夏の夜空に流れる星

雪野 ゆずり

第1話

「南十星くーん!!」

「星来!!」

 高校三年の春。私はついに好きだった南十星くんに告白して両想いになった。ただ、彼といられるのはこの夏いっぱいが期限だった。理由は、はっきり聞いていない。ただ『遠くに行くから』とだけ言われた。だから、それまでの間いっぱい思い出を作ろうと思った。


―これは、私たちが一緒にいられる最初で最後の夏の物語―


「おはよう、今日も暑いね。」

「はよ、ほんと嫌になるな~。」

 そんな話をしながら学校に向かう。

「南十星くん夏休みは何か予定あるの?」

 もしないんだったら、一緒にいろんなところに行きたいな。

「いや、特に…。てゆーかその前にテストがあるだろ。大丈夫なのか?」

「あう!!それは言わないで~!!」

 テスト、いつもギリギリなんだよね…。

「はあ…。まったく、また見てやるから、夏休み補習は免れろよ。」

「え!ほんと!?」

「一緒にいろんなとこ行きたいしな。」

 嬉しい。同じこと思っててくれたんだ。

「うん、頑張る!」

「おう!その意気だ!」

 そう言っているうちに学校についてしまった。早いよ~。

 私たちは別々のクラスだから教室の前でお別れした。

「星来、おはよー。」

「おはよ、愛良ちゃん。」

 前の席の愛良ちゃんとは入学当時から仲良し。

「宿題やった?」

「やったよー、正解してるかは分かんないけど…。」

「はあ、星来はいい子だよね。頭いいかは別として。」

「ちょ、それどういう意味!?」

「おはよ、星来ちゃん、愛良ちゃん。」

 問い詰めようとしたら後ろの席の凛久くんが来た。

「あ、おはよ。」

「南十星とはうまくいってる?」

「うん、毎日楽しいよ。」

 凛久くんは南十星くんと幼馴染らしくて、よく気にかけてくれる。

「そう、良かった。南十星、彼女いたことないから色々心配らしくて、よく電話してくるんだ、『どうすればいいんだ~』って。」

「そうなんだ~」

「その話もっと詳しく!!」

 私よりも愛良ちゃんのほうが食いついてびっくりした。

「いいよ、それでね…。」

 その後も、チャイムが鳴るまでその話は続いた。すごく意外な話がいっぱいだったけど楽しかった。でも、何でそんな事話してくれるんだろ?

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