「溺愛」「婚約破棄」「ざまあ」短編集4
克全
王太子と姉に陥れられ、婚約破棄されて魔境に追放された公爵令嬢は、神獣に助けられスローライフを楽しむ。
第1話
「すまないが、ここまでしか護衛してやれない。
本当にすまない」
「いえ、王太子に睨まれるの承知で、ここまで護衛してくれてありがとう。
カデンが護衛してくれなかったら、ここまで無事にたどり着けなかったわ。
本当にありがとう」
私のお礼の言葉を聞いて、信義に厚いカデンが悔しそうに顔をゆがめています。
最後まで私の無実を信じ弁護してくれたカデン。
王太子とアメリアの圧力に屈せず、実家から追放されるかもしれないのに、それでもここまで私をかばい守ってくれたカデン。
「せめて、この槍と剣を持っていってくれ。
これがあれば狩りもできるし身を護ることもできる」
「だめよ、カデン。
私は不貞を疑われ、王太子殿下との婚約を破棄されて、身の潔白を証明するために魔境に入るのよ。
武器や防具を持つことを禁止されているのは知っているでしょ?
魔境に入って一カ月無事に生き延びられたら、私の名誉は回復されるわ。
神様と私を信じて」
「神など信じられるか!
神などいないのだ!
神がいるなら、このような酷いことになってはいない!
神がいるなら、このような仕打ちを見過ごすわけがない。
俺は毎日毎夜オリビアの無実を祈った。
アメリアが王太子妃の地位欲しさに、実の妹を陥れたのを天に祈り報せた。
王太子がアメリアの色香に迷い、婚約者のオリビアを陥れたのも天に祈り報せた。
国王やムーア公爵がオリビアの無実を知りながら、切り捨てたのも祈り報せた。
だが全く救いなどなかった。
オリビアが無実の罪で実質的な魔境への追放刑、いや、死刑に決まってしまった。
こんな状態で神を信じることなどできない」
「だめよカデン。
私はこれでも神様に選ばれた聖女なのよ。
何の力もない、何の奇跡も起こせない無力な存在だけど、それでも神様のお告げがあった聖女なのよ。
これは試練なのかもしれないわ。
いえ、神様が私を御側に呼んでくださっているのかもしれないわ。
だからもうやめて。
これ以上私をかばうと、カデンまでひどい目にあわされてしまうわ」
「おい、おい、おい。
オリビアだって自分がひどい目にあわされたと思っているじゃないか」
「あら、口が滑ってしまったわ。
うふふふふ。
でも神様の御側に行けるかもしれないと思っているのは本当よ。
聖女の御神託があったのに、何の力もなく、民の役に立てずにこの世で生きていくのは少、しつらいの。
だから哀しまないで。
怒って身を滅ぼさないで。
私は喜んで神様のもとを行くわ。
ありがとう、カデン。
貴男と幼馴染でいられたことが、この世で一番の幸せだったわ」
「オリビア!」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます