拳闘士高校生、異世界で恋に落ちる
春風落花
第1話
「家に帰りたいなあ・・・・・」
大学の講義室のような中世風の部屋で
「それでは皆さま、異世界転移者、通称天使様方へのご説明をさせていただきます」
前方の壇上で、いかにも魔法使いですといった格好の女が話し始めた。
(勝手に呼びつけておいてその言い草はないだろう)
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礼二たちが転移させられたのはつい1時間ほど前のことだ。その日もなんの変哲もない、日常にふさわしい、のどかな日だった。
学校において礼二は特に変わったところもない、普通の高校生だった。しかし、育った環境が普通とは言い難かった。
礼二の父親は元キックボクシングの選手で今はジムを開いている。妻とは離婚中。
祖父は古流空手の道場主、
祖母は合気道七段という、格闘家族の下で育った。
一人っ子である礼二は3人による教育と呼ぶのもおこがましい、しごきを幼少期から受け、それなりの使い手になっていると自他ともに認識していた。
しかし今の世の中、相当治安が悪くなければ喧嘩なんて起きない。
礼二の実力は絵にかいたような宝の持ち腐れであった。
そんななか、礼二はクラスメイトと担任を含む、36人で異世界転移に巻き込まれた。
クラスのHR中に突如、視界が白一色になり、気づけば大広間のような場所に飛ばされ、目の前には中世の貴族風の人々がいた。当然パニックになるものもいたが、担任と学級委員が納め、促されるままに来てみれば、解説が始まった。
(くだらない・・・)
中にははしゃいでいるものもいたが、礼二にとっては迷惑なだけだった。
女、ミリナの話ではここはグロッグ王国というらしい。俺ら、異世界転移者のことを天使と呼び、魔王と戦わせたいそうだ。
「天使様方には、この世界の住民とは一線をかくす能力が備わっています」
「そ、それってチートってやつ? だよな?」
クラスメイトの一人が興奮を隠しきれないような口調でそう言った。
「先代の天使様もそう言っていらしたようです。それでは、全員、この水晶に手をかざしてください。これで、個人のジョブとジョブスキル、魔法適性が見れます」
「わかりました。では、私から・・・」
率先してやった担任に続き、生徒たちも順番にやっていく。中には思ったような力がもらえずに落ち込むやつもいた。
(俺は別に魔王なんて興味ないしな)
礼二にはいきなり呼びつけられたこの世界を救うつもりなど、毛頭なかった。
※次回更新 4月2日 0:00
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