王立魔導学院アルカナ生徒会

@hikarus225

1 魔を宿した転入生

 リュカは貧しい娼婦の息子で、生活がいつも苦しかったため、十二歳頃からは自らも男娼として客をとっていた。

 母親は夜ほとんど家におらず、リュカも好色な男客を相手にくたくたになるまで奉仕し、くたびれきって部屋に戻ってきてそのまま食事も摂らず毛布に潜り込んで眠るのが常だった。


 だから、街が焼かれたその夜のことを、リュカはよく憶えていない。


 地揺れで飛び起きた。壁が裂けており、夜空を焦がす炎が見えた。

 黒煙の中で、火を纏った小さな羽虫が何千何万と踊っていた。

 悪魔だ、魔導師マグスを呼んでくれ――という悲痛な声が聞こえた。

 激痛と、身を焼かれる熱。

 悲鳴、哄笑、獣のうなり声。


 気を失う寸前の記憶――。


 リュカはぎざぎざの暗闇に囲まれた穴の中のような場所に突っ伏して、なにかに向かって右手を必死に伸ばしていた。その指はなににも触れられず、なにもつかめなかった。なぜなら肘から先がもぎ取られ、虚空に向かって血をだくだくとあふれさせ続けていたからだ。


 リュカが最後に見たものは――


 瓦礫の中に転がり、炎の舌先になめられている、ちぎれた自分の右手だ。


       * * *


「……憶えているのはそれだけか?」


 王立防疫局の監察官がそう言って書類から目を上げた。収容所の狭い一室に、監察官に加えて護衛兵二人。尋問されているリュカはずっと縮こまっていた。


「右手が切断されたのをたしかに見たんだな?」


「……は、はい」


 リュカは答え、無意識に自分の右手に左手を這わせる。

 監察官もリュカの右手に目をやった。

 ちぎれてなどいない。手はそこにある。古びて黄ばんだ包帯が肘から指先にまでびっちりと巻き付けてある。


「……あ、あの……混乱していたから、……食いちぎられたように思い込んだのかも、しれない、です」


「いや」


 監察官は首を振り、包帯をほどいた。

 赤黒く変色した皮膚が表れる。冷えて固まった後の溶岩のようだ。しかも、そこかしこに鉛色の文字の列が焼き入れられている。リュカが見たこともない文字だ。


「おまえはおそらく受肉している」と監察官は渋りきった顔で言った。


「……受肉……?」


「人体が欠損したとき、悪魔が切断面から入り込み、欠損部の代わりとなるように変化して定着する現象だ。悪魔は地上ではきわめて不安定な存在だから、人間に寄生することで地上に留まろうとする」


 リュカは息を呑み、自分の右手を凝視する。


(……それじゃあ、今のぼくの手は……悪魔の肉体?)


 怖気が背中にまで伝わってきた。


「事故で偶発的に受肉するという事例は非常にまれだが……きわめて下等の悪魔であればあり得ない話でもない」


 監察官はそう言って、リュカの変色した右手をひねったり、羽筆の先で強く押したりした。感覚はちゃんとある。指も手首も自分の意思で動く。自分の腕にしか思えない。


「それに、この文字は――なんらかの術式が施されているな。だれにやられた?」


「し、知りません。起きたら……こうなってました」


「現場の魔導師マグスが処置したのか? そんな報告は聞いていないが……」


 監察官はなおもぶつぶつ言いながら書類をめくる。


「まあいい。検査すればおいおいわかるだろう。おまえはしかるべき専門機関に送られることになる。それまではこの収容所で待て」


「いつ家に帰れるんですか。あ、あの、母がどうなったかわかりませんか?」


 監察官は顔をしかめた。

 彼の目によぎるのは、侮蔑と憐憫の入り交じった色だ。


「おまえの家などもうない。あの地区は全焼して、今は浄化のために封鎖されている。だいいち、おまえは儀式なしで受肉したとおぼしき貴重な個体だぞ。解放されるわけがないだろう。今後は討魔庁の研究員どもに切り刻まれたり薬漬けにされたりする一生だ」


「な――」


 リュカの口の中はからからに乾き、舌がこわばった。


「おまえを当局が引き取ることは母親の同意も得ている」


 そう言って監察官は書類の一枚を抜き取り、リュカに突きつけた。

 リュカは目を見開いて、書面の最後の署名を凝視する。


「ああ、娼婦の息子だから文字など読めんか? 息子リュカを王立防疫局に引き渡し今後一切を任せ対価として金貨十六フローリンを受け取る、だ」


 残念ながら――このときに限ってはそういうべきだろう――リュカは母親から読み書きを習っていたために文面をすべて読むことができた。『ミゼル』という母親の署名も、記憶にある筆跡だった。


(母は……ぼくを売ったのか)


