第4話【手伝い】
「遅いなぁベイリス。いつも集合は一番に来て待ってるのに……」
「確かに珍しいわね……まさか家で何かあったんじゃ!?」
「まぁ、そろそろ来るだろ。」
集合場所にいるメアリとシグが心配そうにしている。
「おーい、シグーメアリー待った?」
「おっメアリ、噂をすればやっと来たぞ寝坊助ベイリスが。」
「ベイリス、何時もよりも遅かったけど何かあったの?」
「いやー、エイテ親父にちょっと作って貰いたいもんがあって……」
まさかこんなに時間が掛かるとは思ってなかったんだよな……
「あ〜、なるほど、新しい剣でも作ってもらうのを頼み込むのに時間が掛かったのか――」
「いや、違うんだよ、作って貰おうと頼んだのは剣じゃないんだ……それにかなりすんなり引き受けてくれて――」
「ベイリス、じゃあ何があったんだ?」
シグが不思議そうにそう聞いてくる。
確かにエイテ親父がすんなり引き受けてくれる事なんて滅多にないからな。
「エイテ親父、なんか新しい未知の物を作ってみたいとか思ってたみたいで……作って貰いたい物を設計図に書いて渡したらなんか火がついたらしくて詳しく説明してたらこんなに遅れた。」
『こっ、コレだァァァ!!!』って若干狂気混じりで迫られて来たからなぁ……
ホントにあんなに熱心なエイテ親父、初めて見たよ……
あとから聞いた話なんだが昔は常時そんな感じだったそうだ。
…………常時あんなテンション……かなりはた迷惑な奴だったんだな……
「へー、あの頑固なエイテ親父に火を着けさせるって、ベイリスどんな物を注文したの? 気になるわ。」
「……う〜ん……説明するのが難しいから後でできたものを見せるよ。」
エイテ親父に説明するのもちょっと時間かかったし……
何より面倒臭い。
出来上がった物を見せたほうが早いし。
「じゃあ、楽しみに待ってるわ。」
「さて、取り敢えず、今日はロクス兄さんの実家の、トレビジス家の手伝いって事で良いんだよね?」
「あぁ、その事については昨日、帰り道でバッタリ
「流石シグ。」
「へぇ〜偶にはシグも役に立つのね。」
……とメアリが言う。
するとシグは――
「まぁ、少なくともお前よりは役に立つさ。」
と返す。
流石シグは人をからかい慣れてるな。
どんな事を言われても反射出来るみたいだ。
「シグ!!」
「ほらほら、早く行こうか〜メアリ、シグ〜。」
「むぅ〜〜」
広場から山の方向に伸びている土の道を進んでいくと、この辺りの大農家トレビジス家の農園が見えてくる。
トレビジス農園では、飛竜船とかで運送し、主に中央都市で売る為の青野菜とかを作っているんだよな〜
広大な土地に広がる綺麗な緑の目立つ畑。
結構いろんな種類の野菜とか果物とかを育てているトレビジス家は確か……
土地価の安い田舎から土地価の高い中央都市に飛竜船を使って運び、中央都市に大幅に安く、いろんな人に新鮮な野菜を食べて貰える様にした"農家界の天才"、また"商業の天才"と言われている。
この農業ってなんって言うんだっけ?
確か近郊農業とかって言われているんだっけな。
トレビジスさんの最近の悩みは田舎だからギリギリ人が足りなくなって来ている事らしい。
昔っからロクス兄さんとこの時期になると、よく一緒に手伝いとかしてたし結構手慣れてきた。
結構貰える小遣いの量とか結構太っ腹だし、流石商業の天才って言いたくなる。
「おっ、ベイリス、メアリ、見えてきたな。」
「やっぱり何度見ても大きい学び舎だね。作られたのが去年ってことを忘れるくらい生徒で賑わってるし。」
「何度見ても驚かされるわね。」
校庭付きで百M×十五Mの屋上付きの建物……
トレビジス家はその財力を活かして学び舎を開き、中央都市では比べ物にならない位の安さでこのあたりの子供たちに勉強をさせられる場所を開いている。
勿論、教師は中央都市での商売中に知り合った腕の良い教師達らしく、その評判を聞きつけて今では中央都市からも子共達を通学させている親が結構いるとか……
この学び舎を開いたのは去年だったのにロクス兄さんの実家って事で広まるのがかなり早かったみたい。
今ではその生徒たちも農業体験って名目で自主的に手伝ってくれているとか。
それでもギリギリらしい。
その理由はこの時期になるとこの国の法律で労働で払う税金とかがあり、しばらく緑玉石の月か、長月石の月まで男の大人がいない期間が続いてしまうんだよな……
だからといって人を雇うにもここまで来ようと思っている人も少ない。
中央都市に昔っから住んでいる人たちは田舎=格下という謎の思考回路があるみたいなんだよな。
その所為もあってロクス兄さんでも18になるまで資質検査を受けさせてもらえなかったらしい。
そんな事を考えながら歩いているとふと誰かから呼びかけられる。
「おーい、ベイリス君ー、シグ君ー、メアリちゃんー!!」
声のする方向を見ると二人の大人が僕たちに向かって手を降っているのが見える。
う〜ん……誰だ――あっ! ロクス兄さんのお父さんとお母さんだな。
一瞬じゃ分からなかった……何であっちは分かったんだろう?
