黒田寛実

第1話

沖のほうから見える

うねうねと進む、波

青い優しいあなただった

今はどす黒いあなた

わたしたちの世界との境を越え

やってきてしまう

それは悲嘆

それは災害

あなたに向かって叫んだ春の日

あなたの上に浮かんだ夏の日

あなたの近くを走った秋の日

あなたの前で泣いた冬の日

どんなときでも包んでくれた波

全部忘れてやってくる

あなたはわたしに触れる

わたしを求めて飲み込む

ああそんなにあなたは強引?

わたしは海に連れ去られるの

「生命は海から生まれた」

誰かが言ってた

それじゃあわたしは還るのね

たった15で還るのね

そんなにいきなり来なくても

わたしはいつでもあなたの傍に

…いるのに



  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

黒田寛実 @otoronenayu

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