 ひたひたと忍び寄ってきたのは、悲しみというより虚しさだった。


(当たり前か。うちは父親もいなくて、貧乏で、ぼく一人を育てるのも苦しそうだった。そのうえ悪魔に寄生されて、こんな気持ちの悪い腕になって)


(お金までもらえるなら、引き渡すにきまっている……)


 もげた右腕の欠損部を代替したという、その悪魔をリュカは激しく恨んだ。

 放っておいてくれればよかったのに。

 血が流れ出るままにしておいてくれれば、炎の中で死ねたのに。

 リュカがうなだれていると、不意に扉の開く音がした。


「尋問中だぞ」


 監察官が険しい声で言う。

 入ってきたのは年若い連絡兵だった。


「失礼いたします。申し訳ありません、しかし」


 連絡兵が耳打ちすると、監察官は眉をひそめた。


「馬鹿な。どこのだれが、一体どういう権限があって――」


 監察官の言葉を遮るように、連絡兵は手にしていた小さな巻紙を広げて見せた。途端、監察官の表情が一変し、両目が大きく見開かれる。

 丸椅子を蹴倒すほどの勢いで監察官は立ち上がった。


「幸運だったな。おまえの移送先が変更になった」


 リュカをにらんで言う。


「王立魔導学院だ」


       * * *


 王都から北西に馬で半日ほど、ニッデイルの山裾に広がる広大な森林の中に、堅牢な石壁で囲まれた城塞がある。

 森林の外からでも見えるほどに高い尖塔群、敷地内に広がる豊かな耕作地、美しい黒煉瓦造りの棟の並び、白亜の礼拝堂……。広さの点でも、備えの点でも、ひとつの町といって差し支えなかったが、しかしこれは学校なのである。


 王立魔導学院、第一校。


 胸壁には、王家の紋章である双頭の紅竜を刺繍された五角旗が誇らしげにずらりと並べて掲げられ、早朝の陽を浴びて輝かしく燃え立っている。


 到着してすぐにリュカは、城門を入って真正面にある大きな棟に連れていかれた。

 外装から想像した以上に豪華で格調高い内装で、玄関広間には大きなシャンデリアが吊られ、深紅の絨毯が足下に敷き詰められ、優美な曲線を描く円弧階段が両翼の壁をなぞって二階に向かっていた。これを見ただけでリュカは自分の場違いさに縮こまってしまうが、護送兵は容赦なくリュカの背中をぐいと押して階段に向かわせた。

 どうやら執務棟であるらしく、廊下に並ぶ扉には《事務員室》《耕作統括室》《書記官室》といった札が貼り付けられている。


 学院長室は三階にあった。


 正方形の広い部屋で、左右の壁を高い書架が埋め、中央の大机には王国全土の地図とおぼしきものが描かれている。正面奥にはどっしりとした執務机が居を構え、部屋の隅には天球儀や複雑な造りの柱時計が置かれていた。


 学院長は、グリシラと名乗る女性だった。

 年齢不詳の、人間味がないほど整った顔立ちの女性で、左の目尻のあたりに斜めに刻まれた三筋の古傷が剣呑さを際立たせている。着ているのも黒一色の軍服だ。とても学業に関わる人間には見えない。監獄の看守だといわれた方がまだしも納得できる。


「男子なのですか? ほんとうに?」


 グリシラは疑わしげに言ってリュカの身体のあちこちに顔を近づけて観察した。

 たしかにリュカは幼い頃からよく女に間違われた。母親の娼婦仲間から「おまえはミゼルに似て綺麗だから人気が出るよ」とそそのかされ、実際に客を取り、好評だったものだ。

 しかしまさかいきなり股ぐらをつかまれるとは思っていなかった。声にならない声をあげて腰を引くが、グリシラの握力はすさまじく、逃げられなかった。


「……たしかに男子のようですね」


 グリシラはそう言ってリュカから離れた。


「リュカ。あなたは王立魔導学院についてどのくらい知っていますか」


 訊かれてリュカはしばらく答えに窮した。


「……魔導師マグスになる訓練をするところですよね。悪魔を倒すための。貴族の子供じゃないと入れない、とか……」


 娼婦の息子であり学もないリュカには、生涯縁のない場所であるはずだった。

 自分の右手には悪魔が寄生しているのだという。

 だからおそらく、研究素材として連れてこられたのだろう。あるいは生徒たちの実技訓練のための《練習用悪魔》として、かもしれない。どのみち、待っているのはろくな生活ではなさそうだ。リュカは暗い気持ちになってうつむく。