…………今日来るって連絡したのは僕達だけでそれに毎年3人で手伝いに来てるからだな……多分。
ロクス兄さんのお父さんとお母さん……トレビジスさんの方に向かって歩く。
「ど〜もー、やっぱりここはいつ来ても広いですね〜」
「そうだろう、ベイリス君。なんたって今や中央都市の野菜は殆どここで作られて飛竜船で運ばれていんだからなぁ〜」
「学び舎も繁盛してるみたいッスね。流石ロクス兄の父さん。」
「いや〜、昨日シグ君に偶々会えて良かったよ、本当に忙しかったからね。」
「トレビジスさん、今日は私達は何の手伝いをすればいいんですか?」
「そうだな、メアリちゃんには作物の水撒き、シグ君とベイリス君には収穫を手伝ってもらおうかな。」
「「「分かりました!」」」
それぞれ別れて分担された場所へ向かう。
「えーっと、キャベツの収穫はここをこうして、よいしょっ…………と。」
大分手慣れてきたもんだ。
それにしてもやっぱりこの畑広いな〜……ん? なんかちょっと煙い……
あ、シグが火の魔法を使って焼き畑の手伝いやってんだな。
メアリは水の魔法を使って野菜に水やり、土のついた芋とかも洗浄してる。
やっぱり二人の使える魔法は便利だな。
僕の使える魔法は殆ど身体強化系だし、やっぱりあんな感じなのはなんか憧れる。
そんな事を考えながら収穫をどんどん進めること10分。
ふぅ……担当の畑のキャベツ400玉全部収穫できたっと……
伸びをしていると、シグが僕の担当の範囲が終わっていることに気づいたらしい。
「うぇっ!? ベイリス、もう全部収穫できたのかよ……相変わらず早いな。しかも丁寧だし。」
「まぁねシグ、身体強化を極めると一秒に一玉ぐらいのスピードでサクサクッとね。」
「マジかよ……俺も身体強化使ってるけど一玉十分秒はかかるぞ。」
シグが驚きながらそう言う。
「その速さじゃあ一時間は掛かっちゃうよ。手伝おうか?」
「頼む!! ベイリス!」
ただで引き受けるのも――あっ!
今年もシグにアレを手伝ってもらう口実として使えるな。
「じゃ、手伝うけどその代わり明日、毎年のアレを探して採取するの手伝ってね。」
「あーアレか、久しぶりだな。確かにそろそろ森ン中に生えてくる時期か。」
「そ、いくら身体強化が凄くても広範囲を同時に探せた方が効率がいいからね。」
「はいよ、じゃ頼むぜベイリス。」
「あぁ、頼まれた!」
サクサクッと〜どんどん収穫〜
身体強化を使うと、なんだか周りの流れる時間がゆっくりになっている感じがするなぁ〜〜
「ん〜〜おわった〜」
「ふぅ……どうやりゃそんなバカみたいな身体強化使えるようになるんだよ……ベイリス……」
「まぁな、メアリとシグと違って僕は殆ど身体強化しか使えないからね。」
「まぁ、確かにそんなバカみたいな身体強化使えれば、それはそれで十分か……」
「さてシグ、メアリの方も様子を見に行ってくる?」
「はいよ。」
思ったよりも早く終わったな。
後はメアリの方はどうなっているんだろ?
収穫した野菜を箱に入れ、台車に乗せて取り敢えず倉庫に向かう。
偶に学び舎に通っている子達も手伝っている様子が伺えるな〜……
これでもギリギリ人手が足りるか足りないかってところだから、この農園の広さを思い知らされる。
……………………………………………………
「ん〜〜、一仕事終えたあとの休憩は気持ちいいわね〜」
あ、倉庫の近くの木陰で休んでるメアリ発見。
「おいおいメアリ、殆ど水魔法を使った仕事と学び舎の四〜五歳位の子と
「ちょっ、シグにベイリス!? いつの間に! と言うかシグ! それいつ見てたの!?」
「あー確か、焼き畑するのが終わったから他に仕事が無いかトレビジスさんに聞きに行った時に、偶々目撃した。」
「メアリは相変わらず小さい子供が好きで面倒見がいいよね〜」
「小さい子は魔法を使って疲れた時に元気の出るエネルギー源よ! 嗚呼、なんで小さい子はあんなに可愛いのかしら〜……」
えーっと、こういう人の事を何って言うんだっけ?
何処でこの単語知ったんだっけ?
…………まぁあいや。
「メアリ……まさかだけど小さい子供を取って食ってたりしないよな? 大食らいだからって流石に無いよな?」
「失礼ね! シグ!!! それに私、そんなに大食らいじゃないわよ!」
う〜む。今回のシグの冗談はやけに演技混じりだな。
多分メアリは何時も通り、本気でそう言ってるって思ってるんだろうな〜
なんか段々とシグの冗談のその日の良し悪しが分かる様になってきたような気が……
メアリはやっぱり冗談かどうか見抜け無いらしい……ある意味純粋。
「さて、そろそろ他の仕事が無いかトレビジスさんに聞きに行こうか、メアリ、シグ。唯でさえギリギリらしいから。」
「そう言えばさっき休憩して魔力の回復が終わったら西の畑を手伝いに来て、って言ってたわよ。」
「じゃあ、シグと僕は先にそこに行ってるね。」
「ベイリス、丁度今回復したところだから私も着いてくわ。」
「了解。」
今回、メアリはの回復が早かったのはパニクらずにちゃんと制御しながら水を使ったからだろうな。
思った以上に早いみたい。
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