【とんでもないことになった】レスラーのお宅拝見特別版!

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とあるyoutuberの映像記録より。



「あっ、あーあー チェック、ワン、ツー OK」


「Hi guys! ジェイクス・チャンネルにようこそ! 今日は突撃企画、あのレスラーのお宅拝見の特別版だよ! 今日突撃するレスラーは…… クラッシー・ヴァンパイアことドゥーム・バーリー! さて、突撃の前にまずは彼女の活躍を見てみたいと思います」


「──バーリーお得意の噛み付き攻撃! 女子チャンピオン、ヘラが大ピンチだ!」




 168センチ58kg、白塗りの奇抜でかつ、妖艶な魅力を誇る女子プロレスラーが彼女!ドゥーム・バーリー!

 細身ながらスピード感ある確かなレスリング技術と、そしてなによりその、常に黒マントを着けた不気味な出で立ちで人気だ。

 必殺技はもちろん。


「──バーリーお得意の噛み付き攻撃!」

「──バーリーお得意の噛み付き攻撃!」

「──バーリーお得意の噛み付き攻撃!」


 わお!僕も噛みつかれてみたい! 噂ではバーリーは荒野の、寂れた教会に住んでいて血の風呂に浸かり、蝙蝠を従えて暮らしてるとか…… 本当かな?

 今日はそんな彼女の素顔に迫りたいと思います!Let’s check it out.



 「あー、ほんとにここ? 普通の家じゃん…… はい皆、今僕はバーリーが住むという一軒家に来ています 見た目は…… 普通の家だね 蝙蝠も一匹も居ないしすごく清潔感ある なんか鉢植えがやたらあるな…… とりあえずノックしてみましょう すいません、すいませーん」


「はい、何か用?」


「あー僕たちはその……」


「ジェイクス・チャンネル?」


「知ってるの!?」


「ええ、貴方のチャンネル見てるわよ レスラーのお宅拝見でしょ?」


「ああ、そうなんだ それで今日は出来れば貴方の家を……」


「良いわよあがって おっと、あまりそこらの物に触らないでね、呪いがかけてあるから」


「やったぜ! って呪い!? ホーリーシット!!」


「冗談よ」


「ところでいつもの白塗り以外のメイク、初めて見たけど、すごいイケてる」


「お世辞はけっこうよ」


「あー、それではドゥーム・バーリーさんのお宅を取材したいと思います あー、意外とその、普通ですね お庭にもありましたが、鉢植えがたくさんありますね?」


「ハーブを育ててるの、趣味と実益かねてね」


「へー、ちょっと魔女っぽいな 料理は得意?」


「ええ、ちょうど蝙蝠と黒山羊の血が煮えるところよ?」


「ははははは! それマジで受ける! どうしてこの本棚、斧が刺さってるの?」


「ああそれ? 本棚に斧を刺して置けば、みんなどうしてこの本棚、斧が刺さってるの?って思うでしょ?」


「………ええ、でもどうして?」


「どうしてって?」


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「Hi guys! ジェイクス・チャンネルにようこそ! 今日は突撃企画、あのレスラーのお宅拝見の特別版だよ! 今日突撃するレスラーは……」