「国土を脅かす悪魔たちに対抗するための魔導師マグスを育成する機関、というのはその通りです」


 グリシラは淡々と言う。


「しかし貴族の子女しか入学できないわけではありません。単にそういう例が多い、というだけです。悪魔はなんの前兆もなく、どんな場所にでも突然現れます。現在、その出現を予測あるいは予防する手段はありません。王国全土に遍く魔導師マグスを配備しておくしかないのです。人員はいくらあっても足りない。身分などで入学を制限していては有望な候補者を逃してしまう」


 グリシラの視線は部屋の中央、王国全図を描いた大机に向けられる。


「現実としては、たしかに当学院の生徒の大部分を貴族の子女が占めます。魔導師マグスには爵位と同等以上の名誉があるとされ、貴族の子女のうち家督を継げない者たちがこの名誉を目当てに入学してくるわけです。けれど」


 グリシラは言葉を切り、執務机の背後を振り返った。

 双頭の紅竜の王国旗と並べて掲げられたもう一枚の旗は、剣を踏みつける梟の図案だ。

 智慧と学識の象徴。


「実際に魔導師マグスになれるのは、生徒のうち二十人に一人もいません。大いなる力には大いなる責任が伴う。その義務は貴族であろうが平民であろうが変わらない。リュカ、あなたもここでそれを学びなさい」


「……え……?」


 リュカは顔を上げた。


(学ぶ? ぼくが?)


(この人は一体なにを言ってるんだ?)


「……ぼくは……研究用の材料じゃないんですか」


 グリシラはかすかに眉をひそめた。


「防疫局の者から聞いていなかったのですか。あなたは今日からこの第一校の生徒です」


「な――」


 リュカが言葉を失って立ち尽くしていると、背後で扉を叩く音がした。

 入り口そばに控えていた法衣姿の女性秘書官が、扉を開く。


「学院長、失礼します。ソニア、参りました」


 鈴を転がしたような涼しげな声がした。

 振り向いたリュカは目を見開いて固まってしまう。

 開かれた扉のすぐ外に立っていたのは、燃え立つあかがねの髪の少女だった。柘榴色の唇に星空を湛えた大きな瞳、自分のような人間が正視してはいけないのではないかと恥じ入るほどに気高い麗しさ。

 リュカと目が合うと、彼女の眉がきゅうっと歪んでひそめられる。リュカはあわてて目をそらした。


「ソニア。なぜ私服なのです」


 グリシラは眉を寄せた。ソニアと呼ばれたその少女は、白い薄衣の上に毛織りのガウンをはおった格好だった。


「こんな早朝に至急の呼び出しを受けたんです。着替えているひまなどありませんでした」


 ソニアはむっとした顔で答えた。


「まあいいでしょう」

 学院長は素っ気なくうなずく。

「この者、例の受肉者です」


 リュカを目で示す。


「ああ、例の」とソニアもうなずいた。「話は聞いています」


「当学院に収容されることになりました。寮生として扱います。ソニア、あなたと同室にしますから部屋まで案内するように」


「なっ?」


 ソニアは目を剥いて声をあげた。リュカも同じく声をあげかけた。


「同室? わたしと? なぜですか!」


「あなたは王族の特権を振り回して二人部屋を一人で使っているでしょう。本来の使い方に戻すだけです」


「でも……っ、空き部屋はいくらでもあるはずでしょう!」


「常時あなたがそばについていることが必要なのです。あなたは当学院でただ一人の第六層魔導師マグス、最高戦力なのですから」


 学院長はリュカに歩み寄ってくると、袖をまくり、巻いてあった包帯をほどいて右手を露出させた。リュカは思わず目をそらす。赤黒い皮膚に刻まれた不気味な文字列は、まるで這いずるヤスデのようだ。


「……これは……」


 ソニアは顔をしかめる。


「なにか封じている――のですか」


 学院長はうなずく。


「防疫局の分析では、封鎖術式だろうとのことです。このリュカという者、受肉していながら力を扱う訓練を受けていません。今のところ体内の悪魔が沈静化しているのはこの術式のおかげでしょう。なにをきっかけに活性化してもおかしくない不安定な状態です。ソニア、あなたについていてもらいたいというのは、つまり」


 突然、リュカの右腕は強くねじり上げられた。学院長の指が手首に食い込み、ぎりぎりと痛む。リュカは「ぅくぁっ」と悶えた。学院長は変わらず冷徹な口調で続ける。


「暴走したときにはあなたが殺処分せよ、ということです」


 リュカの背中が凍った。


       * * *


 ソニアに連れられて執務棟を出た。出がけに、事務局で制服を受け取る。


「まず部屋に戻って着替えましょう」とソニアは言う。「わたしも私服だし、あなたもそれ、収容所の囚人服でしょう?」


「あ、は、はい。……あの、ほんとに同室なんですか」


「しかたないでしょう。学院側の決定なのだから」


(いいの? 男と女なのに?)


 それに、学院長室では色々とありすぎて確認する余裕もなかったけれど、たしか王族がどうのこうのと言っていなかっただろうか。

 王族……?

