第6話 食事はちゃんととりましょう
それから何匹か角ウサギを倒して、レベルが8まで上がった。
途中、MPが切れて、木の棒ひとつ、ヒットアンドアウェイ方式で戦いました。頑張ったよ、私!
ちなみに、ドロップアイテムは全て虹色の角でした。
ふっふっふっふっ。
やっぱり運って大事だね!
カイとレイちゃんが呆れた顔してたけど、高く売れるんならお得じゃん。
「あわわわわ」
次の獲物を求めていざゆかん!といっぽ踏み出そうとした瞬間、力が抜けてペタン、と座り込んでしまった。
「スタミナ切れだな」
「え?HPはまだあるよ?
限りなく少ないけど」
「HPの方じゃなくて空腹度の方だ。
お前やたらと動き回ってただろ」
「空腹度が限界を超えると動けなくなるの?」
「動けないことはねぇが、歩みが遅くなる上に基本ステータスが大幅ダウンだな。
そうそう、死に戻りになったらリアル時間で3時間、ステータスが3分の1になるから気をつけろよ」
仕事や学校で夜しかログイン出来ない人のためにも、この世界では12時間で1日が経つようにできている。
それより、ステータスが3分の1になると言われましても
「私基本的にステータス0だよ?」
「だから動けなくなったんだろ。減らすもんがないから」
ああ、なるほど。
「じゃあ、俺がおぶるよ。
町のカフェで何か食べよう」
流れるような動作で私をおぶったカイ。
すごいね、断る暇もなかったよ。
「重くない?」
「全然。
ソラは小さい上に、装備補正とかが付いてるから、全く重さを感じないよ」
「小さいは余計」
てしっ、とカイの頭にチョップすれば、ごめんごめん、と謝られた。
なんか、こういうやりとりって
「「なつかしいね」」
「ふふふ。昔は私がおんぶする方だったのにな。
お母さん達とはぐれて『お姉ちゃーん!!』って泣きつく可愛い弟はどこに行っちゃったんだろう。お姉ちゃん寂しい」
「俺の記憶では、はぐれた原因の9割はソラのせいなんだけど。方向音痴のくせに探検とか言って俺を振り回すから」
「方向音痴じゃありません!
地形が複雑なのが悪いんだよ」
「方向音痴の奴はみんな同じこと言うな」
「レイちゃんは黙ってて!」
私たちは思い出話に花を咲かせながら、町に戻った。
イケメン(弟)におんぶされた私が注目の的にならないはずがなく、視線をビシバシ感じました。
そのうち背中からグサッと刺されそう。
このゲームにプレーヤー殺しのシステムがなくて良かったと心から思った。
そして連れてこられたのは少し道をそれたところにあるオシャレなカフェ。
はちみつたっぷりのパンケーキを思う存分味わって、今は食後のコーヒー(私のはカフェオレ)でまったりしている。
いくら食べても太らないって、素晴らしい!
思わずにやけてしまう頬をむにむにと揉んで誤魔化す。
「ソラはこれからどうするの?」
「んー。とりあえずここら辺でレベル上げをしたらこの世界を見て回ろうかなって思ってる」
「その事なんだけどさ、俺たちのパーティーに入らない?」
「んむ?」
頬っぺをむにむにしていたせいで、変な声が出てしまった。
「ライ姉もルイもいるから、ほとんどが知り合いのパーティーだよ」
説明しよう!萊姉はレイちゃんのお姉さんで、琉ちゃんは妹である!
さらに言えば、萊姉は私のお兄ちゃんの彼女です。
2人の結婚式でスピーチするのが私の夢の一つなのですよ!
萊姉も琉ちゃんも、私と仲良くしてくれる、とても優しい人なんだ。
閑話休題
正直仲がいい人ばかりのパーティでこの世界を回る、というのはとても魅力的なお誘いだった。なんせ、みんな忙しくて、5人が最後に集まったのはだいぶ前なのだから。
でも、
「すごく素敵なお誘いだけど、ごめんね。
私のような初心者が入ったらみんなの足引っ張っちゃうだけだよ」
「そんなことない……!」
「カイたちはそうかもしれないけど、知らない人からしたら私がいたら迷惑極まりないよ。
それに2人はトッププレーヤーとして活躍してるんでしょう?尚更私みたいな初心者のレベル上げなんかに付き合ってたらダメだよ」
視線が集まるのはカイとレイちゃんがかっこいいからだと思っていたけれど、それが理由だけではなかった。
女性だけではなく、男性プレーヤーからの視線も多く、みんな尊敬の眼差しで2人のことを見てた。『あれが噂の~』『トッププレーヤーの~』って二人の名前を呟く声があちこちから聞こえたし、第二陣の人達でさえ2人を知っていた。
私がパーティーに入ったことで、2人の評判を落とすのだけは絶対に嫌だった。
「私なら大丈夫だから。
そもそも私はほのぼのこの世界を見て回るのが目的だもの!」
安心させる意味も込めて、ニッコリ笑う。
「でも」
「カイ、諦めろ。
ソラが1度言い出したら聞かないのお前が1番わかっているだろ」
「……わかったよ。
でも、約束して。ピンチに陥った時には必ず連絡すること。ログインしている限り助けに行くから」
「うん、約束する」
「それから、男しかいないパーティーに誘われた時は気をつけて。というか出来れば加入しない方が俺としてはいいけど。
パーティーを組むならなるべく、女の人が多いやつにするんだよ」
「今のところパーティーを組む予定はないよ?
