ドムス2-4
「誰が使うの?」
こちらを見上げる彼女は甘いような、とろんとした表情で笑っていた。
間違いなく、わざと尋ねている。
「水の中の方が動きやすそうだから」
「誰が?」
「メアリが」
そこまで確認すると、メアリは「だよね!」と嬉しそうに返す。
「ジェイはそこまで考えていたんだ、って驚いたの」
なるほどね。「とりあえず――ここは気に入った?」そう尋ねてみる。
メアリはその問いに「もちろん!」と即答した。
「ジェイも一緒だよね?」
腕の中で喜ぶ彼女を抱えているのは照れくさいものだ。
ただ、私はいつまでもこの都市にいるつもりはない。次の目的地となるヒントを見つけたら、そちらに向かうつもりだ。
メアリに出会えたということは、他の地域にも誰か人が住んでいるかもしれない。
何よりその旅に彼女を連れていくのは難しいと思う。
いや、そもそもメアリに帰るべき場所があるならそちらに戻すべきだと思う。
それが彼女の記憶が戻ることに
なら、この街の
それなりの都市なので、たぶんそう遠くないところに
もしかしたら、メアリのような人魚がいて彼女のことも知っているかもしれない。
私は――
また旅に戻るだけ。
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