 貴族の子女が多く入学している王立魔導学院であれば、王族の一人や二人いてもおかしくはないが……。


(聞き間違いだってことにしよう。そうしよう)


 王族の一員と同じ部屋で暮らすなど、想像しただけでぞっとする。なにか粗相でもしたら首を刎ねられるかもしれない。


(男女同室をあまり気にしていないということは、ひょっとすると同室といっても寝室はしっかり二部屋に分かれている、とかかもしれない)


(これだけ豪勢な学院の寮ならそれもあり得る)


(うん、きっとそうだ)


 リュカは想像を巡らせ、なんとか安心しようとする。

 寮へと続く遊歩道の途中でソニアが言った。


「そういえば名前を聞いていなかったわね」


「あ、……リュカ、です」


「リュカ? ふうん。変わった名前ね」


 そんなに変わった名前だろうか。どちらかといえばありふれた名前ではないだろうか。

 後から思えば、このときにもう少し深く考えておくべきだったのだ。ソニアが「変わった名前だ」と感じた、その理由を。


「リュカは何歳?」


「十五です」


「それならわたしと同い年じゃない。その堅苦しい言葉遣いはおやめなさいな、ここではどちらも同じいち生徒よ。これから寝起きを共にするのだし、そんな喋り方を通していたらこちらも気疲れするわ。わたしのことはソニアでいいわよ」


「あ、うん……わかりまし――わかった、ソニア」


 敬語をやめるとある面では気が楽になったが、べつの緊張ももたらした。思えばリュカには同年代の人間と親しくしていた経験が皆無なのだ。知り合いといえば、同じ共同住宅に住む娼婦仲間や、堅気ではない職業の男たちだった。


(ぼくが……学校で、寮生活なんて……できるだろうか)


 寮が近づいてくると何人かの制服姿の生徒たちとすれちがうようになり、リュカの心配は次第に実体化してきた。だれもがソニアにはにこやかに会釈するが、その後でリュカを見て顔を曇らせる。ひそめた会話も聞こえてくる。


「ほら、あの」

「ああ、事故で受肉したっていう」

「ほんとに入学したのか」

「どうしてソニアさまと」


(生徒たちもみんなぼくのことを話に聞いているのか……)


 リュカは首をすくめて息を詰め、ソニアの陰に隠れるようにして歩いた。


 ソニアの部屋は女子寮第一棟の三階、いちばん奥にあった。

 先ほどのリュカの淡い期待はあっさりと裏切られた。かなり広くはあるが、ひとつながりの部屋だ。両手の壁に寝台と大きめの衣装箱がそれぞれ押しつけて置いてあり、間仕切りさえもない。まったく言葉通りの意味で同室である。


(こ、これは……だめでは?)


 部屋の入り口で硬直するリュカを尻目にソニアは右側のベッドに向かう。


「そちらをあなたが使いなさい。私物はないの? なにか足りないものがあったら言って」

 そう言いながらソニアは衣装箱から自分の制服を取り出し、着ている白の薄衣を脱ぎ始めた。リュカは「わあああああっ」と声を上げて後ろを向いた。

 しかし、一瞬目に入ってしまった。

 ソニアの、ほっそりとしていてすべらかな裸身――。


「なにをしているの、リュカ。着替えないの?」


 あきれた声が飛んでくる。


「い、いやっ、そのっ」


 うまく舌が回らない。頭がかっかと熱くなってくる。


「着替えないなら先にわたしの着替えを手伝いなさい」


 足音が近づいてきた。

 ソニアが回り込んでリュカの目の前に現れる。上下ひとつなぎの制服の上半身はまだ袖に手も通しておらず肩も乳房もむき出しで、リュカは卒倒しそうになった。


「うちの制服は造りが変に凝っているからひとりだと背中の留め金が留めづらいのよ。これだけは二人部屋になる利点かもしれないわね。ああわかった、あなたも着方がよくわからなくて戸惑っていたのでしょう? わたしの着替えが終わったら手伝ってあげるから、ほら、早くしなさい」


 せっつかれ、リュカはしかたなく顔を精一杯そむけながらもソニアの制服の背中の留め金をひとつずつ留めていく。まったく見ずに作業するのは無理なので、ちらちらと手元を確認するのだが、そのたびにまばゆいほどなめらかな背中の肌が目に入り、さらには指先で何度も触れてしまい、耳から湯気が出そうになる。


(夜の仕事で男にどこを触られても平気だったのに……)


(女の子なんて触るどころか言葉を交わしたこともなかったから……)


