8 対面、そして復讐の時へ

SIDE ライオット


「侵入者だと!?」


 ライオットは眉をひそめた。


「警備兵たちで追い払え」

「そ、それが……全員、近づく前に倒されてしまうのです。あるいは呪術のたぐいかもしれません!」


 警備隊長が青ざめた顔で報告する。


「……ふむ」


 ライオットの表情が引き締まった。


 最近は自堕落な生活を続けているとはいえ、腐っても勇者パーティの一員である。

 すでに現役のときと同じ精悍な『戦士ライオット』の顔に戻っていた。


「俺が様子を見てくるか。お前たち、ついてこい」


 壁に立てかけてあった大剣を手にすると、ライオットは部屋を出た。


 久しぶりに骨のある相手が現れたのだろうか。

 見せしめの意味も兼ね、ライオットが直々に処刑するのもいいかもしれない──。




「な、なんだ、あれは──!?」


 現場に到着すると、ライオットは呆然とつぶやいた。


 百を超える警備兵が男女二人組を取り囲んでいる。

 まだ100メートルほどの距離があり、顔立ちははっきり見えないが、おそらく若い男女だろう。


 男が無造作に歩みを進め、女がそれに付き従う。

 そして──近づいた兵士は次々に血を吐いて倒れていく。


 報告通り、呪術のようだ。

 近づくだけで死ぬとは、尋常な呪殺力ではない。


「だが、この俺には通じんぞ」


 ライオットは胸元にかけたペンダントを握りしめた。


封魔の紋章バリアクレスト』。

 毒や麻痺など、あらゆる『状態異常』を無効化する宝具だ。


 さらに物理や魔法防御力も兼ね備えており、累積で30000ダメージを受けるまで装備者を守り続ける。

 勇者パーティにいたとき、魔王戦の前に入手したものだった。


 呪いにも有効で、どれほど高レベルのものであろうと──たとえ魔王クラスの呪術であろうと、これを跳ね返す効力がある。

 効果範囲は20メートルである。


「お前がどんな呪術を使っているかは知らんが、俺には無効だ」


 ライオットが進み出た。


 呪術を封じれば、後は剣での勝負。

 あんな細身の男など、超一流の戦士である自分の敵ではない。


「ぶった斬ってやる……いや、手足を切り落としたうえでギリギリ生かし、あいつの目の前で女を犯してやるのも一興か」


 欲望をむき出しにうなる。

 想像しただけで下半身が熱くなった。


「どけ、お前たち。そいつは俺が殺す!」


 兵士たちに命令し、ライオットは前に出た。

 でっぷり太った腹のせいで多少動きは鈍いが、往年のパワーは健在だ。


「もう逃げられんぞ、侵入者。このライオット公爵領を侵した罪──たっぷりと後悔するがいい」


 言って、男の側にいる少女の存在に気付く。


「お、そっちはシアか! この俺の誘いを拒否した生意気な女め! そいつの前でたっぷり犯し抜いてやるからな!」

「ライオット……! 姉の仇……!」


 シアが青ざめた顔になりつつ、こちらをにらんでくる。

 恨みたっぷりの表情だ。


 何しろ彼女の最愛の姉は、ライオットがさんざん痛めつけ、たっぷり犯したうえに、部下たちの慰み者にして、あらゆる恥辱を与えて殺したのだから。


「さぞや憎いだろうな、俺が」


 そんな女を屈服させるのだと思うと、たまらない愉悦がこみ上げた。

 ライオットの中で欲情が最高潮になった瞬間、




『警告します』

『9999ダメージを受けました』

『残り20001ダメージを受けると、この紋章は破壊されます』




 紋章に警告メッセージが浮かんだ。


「な、何……!?」


 どこからか攻撃を受けたのだろうか。

 男にもシアにもそんな素振りはなかったが。

 いや、何よりも──、


「ありえん、一瞬で9999ダメージなどと……!?」


 呆然と立ち尽くすライオット。




『警告します』

『9999ダメージを受けました』

『残り10002ダメージを受けると、この紋章は破壊されます』




 さらに数秒して、ふたたび警告メッセージが出た。


「なんだ……何が起こっている……!?」


 ライオットの混乱が強くなる。

 その混乱はすぐに恐怖へと変わる。


 理屈ではなく、本能で察した。


 こいつだ。


 目の前の男が、得体の知れない力でダメージを送りこんでいる。


「何者だ、お前は……!」


 ライオットはうめいた。


「誰なんだ……お前は!」


    ※


 ようやくこの日が訪れた。


「待ったぞ、お前と再会する日を……ライオット」


 十数メートルの距離を置き、俺は目の前の男を静かに見据える。

 フードを上げ、目元を覆う仮面を外す。


「お前……?」


 ライオットが目を瞬かせた。


 俺が誰なのか分からないようだった。

 確かに、二年前とは容姿が変わってしまったからな。


 黒髪は一本残らず銀色に。

 四肢はやせ細り、身にまとう雰囲気も一変したことだろう。


 何よりも──瞳が。


 自分でも分かる。

 殺意と復讐心で、俺の双眸は濁り切っている。


 ぱきん、と奴の持っている護符にひびが入った。


「まさか……クロム……!?」


 ライオットが呆然とした顔でうめいた。

 ようやく、俺が誰なのかを理解したらしい。


「かつての仲間を忘れたのかと思ったが……覚えていてくれて嬉しいよ、ライオット」


 俺は淡々と告げた。


 思ったほどの激情は湧いてこない。

 自分でも不思議だった。


 俺の復讐心はあまりにもたぎりすぎて枯れ果ててしまったのか?

 一瞬、そう疑うほどだ。


 だが、次の瞬間──、


「ライオットォォォォォォォォォォッ!」


 俺は叫んでいた。


 二年前に裏切られたときの苦しみ、怒り、痛み、絶望──。

 それらを濃縮した叫びだった。


 やはり枯れてなどいない。

 ただあまりにも復讐の念が大きすぎて、出てくるのにタイムラグがあったのだろう。


「ひ、ひいっ……」


 俺の気迫に押されたのか、ライオットがへたりこむ。


 同時に、奴の持っている護符が粉々に砕け散った。




※ ※ ※ ※ ※

ほ……、ほし……くださ……(´・ω・`).;:…(´・ω...:.;::..(´・;::: .:.;: サラサラ..


☆☆☆→★★★ になるとライフが復活するよ! するよ!



新作始めました。

よろしければ、こちらもどうぞ~!


女神から13個の神器をもらった俺は、チートな【殺傷能力】【身体能力】【感知能力】を身に着けた。この力で、世界中から悪を駆逐する。

https://kakuyomu.jp/works/1177354054918478473

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