状況だけどさ……ちゃんと恩を報いることができる都市にしたいです、はい。


 そんな前置きをしつつ足を延ばすは奴隷市場。だってむふふうふふでああんいやんなおぜうさまがいっぱいいるんでしょ、ぐへへへへへへ。

 大泉桜、なかみは30くらいのおっさんじょせいであります!!



「というわけで奴隷市場へたーのもー!」

「奴隷市場ってあまざらしの中に奴隷が置いてあるようなイメージでしたが、ちゃんとアーケードの中で行われているんですね」

「それ、どこのどのエロゲのイメージなんだい?」

「ちゃいますよ!!」

「うぶだなあ。じゃあまいろうか!!

 と意気揚々と奴隷市場にはいろうとしましたら。


「えーと、あなたがこの亜人の主人ですか?ここは奴隷市場です、ある程度身分がないと入れません」

「いやいやいやいや、私が主人です。こっちのハルキは守衛!ぼでーがーど!」

「はあ」

「いや、本当です、私はただのハルキ。こちらはオオイズミ・サクラ、ネーム付きですよ?」

「こ、これは失礼しました。てっきり幼女の奴隷かと……」

「小さくて済みませんねー!!」


 といって市場の中に。


「いやーやるじゃんハルキ君」

「ステータスアップとスキル【ブレイブI】で、少しは度胸が身についているんですよ」




 さてと、えへへぐへへを物色したいんですが、そういうのははっきり言ってほぼない感じです。

 労働奴隷が多い感じ。そっかー慰め奴隷(男女問わず)はすくないのかーしょんぼり。


「そこのお二人ちょっとここの奴隷を見ていかないかい! 先日の抗争で活きの良いのが入ったよ!」


 なにそのお魚を売っているみたいな呼び文句……。

 と思いつつその奴隷屋? のところへ。


「何売ってるんですか? お魚? マーメイド?」

「いやいや、戦争奴隷だよ!!」


「せんそうどれい」

「なんだ知らねえのかい? ということはこの国のもぐりか、まあいいや、教えてやろう。この国は戦争をどんどんやって奴隷をかき集めて、それを労働力にしているんだぜ。使い捨てられるいい労働力だよな」

「ふ、ふーん」

「で、今回はオークの村を襲っていい労働奴隷を確保したってわけだ!おねーちゃんらユロルいくら持ってるかい?」


「さん、いや、ななひゃくくらいかな」


「なんだそれっぽっちか、見るだけ見て帰りな」


 くっ、やはり開拓地レベルのお金ではこういうのは無理か……とりあえず見て回ろうっと。


 ひゃー屈強なワーウルフ、ただし背中に鞭で叩かれた酷い跡がある。これが3000ユロル。

 人間メイド奴隷が10000かあ。本当に700じゃ話にならんわ。


 ふらふらと見て回りますと、一気に価格帯が下がる場所がありました。なんでじゃろ?


「ああ?なんだおめえら。ここは使えねえ奴隷がいるところだ。あんまりうろつくもんじゃねえぞ」


 とは管理人の弁。ふーん、あぶれ者ってやつですね。我々の開拓地はあぶれ者で出来ているので、ちょうどいい……奴隷さんがいるといいなあ。


 ふーん、片腕なしの人物、足がない、脳に問題がある人……あぶれてますな。


「ちょっと、これはどうやって……」


「ああん? いたぶる以外に使い道あるのかぁ?」


「そ、そっかぁ」



 などと見て回りまして、確かに正直ほぼ使えない人たちです。値段も……開拓地レベルじゃ高いけど、買えるレベルですね。



 ん、この人物は……? 薄い緑色の顔姿をした美人さんですね。緑色の髪、青く透き通った瞳、細く整っている顔。きゃしゃな体。でも背は高そう。見た目はボロボロだけど。

 なんだろう知性がある気がするのですが。


「こんにちは綺麗な緑色の美人さん。貴女は何でここにいるの?」

「…………」


 …………んん?


「おい商人、この娘はなんなの?詳細を知りたいんだけど」きつねの直感が伝えている。これは、当たる。


「あーそいつはオークに犯されたエルフが産んだ子よ。忌まわしいことに知力が高くてうっとおしいんで魔法で呪いをかけて喋らせないようにしたんだ、その方が商品価値も上がるからな」

「ふーん。忌子か。いくらくらいなの?」

「まー300くらいってところだな、この状況じゃいたぶるしかできないしな。まあ、具合は良さそうだがな、はっはっは」

「200」

「なんだ、買うってのか?そんなんじゃ売れねえよ、出直してきな」

【惑わしの魅惑術】発動

「200でいいよね」

「あ、ああ……それでいいぞ。け、契約はこっちで行う……こ、こい……」


 というわけで契約所にいって契約。書類で譲る感じだね。魔法の鎖や呪いがあって命令が絶対とか、そういうだれもが夢みる異世界的な感じではないみたい。普通に奴隷だわ。


「さて、と。こんにちは喋れない人。今から私がご主人様よ」

「……」

 ぺこりと頭を下げる緑の人。うーん、このままじゃ扱いにくいな。

「名前つけよっか、んーエルちゃんね、あなたは今からエルよ」

「サクラさんまた安直な……エルフのエルちゃんですか」

「うるさいわねハルキ君。わかりやすいは最強なのよ」


 さて、名前も決まったし……


「とりあえず服買いに行くどー!! その、なんとか局部が隠れている布切れじゃ歩いているこっちが恥ずかしいわ!!」


 まあ、もちろん古着屋さんで購入したわけですが。


「ミニスカに青いひらひら上着、袖は白。軽いマントっぽい後ろもついて、これで一端の魔法使い少女だね!!」


 ものすごい嫌がってますが、無視。だってしゃべれないしー? なにいってるかわからないなー?


 さて、一旦かえろーっと。しっぽぽぽぽん、ぽぽぽぽん(歓喜のしっぽ踊り)。




 今は帰っている最中。まあ3人じゃコヤヤに乗れないから鉄道馬車を使ったんですけれども。


「それで、サクラさん、エルさんをどうするおつもりで?まだ怯えてますし」

「お友達になってもらう」


「えっ」


「……!」


「だめかな」

「いや、別に構いませんけれども、200ユロルはみんなの貯金から出してるんですよ」

「働いてもらうよ、細かい作業が得意なエルフと力のオークが混ざっているんだし、アクセサリーとか作る細工士ができそうじゃない?」

「エルフが入っているなら繊細な魔法も使えそうですが……」

「この世界のエルフって魔法使い万歳!! じゃあないんだよね。勿論使える人もいるけど、大半はただ綺麗なだけって【市長権限の力による知識】が申しております。一番得意な仕事は、キャバクラ」

「えええええ、なんですかそれ」

「…………」

 縮こまるエルたん。

「ちょうどいいや、まずはキャバクラやってもらおう!労働者が男ばっかりでむさかったんだよね。良い息抜きになるんじゃないかな」




 ということで喋れない細工士兼キャバ嬢を手に入れました!!

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