 必死の思いで、六つも並んだ留め金をなんとかすべて留め終える。


「ありがとう。じゃあリュカ、次はあなたの着替えよ。早くしないと朝礼に遅れてしまうわ」


 リュカの足下に落ちていた制服を拾い上げたソニアは、首をかしげる。


「あら? ……これ、男子の制服じゃない。事務員が間違えたのね」


 もはや限界だった。これ以上はぐらかし続けられない。


「……いや、間違いじゃないんだ……」


「え?」


「ぼく、男だから」


 空気そのものが凍ってしまったかのような不吉な間があった。

 ソニアの大きく見開かれた目が、リュカの顔から胸のあたり、さらには腰の近辺まで向けられ、また顔に戻ってくる。

 熱湯に放り込んだ海老のようにソニアの顔はみるみる真っ赤になる。

 やがて彼女は一言も発しないまま部屋を走り出ていった。足音がすさまじい勢いで廊下を遠ざかり、階段を転げ落ちていくのが扉越しに聞こえる。


 リュカは両手を顔で覆ってうずくまり、深く深く息をついた。

 変わった名前だと言われた時点で違和感の正体をたしかめ、先んじて誤解を解いておくべきだったのだ。あれは――女にしては変わった名前だ、という意味だったにちがいない。


(怒らせた。どうしよう……)


       * * *


 どれだけ待っていてもソニアは部屋に戻ってこなかった。

 やがて、重たく眠たげな鐘の音が聞こえてくる。窓から外をうかがうと、どうやら礼拝堂の方からだ。

 朝礼に遅れる、とソニアは言っていなかったか。


(あれは――朝礼が終わってしまったという意味じゃないか?)


(ぼくも出席しないとまずかったんじゃ……)


 さんざん迷ったが、リュカは外に出てみることにした。

 囚人服を脱ぎ捨て、手早く制服に着替える。さいわい、男子の制服は普通の造りで、簡単に着ることができた。

 寮にはまったく人気がなかった。建物の外も、歩いている生徒の姿は見当たらない。やはり全員が朝礼に参列しているのだろう。


(とにかくソニアを捜そう。礼拝堂にいるのかな)


 ところが、三階の窓からは見渡せた学院の敷地も、外に出てしまうと建物や木立が視界を遮り、どちらに礼拝堂があるのかさっぱりわからなかった。しかもあきらめて寮に戻ろうとしても今度は帰り道がわからない。


(迷った……どれだけ広いんだ、この学校は)


 遊歩道の脇の草地にうずくまる。

 途方に暮れていると、何人かの足音が近づいてくるのが聞こえた。


「……あれ」

「ああ」

「さっきの」


 声も聞こえてきたのでリュカは顔を上げた。

 五人の男子生徒が連れ立って遊歩道をこちらに歩いてくるところだった。歳はリュカと同じか一つ二つ上くらいだろうか。みな体格と姿勢が良く、歩き方に自信が満ちあふれていた。とくに真ん中の、金髪で目元の涼しげな男は、明らかに他の四人よりも抜きん出て秀麗で、立ち居振る舞いも人の上に自然と立つ者の風格を漂わせていた。


「おはよう」とその金髪の男子生徒が話しかけてくる。「今日編入してきたリュカ君、だったよな?」


 リュカは戸惑いながらもうなずく。


「俺はロベリット・フォンゾだ。よろしく」


 手を差し出されたので、あわてて立ち上がって握手に応じる。


(親切そうな人だ。よかった)


「第一男子寮の寮長をやっていてね、新入生について前もって少し教えてもらえるんだ。だから君のことも知っていた。うちの寮に入るはずだったが……」


 ロベリットはリュカの顔をしげしげと見つめる。


「……男、なんだよな?」


「……は、はい。なぜか学院長が、ソニアと同室になるようにって言って……」


「ふうん」


 ロベリットの視線が意味ありげにリュカの右手に注がれる。


「君の同室生が何者か、知っているか?」


「……? いえ……」


「アランシス四世陛下のご息女、第二王女だ」


 リュカは息を呑む。王族、というのは聞き間違いではなかったのだ。


「だから――」


 いきなりロベリットの手がリュカの襟首をつかみ、そのまま地面に突き倒した。背中が草地に叩きつけられ、視界に星が散る。とっさになにが起きたのか理解できず、痛みが意識にまで届くのにだいぶかかった。


「――おまえみたいな汚物が軽々しく名前を呼んでいい相手じゃないんだ。わかるか?」


 ロベリットが憎悪に満ちた声をリュカの顔に吐きかける。ほんの少し前まで漂わせていた清涼感は完全に消え失せ、凶暴な獣性がのぞいていた。

 取り巻きの男子生徒たちが少し離れた場所から言う。


「ついでを言えば、ロベリットも侯爵家の三男だ。おまえなんぞは便所の虫みたいに踏み潰されても文句言えないんだよ」


「この学院は売女の息子が来ていい場所じゃないぞ」


 言葉がリュカの胸に突き刺さる。

 痛みはない。わかっていたことだ。


(ぼくが――来ていい場所じゃない)


