とりあえず

伊勢燈雅

第1話生誕

 とりあえず、俺の気持ちをぶつけようと思う。

 とりあえず、今のところの俺の人生を一言で表すと、

「最悪」以外なにもあてはまらないと思う。他の人から見たらいい方じゃないかと思う人もいるかもしれない。けれど最悪の度合いなど人それぞれ、価値観などもひとそれぞれなのだと思う。そういえば、この前テレビでDiversityを大切にしようなどと言っていたが、その通りだと思う。

 一つ疑問に思ったのが、英語のDiversityと言われても、わかる人はわかると思うが、大体の日本人はぱっと思い浮かばないのではないのかと思う。この時点で全くその単語の意味の多様性にそっていないのではないかと思う。

 ということで、俺は俺の知っている多様性や価値観を俺の書くもので、皆さんの頭の中にぶちこんで、洗脳していきたいと思う。



 ごく普通の一般的な家庭の夫妻から生まれた本吉本は、なんの特徴も無く平均的な体で健康的に生まれて来た。この夫妻はたいそう喜んで、夫の方は失神するほどだったのだが、生まれてた当の本人はそんなに嬉しくはなかった。

 なぜか、前世といか、前の人だった時の記憶が残っていたのだ。

 生まれてきて、一つだけ感じたことがあった。「息ができない。」そこで思い出した「泣かないといけないんだ。」と。だが、今、泣かないといけなくても、物理的な痛みもなく、悲しい出来事もない、どうやって泣くんだ。

 突然、助産師さんの手が体に凄い早さで飛んできた。

 その手が当たった瞬間、体にこれまで体感したことのない激痛が走った。

 まー産まれたばかりなので、全てが初体験なのだが・・・

 この痛みにはどうしても耐えられなかった。そして不本意ながらも、大号泣した。

 お母さんはほっとしたような笑顔で赤子を本と呼んで抱いた。

 当の本人は身体の激痛でまだ号泣しているのだが、そんなことは、あまり関係なかった。

 この世に本が生を無事に受けたことが、一番重要だった。

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