第7話元素分解

アリエス様が消えた。

厳密には元素分解したのだけれど。


元素分解とは生き物を成分に置き換えることのできる魔法再現で、私達アンシャルの魔法を科学的に模倣したものだ。


それをおこなってパソコンから時計塔を介してファーリア界へ向かったはず。

「さぁこれから忙しくなるぞ」


涙を拭いてまずは部屋の掃除から始めることにした私は、アリエス様を想いながら一つ一つ片づけていった。




そんな折三日もしない内にパソコンにメールが届く。


拝啓アヤ様

こちらは無事現地についた

とりあえずの報告をしておく


追伸、思ったよりこちらの環境は似通っていて過ごしやすい


折をみて、アヤもこっちに来ないか?




相変わらず誘惑のうまいこと。

だが、その手には乗らない。

乗ってあげない。


メールができたというのは何かそういう機器でもあったのだろうか。

初メールに返信をしてみる。




残念ですが私は今多忙のため、そちらへ赴くことはできません。

そちらでは今何日目ですか?

こちらは只今三日目が終わろうとしています。


ところが意外な返事が返ってくる。


すまないがこちらでは時間はわからない。


「なんでよ!」

何を使ってメールしてんの?

現地時間くらいはわかる、、

_読めないのか?


折角元世語でもファーリア文字で書かれていては読めないだろう。

カタカナや象形文字のような何かを模した文字であれば別だが。




メールがきた。


こちらは壁画からメールをしている。


「シュールですよ?」

パソコンに向かって返すが、勿論聞こえるはずはなかった。


スゴいでかいタッチパネルみたいなもんだろうか。

それとも昔、流行ったアニメみたいな感じだろうか。


どうやらファーリアでは壁画を通信手段にしているらしい。


どうやって異次元へ飛ばしているかは別問題だが、向こうからは簡単なのかもしれないと思っておこう。

_意外に時計塔が電波塔になっているのかも。


ひとまず通信さえできれば研究は継続できる。


_博士。そこにはどんなものがありますか?

一応「魔法」を使って通信を試みる。


私だってアンシャルだ。

でき、、、なかった。

一体私の何がいけないのか。


中途半端にアンシャルになってしまった私は魔法もまともに使えないのかやはり。


「それは違うよ?誰がやっても同じ」


パチッ


ほらできないでしょ?

「あの時のお姉さん?」

お姉さんかどうか怪しいって?

正解だよ?アンシャルだもんね?


「あ、いやそこまでは、、「思ったでしょ?」

うん。やっぱ本場のアンシャルは違うや。


ところで、どうしてできないんですか?

「簡単なことだよ?」

異次元災の時のことは覚えてる?

_ざっくりとなら。


「うん。だいぶざっくりいかれてるね?」

どうやら異次元災で紅子結晶リットミールに撃ち抜かれた衝撃は私の記憶に大きなダメージを与えていたようだ。


だから私はざっくりとしか思い出せなかった。

お姉さんは大丈夫なんですか?

「私はほら、大事な思い出なんてなかったからさ」


それはまた別の問題か。

「暗いのはいいから早くメールしなよ?」

「アリエス様。そこにはどんなものがあるんですか?」


私はパソコンに打ち込んで送信する。

するとすぐに着信が。

「何この人、ヒマなの?」

違うとは思うが、少し不安が過った。


アヤ?

こっちに来るのか?


「どうしてそうなる」


いえ、別に。

これから長い間こうした状況が続く。


と答えようとしたところでお姉さんが、

「ちゃんと話しておくと魔法は元素を集めて具現化される」


ソーマについてはどこまで?


「ソーマブリンガーのことまでなら」

そう。ソーマブリンガー、つまり龍脈を通って大地のソーマは循環している。


それを吸い上げて植物が育ち動物や人間が生きている。

_一応鉱物もそうなんだよ?


え?アンシャルは?

アンシャルはそのソーマを直接加工することができる。


空気中のソーマや大地から直接とかそうやってね。


どっちかっていうと「人間」よりは「魔族」に近いかな。


「魔族」はソーマブリンガーを体内に持たず、辺りの元素を「魔素マナ」に変えて生きているからね。


アンシャルはソーマブリンガーを体内に持って元素を取り入れて生きているから。


中間くらいの存在なんだ。


_え?


「く、詳しいんですね?」


一歩引いた。


そりゃまぁアンシャルになる前はアンシャル専門の機関にいたし。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る