第2話 AP何それ?アップルパイの略か何かですか?
大海からヘッドギアが届いてから数週間が経った今日、ついに第二陣が始動する。丁度昨日から夏休みに入り、二年生は課外が自由参加なのもあって思う存分ゲームができそうだ。
私はAWOの魅力のひとつである壮大なグラフィックをとても楽しみにしている。
配信は12時からなので、午前中に課題を済ませ、昼食も食べた。
空調を整え、ヘッドギアを装着してベッドに横になる。開始時間が近づくとカウントダウンが始まった。
5
4
3
2
1
ワープ!
すうっと一種の睡魔に似た感覚に襲われ、私はAWOの世界に飛び立った。
「ようこそ!AWOの世界へ!
AWOはあなたを歓迎いたします!」
目を開けると、そこにいたのはスーツを着た美人さん。
綺麗な黒髪に、ひときわ目立つたわわに実った大きな胸。
くっ、いいよ!
私ももう少ししたらあれぐらい……!
「お客様?
先に進みたいのですが、よろしいですか?」
「あ、すみません。どうぞ」
「今からあなた様にはアバタ―の設定とチュートリアルを受けていただきます。
私のことはガイドさん、とお呼びください。
では、まずあなたの名前を教えて下さい」
目の前にNAMEと書かれた欄とキーボードが出て来たので、“ソラ”とカタカナで入力する。変に変えたら呼ばれても気づかなそうだしね。
このゲームは本来の顔がアバタ―のベースとなるので名前が重複しても大丈夫だそうだ。
「ソラ様ですね。
種族の決定の前に戦闘のチュートリアルを受けていただきます」
ガイドさんがすっと手を上げると十メートル先に案山子が現れ、私の手には木の棒が握られていた。
「今からあちらに見えます敵に見立てた案山子が向かってきますので、手に持った木の棒で攻撃してください」
ガイドさんが手を振り下ろしたのと同時に案山子が向かってくる。
ぴょんぴょん飛んでくるのかと思っていたのだけれど、滑るように動いたので少し吃驚した。
目の前に案山子が来たので、棒を振り上げ、勢いをつけて殴る。
ポコン、と間抜けな音がして、案山子はキラキラのエフェクトと共に消えた。少し幻想的だった。
「お上手です。
次に、木の棒が剣になるよう念じてください」
え?この棒剣になるの!?
とりあえずガイドさんの言う通りに念じる。
すると、木の棒が長剣に変身していた。
「わっ!本当に変わった!」
「フフフ。念じれば色々な武器に変わりますから、自分に合ったものを探してみてください」
それから、向かってくる案山子を的に様々な武器を試す。
長剣、短剣、弓、槍、杖etc……流石に戦車は出てこなかった。
うん、一番しっくりきたのはやっぱりあれだね。
「もう大丈夫です」
「承知しました。
次に外見と種族の選択に移ります。
説明書に記載してあった通り、本来の顔がベースとなりますので、ご了承ください」
目の前に文字が羅列したウインドウと鏡が現れた。
まずは、外見から。
うーん、髪どうしようかな。
現実世界の私は、肩にかかるぐらいの長さの黒髪ボブだ。この世界でも同じ長さぐらいでいいかなあ。あ、でもせっかくだから色は変えたい。赤、青、ピンク!?……これはさすがにいいや。
結局選んだのは黒髪。どうしても黒髪以外の自分の姿に違和感が拭えなかったんだよね。
次は目。これはもう決めてある。
私は瞳の欄を下にスクロールして、目的の色を探す。
選んだのはアクアマリン。名前と同じ空色だ。
あ、身長も5センチ以内なら上下できるんだ!
わーい、もちろん5センチアップだよね。ぐぬぬ、まだ160㎝代には届かないか。
あれ?外見もう終わり?
一番大事なところの設定がまだなんですけど。
「あの、」
「はい、何でしょう」
「胸の大きさとかって変えられないんですか?」
「……」
「……」
変な沈黙がその場に流れる。
やめて!そんな可愛そうな子を見るような目で私を見ないで!
まだ成長期なの!!
「な、なんでもないです。
忘れてください」
「…ソラ様。
大丈夫です、そういう嗜好の方も世の中にはたくさんいらっしゃいますし、人間中身が大事です!」
「HAHAHAHA
ありがとうございます」
ガイドさんが大きすぎるだけだし!
ちくしょう、私だって私だって。
気を取り直して設定を続ける。
次に現れたウインドウには“AP振り分け”と書かれていた。
えーぴー?何それ?
AP 20
攻撃 0
防御 0
速さ 0
知力 0
運 0
えーと。これに振り分ければいいの?
この中じゃあ運が1番大事だよね?
運がないと生きていけないよ。
AP 0
攻撃 0
防御 0
速さ 0
知力 0
運 20
よし、できた。
次は種族選択だね。
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