私もゆっくりだけど、レベル上げ頑張るからさ、いつかは萊姉達、皆と冒険に行きたいな」
「ぜひそうしてくれ。
姉貴達も喜ぶ」
2人とフレンド交換をする。
今の今まで忘れていたよ。
カイと交換した際にプレゼントが一緒に届いた。
『身代わりの指輪:1度だけ死に戻りを回避できる指輪』
カイの方を見れば、叱られる前の子供みたいに、眉尻を下げて私の方を見ていた。
「ソラがこういうの嫌なのは分かっているけど、せめてこれだけでも贈らせて。
気休め程度だけど、初めての死に戻りが少しトラウマになったってプレーヤーもいるみたいだし、ソラにはできる限りそんな思いして欲しくない」
「そっか。
ありがとう、カイ」
よしよし、と頭を撫でれば、カイは嬉しそうに頬を緩めた。
うちの弟超可愛い。
「ソラ、虹色の角どうするんだ?」
「売るかな。別に取っておく必要もないんでしょう?」
「じゃあ、俺に売ってくれ。
姉貴が集めてるんだ」
「お金なんていいよ」
「いや、代金は払う。
最初の方は装備揃えるのとか色々金がかかるし、またソラから何か買う時にちゃんと払ってないと頼みづらいだろ。
期待してるぞ、その飛び抜けた運に」
「それもそうだね。
トレードを押したらいい?」
「ああ」
アイテムボックス欄にあるトレードを指でタップし、虹色の角を10個レイちゃんに贈る。
すると、150000Gが送られてきた。
G《ギル》はゲーム内でのお金の単位だ。
「これ多すぎない?
身内贔屓されたら、私も次から売りづらいよ」
「いや、妥当な値段だ。
市場で13000Gで取引されてるし、鑑定したらこの虹の角全部運補正がついてたからな。
補正値がつくアイテムはそれだけ高くなるんだ」
「わかった。レイちゃんを信じるよ。
それじゃあ、私は1回ログアウトするね。晩御飯作らなきゃ」
「近々また会いに行くから」
「了解。
今日のお礼も兼ねてカイが好きなもの作るね。
レイちゃんも来るでしょう?」
「あぁ」
「レイは来なくていい!!」
そのやり取り毎回やっている気がするなあ。
カイも本当はレイちゃんが来てくれて嬉しいのに、素直じゃないんだから。
「ソラ、レベルが10になったらSPがもらえるから、まず【鑑定】を取れ。
ドロップアイテムが出たら必ず【鑑定】すること。お前は騙されかねない。
それから、【料理】スキルのレベルが低いまま普通の料理を作るようなことはしないこと。それで琉が何回も爆発起こしてる。
とりあえずは肉を焼きまくれ」
それはいいことを聞いた。
料理する度爆発されたらたまんないよ。
「わかった。色々ありがとう。
それじゃあ、またね」
2人に笑顔で手を振って私はログアウトした。
「さて、姉貴たちにどう説明するか」
「……任せた」
「ふざけんな。
どうせリアルで文句言われるのは俺なんだ、こっちの時ぐらいお前が相手しろよ」
「はああああ。
ソラ考え直してくれないかな」
大物2人がゲンドウポーズでカフェにいたとその日の掲示板は盛り上がった。
ーーーーーーーーーーーーーーー
名前 ソラ
種族 鬼っ娘
Lv 8
HP 100/550
MP 43/500
攻撃 0
防御 0
速さ 0
知力 0
運 20
スキル【羅刹化 lv2 5min】【雷魔法 lv1】【打撃 lv3】【料理 lv1】
AP 35
SP 0
ーーーーーーーーーーーーーーー
【打撃:魔法を使わずに一定数の魔物を討伐すると取得できるパッシブスキル。
クリティカルヒットの確率が上がる】
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます