フロート2-1
壊れてはいないと思うが――
少し無茶だったか。
そう思いつつ、相棒の名前を呼んで見ると返事があった。
『久しぶりの全力稼働でしたので、完成のご報告が遅れました』
「機能停止や破損はない?」
『大丈夫です。ジェイ、あなたの生存支援が優先事項ですので』
その口ぶりからして、無茶はしていない様子。
ただ、完成したものに関しては納得できていないらしい。
『残念ながら小型化には失敗しました。今回は機能確認の試作品とお考え下さい』
「そう?少なくとも野外活動には使えそうだけど」
浮き輪型のメカに触れてみるが重い。
押したり引いたりはできそうだが、この状態で持ち上げるのは無理だろう。
このメカについて相棒の説明を受けつつ、端末から浮き輪状のものを起動させる。起動したそれは腰の高さまで浮かび上がると1か所が縦に割れて開く。
そこでメアリを呼ぶ。
「メアリ、この輪の中に入ってね」
その言葉に“嘘でしょ”と言わんばかりの困惑を見せる彼女。
ただ、やらないと先に進まないと感じたのか、恐るおそる私の手を握りながら輪の中に入る。私はメアリと手を繋いだまま、浮き輪が彼女の腰に脇腹の位置になるよう調整してから割れていたリングを閉じる。
そして、リングが閉じたことに怖がる彼女をなだめながら調整を終えると、メアリの体は少しだけ宙に浮いた。
「――ジェイ、私どうなっているの?」
「見ての通り、空を飛んでいるんだよ」
尻尾は地に着いたままだが、彼女の体は宙に浮いたのである。
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