第2話


 「おお!!」


 学級委員の大塚才記が水晶に手をかざすと、ミリナが歓声を上げた。才記はさも当然だと言わんばかりの顔でふんぞり返っている。


 「あなたのジョブは”勇者’’です。ジョブスキルとして聖剣使いがあります。これから魔王攻略の要となる存在ですね」


 「よろしくな、勇者様!」


 「頼りにしてるよ!」


 クラスメイトからも同じく歓声が上がり、才記は満足そうにうなずいた。


 さて、次は礼二の番だ。


 (なるべくなら格闘術を生かせるようなスキル?、がいいんだけど)


 「・・・・・」


 礼二が手をかざした水晶をミリナは冷たい目で見ている。


 「あなたのジョブは細工師。ジョブスキルは細工。鍛冶の下位兌換スキルです。次の人!」


 それだけ言うと、ミリナは礼二を追い払うようなしぐさをした。


 (・・・この手の物語に疎い俺でも、さすがにチートじゃないのはわかった。さて、どうしたものか・・・)


 気づけば、クラス全体から白い眼を向けられている。居心地悪いことこの上ないが、礼二がにらみつけると全員目をそらした。


 それから全員が水晶に手をかざし終えた。


 「それではお部屋をご用意したので、ご案内いたします」


 そういうと、外から入ってきた執事のような人に着いていくように指示された。礼二もついていこうとすると、ミリナに話しかけられた。


 「おい、」


 「・・・・なんすか?」


 「お前はこっちだ」


 「・・・・わかった」


 そう言ってミリナは歩き出した。礼二はそれに着いていく。ミリナは城の外に出て、裏手のほうに回っていく。


 (・・・警戒だけはしておこう)


 「入れ」


 ミリナが指さしたのは地下に続く階段だった。じめじめとしていて、いかにも牢屋臭い。


 (勝手に呼びつけておいて、この待遇かよ・・)


 内心ミリナを殺したい欲求にかられながらも、礼二はおとなしく下に降りていった。

 

 すると、中にはくたびれた鉄格子の部屋が1つだけあった。


 (まんま、牢屋じゃないか!、・・・ここで暮らすの?)


 「食事は三度運んでやる。さっさと入れ」


 「はいはい」


 礼二はおとなしく中に入った。その様子にミリナは違和感を覚えながらも、手間がかからなかったことに安堵した。


 「お前、なんでこんな待遇なのか、聞いたりしないのか?」


 それでも違和感はぬぐえず、ミリナは礼二に聞いた。


 「別に。戦わずに済むのならこっちのほうが快適だしな」


 「!、そうか。やはりお前はここにぶち込んで正解だったようだ!」


 それだけ吐き捨てると、ミリナは牢屋から出ていった。


 ※次回更新 4月3日 0:00

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る