第10話
弁護士の事務所に行って、正式に相談に乗ってもらう。
妻には内緒だ。
この前は夕食の品数がいつもより増えて、妻の好物ばかりを並べたことで気づかれたらしい。だから今度は大丈夫。バレないようにやれる。
「手順についてご説明しますと、まず動画サイトに対して投稿者の開示請求を行います。基本的にはこれは断られるとお考えください。その後、裁判所に改めて開示請求の仮処分を申請します」
弁護士はそう続ける。
「問題となるのは、裁判所に開示請求の処分を要請する所です。申請した内容が名誉棄損や誹謗中傷、あるいは脅迫に該当すると判断されなかった場合には、仮処分は実行されません」
ですから、と弁護士の言葉は続く。
投稿者のコメントと共に、それが虚偽であったり脅迫であるという証拠が必要です、と。
しかも、動画サイトへの開示請求だけでは投稿者に辿り着くことは出来ず、その後にプロバイダへも同じ手順を踏む必要があるという。
そのために、持ってきたスクリーンショットだけではなく、このコメントの何が問題なのか、それを今日までの分だけではなく、結果が出るまでの間ずっと集め続けて欲しいと言われた。
想像以上に面倒で労力がかかる。
しかし、決めた以上はやってもらうしかない。
何も手を打たずに事態が悪化し、逃げるように引っ越しでもしなければいけないとなったら、妻の仕事にも差し支える。
俺は「分かりました」と答えて、着手金を支払い、弁護士の事務所を後にする。
どうせ長丁場になるのなら、どんどん動画を投稿してやろうと思う。
それに引っかかって酷いコメントが投稿されるのなら、それも請求のネタに使えるのだ。
なんなら、他の人がブログにまとめていたように、経緯をまとめて動画で投稿しても良い。不愉快なコメントを書くとこうなるぞと、逆に脅してやれば、他のユーザーからの暴言もなくなるだろう。
俺は義足でゆっくりと歩きながら、そんな復讐じみたことばかりを考えた。
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