フロート1‐3

 相棒が作業をしている間にこちらはご飯。


「ご飯といっても、質素なモノしかないけどね」

「昨日と一緒?」

「中身は違うから」


 そう言いつつ、銀袋を破く。

 今回の中身はシリアルやドライフルーツを固めたグラノーラバー。

 といっても、本物のフルーツではない。合成してそれっぽく見えるだけ。

 ただ、味は本物と何ら遜色そんしょくない。


「ジェイって、いつもそれを食べているの?」


 メアリが心配そうに尋ねる。

 彼女の感覚からしても、私の食事が貧相に見えたのだろう。


「こっちに来る前は色々食べていたよ。肉も魚もフルーツも」


 言われてみれば、メアリに会う少し前から食事が雑になっていた。

 旅の始めはスープ等を飲んでいた。だが、思い出せる範囲での最近の食事は棒状の何かしか食べていなかったかもしれない。


「旅をしているうちに簡単な食事になったのかも」


 この際なので、「メアリは何を食べていたか覚えている?」と尋ねてみる。

 メアリは食べながら考えていたが、「よく覚えていないかな」とのこと。

 ただ、昨日の食べ方から、気になったので重ねて質問する。


「これ、魚なんだけど。食べたことある?」


 私は左腕の端末を操作して、空中に立体映像ホログラムを出す。

 生きたイワシの映像。


 メアリは驚きつつも、その映像に手を伸ばす。

 もちろん映像なので掴めない。


「ごめんね。これは映像だからそこにはいないよ」

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