第43話
「おらっ!」
タイロンの真剣が躍り、礼二の手甲とぶつかり、火花が散る。
「っ、真剣ですか」
「おう!」
「折っても文句言わないでくださいよ!」
タイロンの剣戟に合わせて、礼二も拳打を繰り出す。剣と拳が何度も交じわり、離れる。
礼二は蹴りと合気道を封じて、戦っていた。蹴りはともかく、合気道を使ってしまうと、一瞬で勝負がついてしまうからだ。
周りの天使と団員も手を止めて、2人の戦いに目を奪われていた。互いの攻撃を繰り出す2人の顔には、戦闘の狂気がにじみでていた。
どれほど、そうしていただろうか。おそらく5分くらいで、2人はいったん距離を取った。
「ふうう。・・・・これからは本気でやらないか?」
タイロンの申し出に、周りが驚愕した。最初の訓練で、本気を見ているからだ。
「かまいませんよ。ただ、死なない程度にしてくださいね」
「もちろんだ。それに、手加減してもらうのは俺の方かもしれんしな」
タイロンが剣に魔力を込めて、振りかぶる。
「
タイロンが砂埃を残して消え、礼二の上空に現れた。
「ぬううううん!!」
すさまじいうなりを上げて、剣が振り下ろされる。礼二はそれを受け入れるかのように両手を差し出した。
脳天に剣の風圧を感じた瞬間、差し出された両手が流水のごとく躍った。タイロンの両手首をつかんで、引き寄せ、ほんの少しだけ落下してくる方向を変えてやる。
軽い肘打ちでタイロンの肘を曲がらない方向に押さえ、両手を離した。
ドゴッ!
落ちる方向を変えられ、あげく両手を離されては、落下に引き込むこともできない。大体、一瞬ではあるが、肘を決められた時点で、それはほぼ不可能になっていた。
「いってえ~。すごいな、レイ」
「どうも」
(相当の衝撃だったはずなのに、なんで平気そうなんだよ。そっちのほうがすごいよ・・・)
礼二はタイロンに手を貸し、立たせた。
「・・・・なんか、注目されてんな」
「そうですね。・・・・どうしましょう」
何か言ったほうがいいかなとか考えていると、団員が拍手を始めた。誰もが目をキラキラさせている。
天使たちも顔を見合わせながら、拍手を始めた。が、遠くで礼二をにらみつけている集団がいる。
(才記と小栗。あとは取り巻きか。・・・・ちょうどいいや。発破かけてやろう)
それから、天使たちは以前よりも集中して、訓練し始めた。弱いと思っていた礼二があれだけ戦えたことになにか感じるものがあるのだろう。
そんな中、礼二に才記が近づいてきた。
「おい、」
※次回更新 5月13日 21:00
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