「──この太鼓の音は!? うわー!! 現れたぞみんな逃げろ!! ジャングルの奥地から現れた悪夢のシャーマン! ウィッチャー・EYEの登場だ!」


「見てくれよ、真っ赤に塗られた顔、どこかの部族みたいな気味の悪い衣装 そして……」


「──毒霧だ! ウィッチャーの毒霧! カクタスマンの体を赤く染めていく!!」


「見てよこの不気味な攻撃! 彼はほんとに最高のレスラーだよ! さぁLet’s check it out.」



-某郊外の一軒家にて。


「ここがウィッチャーの家だ ……あー、見た目はやっぱり普通な感じだね よし、玄関に回ろう、カメラ付いてきてよ」


まだ若いYouTuberの二人、ジェイクスとカメラマン役のロブは何時もの調子で収録を開始した。


「おーけー、それじゃぁノックするよ ……?」

ジェイクスが玄関の扉を叩く、すると扉を自然に開いてしまった。

鍵もかけていないばかりか開けっ放しの様子だ。二人は顔を見合わせて訝しんだ。


「もしもしー? あー、誰かいませんかー? 取材に来たんですけどー?」


しかし返事はない。ためしにジェイクスは扉を押してみた。扉は完全に開くが、中は薄暗く様子はわからない。


「おい、入る気かよ、まずいって」

カメラマンのロブが制止するがジェイクスはかまわず中へと入ろうとする。


「すいませーん! ジェイクスと言いますー! ジェイクスチャンネルの取材に…… 誰もいないんですかー?」


恐る恐る、忍び寄るように二人は中へと入っていく。完全に家宅侵入だが好奇心には逆らえなかった。

ジェイクスは戸棚に置かれたガラス瓶に向けてスマホのライトをかざした。

中には何か、パスタ状のモノが詰まっている。それは………

「うわっ、ミミズだ! ミミズが瓶に積めてある!」


「うわーお、マジかよ ……プロレスの小道具だよな? ほらたしかミミズを丸飲みするパフォーマンスしてたじゃん」


二人はそれで納得することにした。わざわざ自宅にパフォーマンス用のミミズを入れて置くのは明らかに不自然だが考えないことに決めた。


した。した。した。した。した。

水が垂れる音がしている。先程まで饒舌にしゃべっていた二人は黙りこくり、慎重に歩みを進める。

音は開けっ放しのバスルームからだった。

ジェイクスとロブは中を覗きこむ。


「ジェイクス、あれ ……て、手がでてる!」


ロブの言う通り、バスタブの中から人の手が付きだしていた。

二人は悲鳴を飲み込み、ゆっくりと後ずさった。だが。

突然、バスタブの中の手が動きだし、真っ赤なタールを頭から被ったような化け物が、金切り声を上げて起き上がる。


「うあ、うああああ!!!」


たまらず悲鳴を上げて走り出した。目指すは玄関、ほんの数メートルの所だ。

だが、玄関の向こうにも人影がある。顔に茶色の革マスクを付けた、醜く太った男が扉に立ちふさがっていたのだ。


「うわああああああ!! ごめんなさい!! 助けて、許してください! 何も見てません!! 助けて!!!」


へたりこみ、泣きながら命乞いをする二人の元へ、前からはマスクの肥満男が、後ろからは全身から血を被った大男が近寄ってきた。


肥満男はロブが投げ捨てたカメラを持ち上げて言った。


「Hi guys! カクタスマン・チャンネルへようこそ!」




「もう、本気で殺されるかと思ったよ!」


「ははははは!! ごめんよ二人とも、君達が来ると聞いて準備していたんだ」


と、タオルで顔をぬぐいながら、スキンヘッドの大男が陽気に二人に語りかける。


「あー、それがウィッチャー・EYEの素顔? いつもブードゥーみたいなメイクしてるから誰かわからない」


「ははは、初公開というやつだね 普段はあまり喋らないしね」


「思ったよりイケメンだ ああ、ええとカクタスマンはどうしてここに?」


「俺とウィッチャーは親友なんだ 実はハイスクールの同級生でね 彼は昔からよく豚の血を飲んだりとか変なことをするやつだった」


「美味いんだぞ 故郷じゃみんなやってた」


「それで俺がレスラーとして成功した後に、お前もどうだと誘ったんだ それがウィッチャー・EYEの誕生秘話さ」


「すごいや! 今日のレスラー御宅訪問は大成功!」


「ドッキリも大成功!」


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「さぁ、今回の番外編の最後の一人の所へいこう!」


「あー、これ住所ほんとに合ってるの? 森の中だぜ」


「あってるはずさ…… 結構奥まで来たけど道も無いし家もない…… あ、まじで怖くなってきた」


「ところで最後の一人は何者?」


「よく聞いてくれた 最後の一人は01011000 10010011 00110000 10010010 01101011 01101001 00110000 01001111 01110101 00110111 ノーザン・コールド!」


「まって、今なんか変な音が聞こえなかった?」


「おい止せよ変な事言うの 野犬かなんかだろ? それじゃぁ彼の活躍の映像がこちら!」


10001100 10110100 01101001 11011000 00110000 10010010 01101011 10111010 00110000 01011001

01011000 10010011 00110000 10010010 01100011 10011000 00110000 01100011 00110000 01100110

00110000 01001010 01010010 01001101 00110000 10010010 01010111 11001011 00110000 10000001 00110000 10001011

01101011 01111011 00110000 01101101 00110000 00000000 01101011 01111011 00110000 01101101 00110000 00000000 01101011 01111011 00110000 01101101


「いかがでしたか? 不気味な男でしょう? それじゃぁ…… おおい、マジかよこんなの…… おかしいだろ…… ロブ、はやくカメラを!」


「待ってくれ、なんでこんな所に墓場があるんだ!?」


「待ってよ地図にもマップアプリにもこんな所乗ってないぞ」


「やばい、やばいやばいやばいよこれおかしいよ正気じゃない」 


「おいどうしたジェイクス! やめろよ! なんだ、何が見てるんだよ!」


「墓だよ…… 掘り返されてる! それに墓に……あぁっ!」


「なんだよジェイクス!! やめろって! 早く行こう!! やばいって!」


「いいからここを写せよロブ! この墓…… 俺を探すなって書いてある…」


「逃げよう! うわああああああああ!!!」

「あああああああああ!!!」



-少年二人が逃げ出した後も、映像は続いてた。

-酷くぶれた森の中の映像と、二人の息吐く音、すすり泣く声、そしてカメラは何度か少年の顔をとらえた後、手から落ちた。


-映像はまだ続いている。

-黒い革手袋を付けた手がカメラのレンズを覆い、その隙間から真っ赤な瞳が覗く。


安らかに眠れR.I.P





 



「いいPVだな! こいつは受けるぞ!」


「ほんとだ、こりゃぁすげぇな」


「ほんとだってこれお前が作ったんじゃないのか?」


「いいや? お前のとこが作ったんじゃないのか?」


「おい、待てよ…… 一体なんなんだこの映像は? ていうか、誰だノーザン・コールドって!?」


-暗転。

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