第296話 むっつりスケベなイリスさん
「ハルト。今日は汗かいたし、先にお風呂入ろうと思うんだけど……」
イリスの家に着いたところで、そんなことを言い出すイリス。確かに夏ということもあって今日はお互いに汗をかいてしまっている。汗を流したいのは俺も同じだ。
「せっかくだし一緒に入っちゃおうか」
「せ、狭いよ」
「嫌か?」
意地悪くそう訊き返すと、イリスは顔を真っ赤に染めて小さく呟いた。
「その訊き方はずるいと思う」
✳︎
「今思ったけど、この服って普通に洗えるのかな?」
「どうだろう。でも刃物でも切れないんだから、水くらいじゃどうにもならないと思う」
今日買った既製品の特殊服を脱ぎながらそんなことを話す俺達。新品だから色移りを防ぐためにも他のとは別々に洗わないとな。
「……」
「どうした?」
背中を俺に見せた状態のまま、下着を脱ごうとしないイリス。相変わらずの無表情だが、いつもよりも若干ジト目成分が高めな気がしなくもない。
「脱ぎたいんだけど……」
「おう。俺も脱ぐぞ」
そう言って下着を
「……えっち」
観念したのか、下着を脱いで同じく裸になるイリス。恥ずかしそうに腕を身体の前に持ってきて胸を隠している。……しっかり見えてるけどね。
「綺麗だよ」
「ばか」
そうは言うイリスだが、見た感じ満更でもなさそうだ。何気にイリスの奴、リリーやメイと比べて恥ずかしがり屋さんなんだよな。小さい頃から一緒にお風呂に入ってないってのもあるんだろうが、本人の気質的に肌を晒すのが恥ずかしいんだろう。それでも一緒にお風呂に入ってくれるあたり、可愛い奴だ。
「ふさふさ〜」
「おおお、おばかっ! ハルトのあほっ」
調子に乗ってお触りを敢行した瞬間、イリスが『
「ああああああ! 戻ってきてくれぇ、イリス!」
せっかく一緒に入るってのに、姿が見えなかったら意味ないじゃないか!
「……ここはまだ触っちゃ駄目」
「はい」
そういうことはお互い汗を流してから、だな。
さて、そんな一悶着を経てバスルームへと入る俺達。この世界ではまだシャワーは普及していない(無いわけではない)からバスタブに貯めたお湯を洗面器で被る形になるわけだが、考えてもみれば一軒家ではない集合住宅なのに一家に一つ風呂があるってのは割と凄いことだよな。
「イリス、ここの家賃結構するでしょ」
「うん。二〇万エルくらいかな?」
おお。やっぱりちゃんと高かった。高級マンション(とはいっても三階建てだが)なだけはある。ただ、これでもこの広さと高級感でその家賃というのは安いほうだ。皇都でも中心部から外れた比較的外縁部にあるからこの値段で済んでいるのであって、これが学院や繁華街の近くともなれば軽く三〇から四〇万エルは超えてくるだろう。
「特魔師団に入る前なら考えられないお値段」
「それを余裕を持って払えるくらい稼いでるイリスは立派だよ。カルヴァンのご両親もさぞ鼻が高いだろうね」
「うん。何気にもうお父さんの収入は超えている」
「……もしかしたら涙目かもね」
イリスの背中を洗ってやりながら、そんな風に返す俺。……それにしても綺麗な背中だな。しっとりと湿った青髪がうなじに貼り付いているのはとても艶やかだが、その下に続く背筋もまた色白で線が細くてとても魅力的だ。
そのままスルスルー……と身体の前へと手を回してお腹、
「あっ、ちょっ、胸」
「柔らかい」
「ん……、ば、ばか……」
リリーのとも、メイのともまた違う感触を味わいながら、丁寧に泡で包んでいく。首元から覗く鎖骨と細い肩にキスをしながら、イリスを泡だらけにしていく。
「昔、お母さんと一緒にお風呂に入ったのを思い出した」
「今一緒に入ってるのは獣欲に
お前がママになるんだよ! ……とは言わない。流石にまだ学生だし、時期尚早だろう。だがいずれ卒業して落ち着いたら……その時は、幸せな家庭を築いていきたいな。
「流すよ」
「うん」
ザパァ、と頭からお湯を掛けて泡を流してやると、艶々に光る綺麗な肌色が露わになった。
「次はハルトの番」
「俺はいいよ、自分で洗うから」
「駄目。ハルトはわたしの身体を楽しんだんだから、わたしにもハルトの身体を触らせるべき」
「そ、そうか」
「筋肉質で結構クセになる。とてもエッチ」
「そうか……。よかったね」
「うん」
邪な目つきで俺を舐め回すように見てくるイリス。見られて恥ずかしい身体はしていないつもりだが、流石に視線がくすぐったいな。
先ほど俺はイリスのことを奥手で恥ずかしがり屋さんとは言ったが、むっつりスケベじゃないとは言っていない。こう見えてイリスは、リリーやメイに負けず劣らずだいぶ性欲が強い変態さんなのだった。
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