行ってらっしゃい、気をつけて。


 なんか無性に いたずらしたくて

 Tシャツの裾 引っ張ってみた

 ふたりだけの 帰り道

 あなたは真っ直ぐ前を見たまま

 なんだよ って呟いた


 その背中は いつの間にか

 ずいぶん大きくなっていて

 目を逸らした


 もう夏も終わるね

 何でもないように 言ったけど

 あなた 変な顔して

 どうした? って


 夏が 終わるのよ

 蝉もみんないなくなって

 あんなに元気だったのに

 みんな いなくなって

 あなたも


 行かないでって 言いそうになって私

 唇噛みしめた

 代わりに バカ って呟いて

 笑ってやったの


 川の向こうに見える夕日

 あなたと見る 最後の夕日


 元気でね って呟いて

 大きな背中 顔うずめたの


 涙に濡れたTシャツ

 ごめんね


 最後の夕日が ゆっくり沈む

 行かないで って 間に合わないけど

 だからせめて 精一杯の笑顔で

 餞の言葉 贈るの

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