第67話
「また森で野宿かよ・・・・・」
「お風呂入りたい~~」
「ベッドが恋しい」
いつぞやと同じく、礼二は木の上で遠くを見ながら枝に体を預けていると、下の方でテントを張りながら愚痴っている天使たちの声が聞こえてきた。
礼二の存在には、気づいていないようだ。
(ならお前らももっと戦えよ・・・・・)
半ば呆れながら、配給された水を一口を飲んだ。生ぬるい水が一日の倦怠感を鳥肌のように湧き立たせる。
「遅くなってるの、礼二のせいじゃね?」
とりとめのない愚痴の応酬に交じって、聞き捨てならないセリフが耳に飛び込んでくる。
「だよね~。なんか派手に戦ってるけど、時間かかりすぎ。ミリナもあんな奴にペコペコしちゃってさ」
「俺らなら、もっとうまくやれる」
(・・・・・俺だって、怒るぞ?)
思わず体からにじみ出そうになる怒気を抑えながら、礼二は下手な作り笑いを浮かべて、勢いよく地面に降り立った。
「ひっ!」
「こんばんは。いい天気ですね」
「・・・・・あ、ああ。そうで、すね?」
動揺を隠せないでいる三人組に、礼二はゆっくりと近づいていった。
「さっきの話」
「「「っ!」」」
三人は思わず臨戦態勢に入る。
「あれは、皆さんの総意ですか?」
今まで見たこともないほど腰が低い礼二に三人は眉をひそめながらも、なんとか返答した。
「そ、そうだよ! 皆、言ってたぞ!」
(・・・・あせると人は幼児退行するんだな)
小学生のケンカみたいになってきた返答にウンザリしながらも、礼二は話を続けた。
「それじゃあ、僕は明日以降後ろにいますね。よろしく頼みます」
それだけ言うと、礼二は素早く木の上に戻っていった。
「・・・・・・・・」
「・・・・・・・・」
「・・・・・・どうする?」
「ひとまず、皆に伝えようか」
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「頭がお亡くなりになった」
魔王城に数ある広間の一つで、中性的な顔立ちのダークエルフたちは、その一種の芸術品ともいえる顔をゆがめた。
「・・・・・・さらに、明日の先鋒は我々だ」
「なっ! 我々は後方支援ということで話がついていたではないか!」
一人が声を上げる。
「そ、そうだ! それに我々の戦闘能力は魔族の中でも最底辺に位置している。勝ち目がないどころの話ではない」
「・・・・・私だって、そのことはわかっている! だが、魔王様のご機嫌をこれ以上損なうわけにはいかない!」
貧弱だからこそ、魔王の恐怖がどの部族よりもよくわかるのだろう。その言葉に異議を唱える者は、唱えられる者はいなかった。
※次回更新 7月17日 日曜日 0:00
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