嘘の種類1‐2

 ドムスから少し離れたところで。


「レイヴン、何か気になることでも?」


 相棒のレイヴン自体はメアリと一緒に中庭にある。

 そもそも、メアリを1人にするわけにもいかない。


『ジェイ、あなたに依頼されたわけではありません。ですが安全のためです』


 腕時計型の端末たんまつからレイヴンがしゃべる。

 私が使う電子機器はレイヴンと連携が取れるようにしてある。

 もちろん、レイヴンを稼働状態かどうじょうたいにしておく必要があり、休眠スリープ状態では無理だ。だが、稼働状態ならこの左腕の端末からでもレイヴンと会話することができる。


「そもそも水に余裕はあったはず。メアリのことだろ?」

『水は飲料用として余裕があっただけですよ?ああ、もちろん“彼女”の事です』


 メアリとは呼ばず、”彼女”で通すつもりか。

 相棒はメアリを警戒けいかいしたままらしい。


『彼女はあなたのを得ている。一方でこちらは彼女を知らない』

『それに彼女は記憶がないからと情報の開示を未然みぜんに防いでいる。』

『冷静に考えてください。相手に有利な条件ばかりです』


 いや、別に諜報スパイ戦をやっているわけじゃないのだが……

 伸ばしたホースを広場の穴に降ろしながらため息をつく。


「メアリがこちらを騙そうって?」

『そうとは言いません。ですが、彼女の言動にうそもあるかと』


 メアリが嘘、ねぇ……

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