ハズれギフトの追放冒険者、ワケありハーレムと荷物を運んで国を取る!
寝る犬
第一章:大迷宮の探索
追放
第01話「運ぶだけの異能者」
大迷宮、第五層。
ここは過去に人類が到達することのできた最下層であり、『人の領域』の果てでもある。
この階層に挑戦できる冒険者は数えるほどしかいない。
そして俺は、その数少ないパーティの一員だった。
「このクソゴーレムっ! いい加減くたばりやがれっ!」
叫びざま、パーティリーダーの【
ゆらりと揺れるゴーレムの足元を、小柄な影が
迷宮の石壁に打ち込まれた杭から延びるロープの端が、その手には幾本も握られていた。
ピンと張ったロープがゴーレムの足を絡めとる。バランスを崩していたゴーレムは、そのまま地響きを立て、石畳へと崩れ落ちた。
【
そこでうなずき返したのは、呪文の詠唱を続けていた【
「来たれ
周囲の
その
「ベアさん、危険です。下がって」
短い言葉がかけられ、今まで俺の立っていた場所を青黒い炎の舌が這ってゆく。
見上げる俺の視線の先には、このパーティで唯一二つ名を持たない聖職者、イソニアが
ベアというのは俺の愛称のようなものだ。
本名はベゾアール・アイベックスという。このパーティに入ってからもう数ヶ月にもなるが、本名で呼ばれることはほとんどなく、このベアという愛称も、先週新しくパーティに入ったイソニアにしか呼ばれたことはなかった。
青黒い炎はゴーレムを中心にうずまき、立ち上り、第五層の石壁を焦がす。
しかしやがてその青黒い炎は、現れたときと同様唐突に消えた。
「どうだ、やったか?」
「おうとも【
アルシンの問いかけにムッシモールが無愛想に答える。
奥の通路の影から、シアンがゆっくりと立ち上がった。
「ん~ムッシモール、タイミング早い。ん~髪の先が焦げたぞ」
「はて、
「ん~……? なんだとコラ? ん~死にてぇならその汚ねぇ仮面ごと首飛ばすぞ? ん~変態ヤロウ」
カシャンと小さい音がなり、シアンの右手に短刀が握られる。
ムッシモールも魔法の込められた指輪に手を這わせ、周囲の
「殺し合いは街に戻ってからにしろ。おい【運び屋】! ドロップ品を集めておけ。それからイソニア、回復だ」
「はい、アルシン。……ベアさんは大丈夫ですか?」
「ああ、大丈夫だイソニア。怪我はない」
片手を上げてうなずくと、イソニアは
情けない。
人の頭ほどの大きさがあるゴーレムの真核は、この透明度なら金貨五百枚はくだらないだろう。それから、過去にゴーレムに敗れた冒険者の遺品もあった。骨や敗れた衣服などを取り除いて、必要なものだけ袋に詰めてゆく。一つ一つ、確実に。
俺の二つ名は【運び屋】だ。
この世界で二つ名で呼ばれるものには必ず
腐りかけた冒険者の肉を分厚い革の手袋をつけて丁寧に取り外し、袋が一杯になるまで三十分以上もかけて戦利品を仕分ける。
袋のサイズと入れた物品の総量には大きな差があった。理由はもちろん俺のギフトだ。
その力によって荷物の体積は三十分の一以下に縮んでいて、重さも同じく三十分の一程度にしか感じない。
望みとあらば、四頭引きの馬車だって俺一人で運ぶことが出来る。
そんな、ただモノを運ぶだけの異能者、【運び屋】ベゾアール・アイベックス。それが俺の名前であり、呪いのようについてまわる二つ名だった。
「ふぅアルシン、戦利品の選別できたぞ」
「ベアさんお疲れさま」
「おせぇ~んだよ!」
イソニアが笑顔で労ってくれる言葉にかぶせるように、罵声が響く。
治療を終えたアルシンたちは食事をとっていたのだろう。肉を食べきった鳥の骨が、ひゅっと俺の頭に飛んできて、コツンという乾いた音を立て、はずんだ。
「まったく異能者って言うから誘ったけどよ、ギフト無しのイソニアのほうがよっぽど有能だぜ。こんなんでもギフト持ってるからってよ、いっちょ前の分け前持ってくんだからいい神経してる。なぁ【運び屋】さんよぉ?!」
「はっは。【
「うるせぇモッシムール。俺は度量が広れぇんだよ」
「然り然り。異能者にこだわってたヌシが、癒し手としてギフト無しをつれてきたくらいだからの。ふっふ。広い、広いのう」
「ん~アルシンはイソニアの乳房と顔が目当てだからな。ん~私の体と比べれば確かにギフトみたいなもんだ。ん~どうだイソニアはいっそのこと【巨乳】イソニアとか名乗っちゃ」
「くくくっ、【
「わっ、わたしは、アルシンとはパーティの一員としてですね」
「黙れお前ら。あまりさえずってるとぶった斬んぞ」
俺のことを話していたはずなのに、結局一度も会話に混ざることのできないまま、俺達は今日の探索を終えて帰りの昇降カゴに乗り込んだ。
リーダーの身に付けている迷宮石の指輪が光り、昇降カゴはいっきに地上まで登って停止する。
これで今日の冒険は終わりだ。
後は今日の戦利品をさばいて換金し、分配をすることになる。
そのような雑用も、全て俺の仕事だった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます