第16話精霊だって変わらないんだ
精霊指定って言いました?
「そうよ。この一角は精霊の有志で作り上げられてるの」
え?精霊がお金出すんですか?
「違う。精霊が自分の元素を使って建物を作っているのよ?」
アンシャルみたいに?
「まぁそんなとこね?」
あの山と川は土の精霊と水の精霊の競作。
こっちの街道は光の精霊が一人で作り上げたわ。
みんなやりたいようにやってるわよ?
それでこの子みたいに終わったらみんな自分を元素に還すんだけど、まだこの子はやりたいことが見つからないみたいでなかなか元素に還す勇気が持てないのよ。
だから思いきって刺せない。
中途半端に刺さって痛いだけで終わるの。
優しく彼女は木の精霊の髪を撫でる。
「それってもしかして、夢が見つからないってことですか?
それで人生を全うできないと?」
そういうことなら、
「この子ウチにもらってもいいですか?」
目標が見つからないことは別に欠点じゃない。
誰だって死ぬことは怖い。
_精霊だって変わらないんだ。
だったら、
「私達が育てます!」
_え!?
それが罪状でどうですか?
クマのぬいぐるみが隣であたふたしているが関係ない。
精霊なら色々と役に立つこともあるだろう。
「いいんじゃない?良かったネ?リカ」
涙をボロボロ溢しながらリカは私に抱きついてきた。
小枝やら葉先やら頬を掠め口に入り色々痛かったけど、撫でた髪はサラサラしてて心地よかった。
私達とリカの生活は快適だった。
窓もない研究室で毎日空気は換気したように澄んでいて、リカの髪の匂いだろうミントの香りが、辺りに充満して涼しい風を届けてくれた。
_ただ時々フレーバーティー溢すんだよな。
環境が整ったおかげで研究も捗り、リリアさんの「魔法」もあって研究室の改築もうまくいった。
そんな矢先、ある噂が舞い込んできた。
近頃、巷では「異世界勇者」が活躍しているらしい。
それを支持する者もあとを立たないのだとか。
皇国民に止まらず、没落貴族から上級皇族に至るまでその人気は止まるところを知らない。
「誰かが担ぎ上げてんじゃないの?」
クマが短い足を組んで疑ってかかる。
正直私もそう思っていた。
暗躍している者がいると。
でなければ、元からの勇者がいるこの世界にわざわざ異世界勇者なんぞを呼ぶ理由がない。
_それに異世界なら私達の方が先だし。
間違いなく裏がある。
ひとまずそれもあって私はここを動けなくなった。
このイスベルク王国領内、精霊指定都市アリカルオニアのアリエスのアトリエを。
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