(そうか。そうだろうな。わかっていたよ、そんなことは)


 リュカの意識を、熱のない絶望がひたひたと侵しつつあった。


「女みたいな面しやがって、どうせおまえも母親と同じで客をくわえ込んでたんだろ?」


 野卑な笑い声が起きる。

 その通りだ――と正直に答えたらどんな顔をされるだろう。虚しい無力感の中でリュカはそんなことを考える。金さえもらえればあんたらにもやってあげるよ、と言ったらこいつらはどういう反応をするだろうか? 自虐的な想像の中にリュカはずぶずぶ沈んでいく。


「こいつは密儀アルカナなしで受肉しているんだそうだ。ほら、見せてみろ」


 ロベリットがリュカの右肩を強く踏みつけて拘束し、制服の袖をまくり、包帯を引きむしって右手をさらさせた。


「おい、なんだこれ」


 見下ろす男子生徒たちの薄笑いが引きつる。


「血混じりの糞みたいな色だな」

「おかしいだろ、普通は受肉した部分は完全に再生するはずだ」

「失敗してるんだ、こいつの受肉は」

密儀アルカナなしだからな。なんて醜い皮膚だ」

「虫唾が走る」


 浴びせられるこの悪意は一体なんなのだろう、とリュカはぼんやり考える。

 それから、さきほどの男子生徒の言葉は比喩ではなかったのだと思い至る。便所の虫。人間は虫を見るとたとえ害をなされたわけではなくとも激しい嫌悪感をおぼえ、踏み潰す。

 同じだ。

 貴族たちにとって、淫売の子は虫けらなのだ。


「なんという名の悪魔だ? 力を見せてみろ」


 ロベリットが歯を剥いて言い、リュカの喉を靴の裏で踏みしだく。呼吸が苦しくなるけれど、虚脱感の中にいたリュカは抵抗もしなかった。


密儀アルカナもなしで勝手に受肉したということは、おまえにふさわしい虫みたいな下等悪魔だろう。そら、出してみろ!」


 喉を踏む爪先に力が込められた。

 そのとき、視界が赤く染まった。

 リュカの全身が急激に熱くなる。呼吸ができなくなり、毛穴という毛穴からなにかが噴き出すのを感じる。

 耳の奥でめりめりとなにかが剥離していく、おぞましくも甘美な手応え。

 視界の端で、草が黒く萎れ、ねじくれ、塵になっていくのが見える。


「う――」

「こいつッ」


 男子生徒たちは異変を感じて跳び退き、リュカから離れた。ただひとりロベリットだけが離れず、傲岸そうな笑みを浮かべてリュカを見下ろしている。


「魔力を出したな? おい、おまえらも確認したなッ、査問会でちゃんと証言しろよ? これで使用事由を満たしたぞ、堂々とおまえを捻り潰せる、この蛆虫めがッ」


 ロベリットの声がとげとげしく高まる。


「俺はおまえとちがう、正当な訓練を積んだ第三層魔導師マグスだ!」


 彼の左手が赤熱した。それを見てリュカは総毛立った。


(この男も――受肉しているのか!)


「応えろッ! ビュレッスス!」


 それが悪魔の名だと、リュカは直観で解した。

 不意に、リュカの小柄な身体が地面から引き剥がされて宙に浮いた。すさまじい激痛と息苦しさが同時にやってきた。見えないなにかが首と四肢にきつく巻きついて食い込んでいるような感覚だ。

 空間そのものが歪んでいるのだ、と全身を苛む痛みの中でリュカは気づく。


「自分は蛆虫です、と認めて、這いずり回る真似をするんなら、関節を外すくらいで赦してやるよ。どうだ?」


 嗜虐をもはや隠そうともしないロベリットは、左手をさらに高く持ち上げ、拳を強く固めた。リュカの背骨と肋骨が軋み、声にならない声が喉から絞り出される。


「さっさと決めろ。それとも意地を張って骨を砕かれるか?」


(蛆虫だと――認める?)


