ドムス2-3


 メアリはどうだろう。


 その彼女は言葉もなく、ただ中庭なかにわを見つめている。

 なんというか反応がうすい。表情がとぼしい。


 ――!

 しまった、ここは広場下と雰囲気ふんいきが似ていたか。


 かこまれた空間とその上に広がる空。

 さらに、プールをかこむように柱が屋根を支えているのも良くないか。メアリには地下とかぶって見えるかもしれない。

 これらの柱は乾燥かんそうによってカビやこけによるパッチワークもない。これらが余計に無機質むきしつで、圧迫感あっぱくかんかもし出しているかもしれない。


「地下みたいでいやだったかな……」


 私は屋内にいると安心するが、それは私基準きじゅんの話。メアリにもそれが当てはまるワケじゃない。

 そんな私の気まずい空気をさっしたのか、メアリは不思議そうに尋ねる。


「どうして?どうしたの?」


 まった意識いしきそとだったという顔だ。


「さっきみたいにおどろいていないから――」

「いま、一番驚いているよ?」

「――!?」


 いや、メアリの反応がうすいものだから。

 驚いて反応できなかったのか、私への気遣いか。

 どう反応すべきかこまる私に彼女は落ち着いて話す。


「”プール”って、なんのことか分からなかったの」


 メアリは中央の枯れたプールを指さして「あれだよね?」とたずねる。

 私は反応に困りながらもうなずくく。そうだけれども。



 

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