ドムス1-4

「それが最初なの?」


 メアリの質問に頷く。

 そう、それが最初。あの時は博士が頼もしく見えたのだが――

 まぁ、それはそれとして。


「あのあと、博士の研究室ラボ以外に生活する場所がなくてね」


 映画によくある、“世界は核の炎に焼かれた”というヤツだ。

 そのせいで地上は壊滅。映画の世紀末より悲惨な世界に。

 それで地下のラボで一緒に生活することになった。

 あの人と一緒にいたのは1年ぐらいだろうか。

 最後は博士の実験に付き合う形でに来た。


「……?つまり、その――」

「俺はこちらの住人じゃないよ。部外者イレギュラーさ」

「いれ、ぎゅ……?」

「ああ、俺は本来いないはずのモノなんだ」


 彼女はこれをどう受け取るのかと思ったが。

 それよりも先に。


「博士はどうしているの?」


その質問は。


「――もういないよ」


 その質問は答えられない。

 メアリはどれだけ私の記憶をのぞいたのだろう。

 賭けだった。私がこちらに来られるのかも。

 だが、博士を置き去りにした罪悪感ざいあくかんが私にはある。


「ジェイ?」


 メアリは心配そうに私の顔を覗き込む。


「いや、ごめん」

「どうして“ごめん”なの?」

「なんで俺だけがここに来たのかって、思ってね」


 あれは博士の技術だ。博士が本当はこちらに来るべきだったはず。

 あるいは、最後まで博士と寄り添って――


「博士は送り出せて嬉しかったと思うの」

「――!」


 何を思っての言葉なのだろう。でも――

 その言葉は救いだ。

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