Caro Leonardo,
ウツユリン
1. A buon intenditor poche parole.
一日に約三万人。長い列を辛抱強く待った人たちがようやく、私のアパートを訪れる。
私を目当てに来る人が大多数だけれど、この場所を私の"家"と言ってしまうのは、さすがにおこがましい気がする。収蔵品、という扱いにはなっているけれど、私は間借りしているつもり。私はだれの物でもないし(
創造主は確かにいた。
けれど、〈彼〉に所有物扱いされたことは、一度もない。
ここは、かの
パリ
迷子になる心配はいらない。そこら中に「Musee du Louvre」の標識があるし、なんなら私の写真でもスマートフォンに出して、道行くパリっ子(贔屓するつもりはないけれど、おしゃれだからすぐわかる)へ「
もし、ルーヴルのシンボル「ガラスのピラミッド」を目指して地上をきたのなら、開館前の行列が良い目印になるはず。そうでなくとも、大統領肝いりの文化政策「
ゲートでセキュリティチェックを済ませ、館内を二階に上がり、人の流れへ吸い寄せられるように歩くうち、
展示室の入り口は二カ所。通い慣れた人が使う最短ルートで"私の裏"に出ないかぎり、この二カ所が私の部屋の玄関ということになる。
"
「
そう、展示室のいちばん奥、『カナの婚礼』と向かいあう壁の特殊ケースに私はいる。
来館者を見おろす高さに吊られ、額の遙か下から迫り出している台形のカウンターは、名残で木製。だれも使えないこのカウンターテーブルは、私へ、これ以上"ちかづいてはならない"というさりげない
かつて、カーブした長い手すりが遮っていた場所へ群れる人たちのなかに、新型の"
でも私は、配信はキラいじゃない。ルーヴルからのストリーミングなら視聴者数はそこそこ集まるから。
いま、このときも増えていく私を見つめる人の数と、私が"見つめる"人の数。
そのすべてが、私の"眼"になる。
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