 遠ざかりつつある意識の中でリュカはロベリットの言葉を反芻する。


(それで済むならいいよ。いくらでも認めてやるよ)


(だって、その通りだ。ほんとうのことだから)


 激痛にうめきながら、口を開こうとしたそのとき――

 圧迫感は唐突に消え失せた。

 リュカは地面に投げ出され、突っ伏して枯れ草を噛んだ。

 なにが起きたのか理解できていないリュカの耳に、恐怖でねじくれた声が流れ込んでくる。


「……あ、あぁあああ」

「や、やめ、やめろ」

「なんだ、おいこれなんだやめろやめろぉォッ」


 男たちの声を侵蝕するように、なにかが爆ぜる音が断続的に重なる。


 頬を刺すような熱。


 リュカは腕を突っ張ってなんとか身を起こし、顔を上げた。


 目に映るすべてを炎が埋め尽くしていた。黒く焦げて焼けただれた地面から噴き上がる幾筋もの火が渦を巻き、五人の人影を呑み込んでなお勢いを増しながら膨れ上がりつつあった。数千、数万の羽虫の群れが炎の中で舞っているのが見えた。


「やめろ、消せ、お、ォオッ」

「おい殺す気か、おまえッ」


 悲痛な声を吐き散らし逃げようとする男たちの腕にも足にも羽虫がまとわりつき、衣を炎の舌先で食い破り、皮膚を熱い鈎口で引きむしろうとしている。


(なんだこれは)


(なにが――起きてるんだ)


 混乱しきったリュカの頭の片隅で、不気味なほど冷静な一部分が、せせら笑いながらリュカ自身に言い返す。

 なにが起きているか、だって?

 わかりきっている。なぜって、この炎と羽虫の群れは、記憶にある。

 街を焼き、この右手を食いちぎった、あの悪魔の炎だ。


(ぼくの力……)


 男たちは黒焦げになった草の上を転げ回り、リュカからなんとか離れようともがいている。ただひとりロベリットだけは炎に巻かれながらも歯を食いしばって地面に爪を立て、リュカに近づこうとする。


「きさま、殺して――やる……」


 呪詛の言葉がロベリットの口から漏れ出て炎に混ざる。

 リュカの意識は真っ二つに割けてしまいそうだった。


(止まらない。止め方がわからない)


(みんな殺してしまう)


 右手を掻きむしり、力の流出が止まるようにとただ祈る。けれどその裏側で、どす黒く甘美な悦びが身体じゅうの血管を駆け巡るのを感じている。

 殺してしまえばいい。


(ちがう)


 焼き尽くしてしまえばいい。


(ちがう、やめろ!)


 踏みにじろうとしてきたやつらだ。


(やめて――)



「――散らせッ!」



 少女の叫びがリュカの意識と、あたりを取り巻く炎の渦とを断ち割った。横殴りのすさまじい烈風がリュカを地面に薙ぎ倒し、立ちこめていた熱を体表から残らず刮ぎ取っていく。

 きい、きい、という甲高い鳴き声は、羽虫たちが炎を失って気化していく音だ。


 灰のにおいが鼻腔を刺す。

 脂がぽたぽたと頬を濡らす。

 リュカは歯を食いしばり、力の入らない身体を無理に地面から剥がし、首を巡らせた。


 敷石の遊歩道をゆっくり歩み寄ってくる人影が見えた。

 あかがねの髪が、きなくさい風になぶられている。


 ソニアの身体のまわりには、ほとんど透明の、薄く細長い葉のような――あるいは刃のようなものが何十枚も、ゆらめきながら環をつくって回っている。それらはやがてすぼみ、収束し、ソニアの右手に吸い込まれて消えた。

 ソニアのさらに背後から数人の女子生徒たちが駆けてくる。


「リュカ以外は救護室に。まだ炎が実体化していなかったからほとんどは心因性のはずよ、急いで催眠処置を」


 ソニアが手早く指示した。


「はい!」と女子生徒たち。


 男子生徒たちは女子生徒の担架で校舎の方へと運ばれていく。ロベリットは担架の上で暴れて乱暴な言葉を撒き散らしていた。


「くそ、下ろせ、俺があんな屑に負けるわけが、……おい貴様、なんだそれはッなんなんだその力はッ! 下級悪魔じゃなかったのか! おまえに、おまえみたいな下民にそんな力があるわけが――」


 声は遠ざかり、やがて聞こえなくなる。

 風が強まりつつあった。

 異形の力によるものではない、涼しげで気まぐれな自然の風だ。

 ソニアはリュカのそばにかがみ込み、右手を取り上げて確認すると、懐中から新しい包帯を取り出して巻き付けた。


「あなたの怪我は……大したことがないみたいね。治療はわたしたちの部屋でしましょう。まだ漏出が起きるかもしれない」


 リュカはソニアの顔をじっと見つめて言った。


「……殺処分じゃなかったの?」


 見つめ返してくるソニアの目には冷ややかな怒りが湛えられている。


「暴走前に止まったでしょう。それに、あなたをひとりにしたわたしの責任でもある」


「……こんな力があるなんて知らなかった。どうすると出てくるのかも、止め方も、なんにもわからない。たぶんまた同じことをする」


 ソニアは息をつく。


「ロベリット・フォンゾは平民出身の新入生には必ず目をつけて嫌がらせをするのよ。あなたもされたんでしょう? 負の感情をため込むと、受肉した悪魔は不安定になるわ。正当に言い返せばいいのよ。場合によってはしかるべき場所に訴え出なさい」


