1 ざっくり蟹満寺縁起型とは

蟹満寺かにまんじ縁起えんぎ型、または蟹満多寺かにまたじ縁起えんぎ型と呼ばれる説話は、所謂いわゆる蛇婿へびむこ系の話の一種である。


……端的に言うと、蛇が「人間を嫁にするで!(既成事実含む)」ってするタイプの話の一種。

この蛇婿へびむこ、代表的なタイプは苧環おだまき型(なんか知らん男通ってくる、なら糸通した針を着物に刺してやんなってやつ)と水乞みずこい型(田んぼに水入れてくれたらうちの娘嫁にやるって言っちゃうやつ)でしょうな。

蟹満寺かにまんじ縁起えんぎ型は解釈如何いかん蛙報恩かえるほうおん型を水乞みずこい型と解釈するかどうか)で、水乞みずこい型にベン図的にかぶるとこもあるかなあ、というレベル感の主要タイプとはちょっとはずれた蛇婿へびむこ系の話である。


蟹満寺かにまんじ縁起えんぎ型、蟹満多寺かにまたじ縁起えんぎ型という呼び方は、このお話を縁起えんぎとして持つ寺、蟹満寺かにまんじ(別称蟹満多寺かにまたじ紙幡寺かみはたじ)から。

このお寺自体は山城国やましろのくに相楽郡さがらかのこおり綺田村かばたむら(現京都府木津川きつがわ山城町やましろちょう綺田浜かばたはま)の真言宗の寺。山号は普門山ふもんざん

とはいえ、型としてはほぼ同じだけど、寺の縁起えんぎとしての部分がけずられた昔話が各地(秋田県由利郡の蟹沼伝説、石川県輪島市稲舟いなぶね笠原の蟹伝説、福岡県大牟田おおむた三池みいけの伝説など)に存在する。


なので、蟹報恩かにほうおんと呼ばれることもあるけど、そもそも蟹が登場する昔話で知られた話って結構少ないので、基本蟹報恩かにほうおん蟹満寺かにまんじ縁起えんぎ型(寺の縁起としての部分があるかは置いといて)である。


他に蟹が出る話というと猿蟹合戦さるかにがっせんとか蟹問答かにもんどうが有名ですね。

蟹問答かにもんどうはアレね、化け蟹、化物語のガハラさんですよ。

あと、猿蟹合戦さるかにがっせん敵討かたきうちのピタゴ〇スイッチパートこそワールドワイドで主流のお話だし、なんならインドネシアにほぼ同話が存在するとか。

まあこれは余談だ。


というわけで、そういう風に話の流れがほぼ変わらないのであれば、少しずつ存在するその差異こそが、この話の系譜を考える上での最上級の資料なのである。

というわけで、いくつか蟹満寺かにまんじ縁起えんぎ型説話とその違いを並べて、重箱のスミをつつきまくろうと思います、みんなつつくようのはしは持ったか?


ちなみに、蟹満寺かにまんじ縁起えんぎ型説話はざっくりわけて、

 ①仏教説話(原理主義)型

 ②仏教説話(お経・観音利益かんのんりやく)型

 ③昔話型

の三種類あります。

同時にこの順番で推移・発展(あるいは③が①、②と並行で拡散)と考えられます。なお、パターン命名は私。

というわけで、各型をざっくり説明するよ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る