第116話 普通の毎日

今日は雨なんで、ちょっと遠回りのバスで会社へ向かう。会社とは反対車線側のバス停で降り、横断歩道まで行かず、ささっと左右を確認して車道を渡る。

通学路だと、こういうズルは出来ない。チビッ子に見せちゃいかん。

「おはようございます」

いつものように仕事が始まる。

伝票分けの途中で手が止まる。一枚持って、所長の席へ。

「所長、特大入りました」

「おお、久し振りだな。どんなモンだ?」

「大きい台車とパワーゲートは確定で。二人いりますね。日にち時間指定無し、今月中でとなってます」

「トラックのスケジュールは調整しとく」

「予定決まったら、あちらへ折り返し連絡入れます」

パワーゲート付きのトラックは多くない。装備が増えれば車もお高くなるからだ。

席へ戻り、伝票を分け、準備を続ける。

「これ、忘れ物かなぁ?」

と、田中さん。ハンディスキャナー?

「何番?」

「七番」

七番ということは。

あっ!

慌てて窓を開ける。

「やまーっ!やーまーもーとーっ!戻れーっ!」

ハンディを振って見せたら、駆け戻ってきた。

無いと仕事にならんよ。

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