16話 送迎

「おや、これはまたお早いお呼び出しで」


ゲートを使いポトフを呼び出すと、嬉しそうに目を細める。

呼ばれる=寿命が取れるなので、こいつにとっては嬉しい事なのだろう。


「ポトフ。俺以外を透明化させることはできるか?」


「可能で御座いますよ。但し、寿命は独り毎いただきますが宜しいですか?」


「構わん。ここにいる全員に頼む」


彼らを安全に脱出させるため、ポトフに透明化を命じる。

此処にいる6人。

俺を入れて7か月分だ。

既に2か月分を使っている事を考えると、この数日でもう9か月も寿命を持っていかれている事になる。


仕方ない事だとはいえ、このペースだとあっという間に天寿を全うしかねない。

今度からはセーブしていく必要があるだろう。


「ではまた御用が御座いましたら、いつでもお呼び下さい」


そういうと奴は満足げに消えていく。

出来ればその面は2度と拝まずに済むのが理想だが、透明化は追われる身としてはかなり有用なスキルだ。

これからも使っていく事になるだろう。


「手はちゃんと繋いでいるか?」


透明化すれば当然お互いの姿も見えない。

俺ははぐれない様、全員で手を繋ぐ様指示しておいた。

その確認だ。


全員から帰って来た返事に頷き、俺は冥界の瞳アナザービジョンを発動させる。

情報が洪水の様に流れ込んでくる。

もうこれで3度目だがやはり慣れない。


外の様子を確認する限り、特に動きはない様だ。

俺は過負荷でふらつく頭を振って、意識をはっきりとさせる。


「進むぞ、出来るだけ音は立てない様にな」


そう告げると俺は歩きだす。

後ろ3人は子供であるため、そこには細心の注意を払ってゆっくりと進む。


扉を抜け。

階段を上がり。

隠し扉を開けて裏口へと向かう。

裏口に出ると相変わらずチンピラ共が賭け事をやっていた。


ゲラゲラと笑う声を聴いて、思わずイラっとする。

多くに人間の涙の上にこいつらは胡坐をかいて生きているのだ。

そのつけはこの後たっぷりと支払ってもらう。

命と言う対価でな。


中庭を通って門を抜け。

大通に出て官警の詰め所を探し出し彼女達を連れて行く。

ここなら保護してくれるだろう。


「悪いが透明化が切れるのに3時間程かかるんだ。その間ここで待っていてくれ」


透明化は衝撃で解けるが、そこそこ強い衝撃が必要になる。

女性や子供、ましてや弱っている彼らにはきついだろう。


「脛に傷もつ身でね。中途半端で悪いが俺はいくよ」


透明化が解けるまで付いていてやりたい所だが、手配書が既に回っている可能性もある。

人目に姿を晒すのはリスクが高い。


「いえ、助けていただいてありがとうございました」


「ありがとう!お兄ちゃん!」


姿なき感謝の声に俺は目を細め。

見えないだろうが手を振ってその場を後にした。

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