「正当……って、なんだよ」


 リュカは吐き捨てた。

 喉の奥で、黒いなにかがまた熱を帯びてのたくっていた。なるほど、ソニアの言ったとおりだ。負の感情をため込むと不安定になる……。


「なにを言い返せっていうんだ。ぼくは淫売の子供だし、あいつらの言う通り、こんな上等な学校に入る資格なんてない」


「資格があると認められたから入ったのよ、なにを言っているの?」


 ソニアは憤然と言う。


「生まれなんて関係ない。もっと自分に誇りを持ちなさい!」


「誇りってなんだ? 食えるのか?」


 どす黒いものが胃からあふれて言葉になって出てくる。


「あんた王族だろ。あいつらは貴族だ。食うに困ることなんてなかったんだろ。その日の飯代もなくて身体売らなきゃいけない生活なんて想像したこともないだろ。だから誇りがどうこうなんて言えるんだ」


 残らず吐き出してしまった後で、リュカははっとして口をつぐんだ。


(こんなこと――ソニアに言ってどうするんだ)


(止めてくれたのに。助けてくれたのに……)


 そっとソニアの顔をうかがう。唇を噛みしめ、哀しそうな目で、それでもまだこちらを見つめている。リュカはうなだれてつぶやいた。


「……ごめん」


 顔を伏せたまま走り出した。


       * * *


 学園の敷地内をさんざん迷ったあげく、第一女子寮に戻ってきた。

 自分の――つまりはソニアの――部屋に戻り、毛布をかぶった。

 自己嫌悪に圧し潰されそうだった。


(もうとにかく眠ろう)


(全部忘れるくらい眠り続けよう)


 けれど目を閉じるとまぶたの裏で炎の羽虫が蠢くような錯覚をおぼえ、眠りはまったくやってこなかった。


 窓の外が暗くなった頃、扉が開く音がした。

 毛布の隙間からそっとうかがうと、ソニアが右手にランプを、左手になにか平たいものを持って入ってくるところだった。

 リュカの寝台のそばまでやってきたソニアは、リュカの机に両手のものを置くと、毛布を強引に剥がした。


「わっ」


 驚いたリュカは転がって壁際に逃げ、おそるおそる身を起こした。

 部屋の暗さとランプの角度のせいで、ソニアの表情はよく見えない。


「……ごめんなさい」


 寝台の上にうずくまって頭を下げる。

 ソニアはぼそぼそした声で答えた。


「あなたが謝ることはないわ。食べなさい」


 見れば、ランプの隣に置いてあるのはパンと塩漬け肉と果物を載せた大きな盆だ。


「……あ、……ありがとう」


 そういえば昨夜、王都の収容所で護送車に乗せられてから、今までまったくなにも口にしていなかった。食欲がなくて全然気づかなかった。


 ソニアは寝台のそばの簡素な椅子に腰を下ろした。

 顔がランプの明かりの中に入ってくる。

 心細そうな表情。


「……たしかにわたしが悪かった」


 ぽつりとソニアは言う。


「あなたの立場をまったく考えず、傲慢だったわ。誇りを持ちなさい、だなんて」


「いや、その……」


 素直に謝られてしまうとこちらが恐縮する。

 ところがソニアは急に身を寄せてきて語調を強める。


「だから言い直すわ。わたしがあなたを誇り高い人間に育て直す」


 リュカは唖然とする。


「……は?」


「あなたはもう生活の心配をしなくてもいいのよ。衣食住すべて学院側で用意する。だから学院の一員として、さらには魔導師マグスとしての誇りを持ってもらう。あなたが自分から誇りを持ちたくて持ちたくてしかたなくなるように、わたしが全力を傾けて色々と一から教え込むから」


「……ど、どうして……あの、ぼくなんか、王女様にそこまでしてもらう理由が」


「王女だからよ!」


 ソニアは一段と声を高くした。

 その頬が、なぜか赤く染まっている。

 ランプの明かりのせい――ではない。たしかに紅潮している。


「あ、あなたは、……わたしの肌を、み、見たでしょうっ」


「えっ? ……あ、うん、あの、あれは、ごめんなさい、言い出すきっかけがなくて」


「王族の女が男性に肌を見られる――というのがどういう意味かわかっていないのっ?」


 もちろんリュカはわかっていない。ソニアの剣幕に困惑するばかりだ。ソニアは寝台の上にまで乗り込んできてリュカににじり寄り、胸に指を突きつけてくる。


「お父さまに言われたわ、男性に肌を見られたら責任をとらせろって」


「……え、えええ?」


「誇り高くない男を夫候補にするわけにはいかないのよ!」


 今やソニアは耳まで真っ赤になっていた。リュカは茫然とする他なかった。

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