ドムス2‐1

「さて、着いたよ」


 広い道路からほど近いドムスの1つ。

 探索時に目星めぼしを付けておいたのがさいわいした形だ。

 この建物だけは劣化れっかが見られない。


 建物を囲む壁は薄黄色うすきいろ土壁つちかべ扇状おうぎじょうに壁の表面を手入れした跡が残る。

 壁に装飾そうしょくはない。他のドムスの壁にはタイルや貝殻かいがらが埋め込まれていることから、この建物は改装中かいそうちゅうか建築途中で放棄ほうきされてしまったのだろう。


 人が2人ほど並べる入口から敷地しきちに入る。

 右手にはレンガを積んだ小さな花壇かだん野草やそうが花をつけている。

 その奥には木が生えていたのか建物と花壇かだんの間にレンガで輪が作ってあり、その中だけ土がむき出しになっている。

 それらのレンガはインスラで見た薄焼うすやきの板状レンガではなく分厚ぶあつい。


 また、建物自体は赤い屋根の下に装飾なのかゆるいらせん模様もようのある柱が建物のL字に合わせて3本ずつ6本立っている。こんな柱をポルチコと呼んだ気がする。

 屋根は日差しをさえぎるには不十分だが、通り雨程度なら軒先のきさきにイスとテーブルを置いて様子をながめるだけのスペースはある。

 こぢんまりとしているが、安心感のある空間。


「へぇ……!」


 メアリはバランスをくずさない程度に身を乗り出してドムスの庭先に目を丸くしている。中に庭や装飾があって驚いたらしい。確かに外からでは他のドムスも2階部分と壁しか見えない。

 外見だけならインスラと同じ、飾り気のない住居に見えるのも事実だ。


 そんな彼女がドムスの中を見たら、どんな反応をするのだろう。

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