第27話 契約
「……なるほど、主人が亡くなった奴隷を保護して、連れてきたというわけですか?」
「はい、そうです」
「それならば、この亜人奴隷はあなたのものです」
「主人を失った奴隷は、その主人を殺して奪ったのではない限り、拾った人間のものになります。なので法的にも慣習的にも、その奴隷の主人はナツキさんになります」
冒険者ギルドにて受付嬢に依頼達成の報告とともに奴隷の扱いについて確認をしていた。
「これは奴隷の所有権があなたにあるという公的な仮証書です。奴隷商人のもとで、この首輪に血を使った契約を成せば、正式な主人と奴隷という関係になります。これによって、奴隷の逃亡を防ぎ、時には苦痛を与えるための魔法が機能するようになります。もし、仮に契約をしないままだと、逃亡奴隷とみなされ、発見された場合は処罰されますので早めの契約をお勧めします」
夏樹は礼を言って証書を受け取り、奴隷のメアとともに奴隷市場へと向かった。
「まだ仮契約なので正式な奴隷契約を済まそうと思って。手続きできる場所をご存知ありませんか?」
奴隷市場で声かけしている人物に問う。
「それでしたら、うちの商会で出来ますよ」
「では、お願いできますか?」
「奴隷は主人を害しない」「奴隷は主人の命令に従う」「奴隷は自分の身を保全する」の三原則をもとに血を首輪に垂らし、魔法を行使される。
「ーーー
メア 14歳 女 レベル10
称号:ナツキの奴隷
筋力:150
耐久:50
敏捷:150
魔力:50
耐性:50
状態:奴隷
固有スキル:???
高いな……筋力と敏捷がずば抜けている。レベル10でこれなら、レベルアップしたらかなり強くなりそうだ。しかし、成り行きとはいえ、奴隷を持つのは……。
「ナツキ君は私を捨てないよ」
夏樹の心を先読みしたかのように確信を持った発言に驚き、言葉を失う。
「ナツキ君は自分より弱い人を助けることで自尊心を保とうとする……要約すると、私を捨てることが出来ない優しすぎる人」
メアの歯に絹を着せぬ物言いに、夏樹は少しだけ苛立つ。
「何の確信があってそんな……奴隷なら奴隷らしく怯えて震えでもしてくれたら楽なのに……くそ、面倒なことをした」
「本当に弱者が好きなんだね。 侮蔑に値するよ」
「あーはいはい、もう降参、降参だ……勘弁してくれ」
「ふふふ……これからよろしくね、ナツキ君」
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
パーティを組むためにメアに冒険者登録をさせた後、メアの装備を買いに武具店に来ていた。
「メアは何の武器が使えるんだ?」
「そうだね、打撃系がいいかな、筋力には自信があるし」
店内の気配を探ると、メリケンサックを選んだ時に近い気配を感じる。
「これなんかどうだ?」
「……大槌。 こんなか弱い女の子に大槌って何考えてるの?」
「か弱い? そのステータスで良く言えたもんだな。 これぐらいなら振れるだろ?」
「ふふふ……まぁ、確かに振れるけど……。 まぁ、ご主人様のご命令とあらば? 奴隷の私は背く事が出来ないし?」
「ほんと性格悪いな……嫌味ばかり垂らしやがって。 とりあえず、これ買うからな」
店を出ると既に日が沈む時間であったため、また明日依頼を受注することにした。
「別の部屋? こんな時間じゃ空いてないよ。 その子奴隷だろう? なら、同じ部屋で寝な」
宿の女将さんにそう言われ、渋々同室で寝ることに。
「あー、か弱い乙女が獣に襲われちゃうー」
「棒読みで言うな、襲わねぇよ。 さっさと汗流して寝ろ」
メアにベッドを使わせて、夏樹は床に布を敷いて薄い毛布を被る。
「……お人好し」
ボソッと何かをメアが呟いたが聞こえず、そのまま夏樹は眠りについた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます