第539話 ラストアンケート?
「ではラスト。『交際相手の中で一番、Hが上手い人は誰ですか?』」
「「「う、うおぅ......」」」
引くな。俺だってこのアンケートに順位付けするの辛かったんだぞ。
現在、愛妻ランキングなど学生に不相応なイベントを開催している俺らは、この長かったアンケートのラストを迎えていた。
計十五問。本当に、ほんとーに長かった......。
言うまでもなく、それらのアンケート内容のほとんどは桃花ちゃんたちによって、言い換えられたかたちで交際相手たちに伝えられた。
途中、問題の順番が入れ替わったり、陽菜に殺されかけたりもしたが、なんとか無事にこのふざけたイベントのラストを迎えられそうである。
無論、心に深い傷を負ったのは俺だけじゃない。交際相手たちもだ。
三姉妹ともこのイベントの開始よりもぐったりしている。
それもそのはず、彼女たちの予想とは違う形で、俺の本音というナイフが自身を傷つけるのだから、そのダメージは言わずもがなである。
「あ、あんた、よくこんな質問に答えられたわね。今更だけど」
「これ、一位だったとしても素直に喜べないよ......」
「ええ。兄さんにドスケベな女と見られているわけですからね」
今まで散々順位にこだわってきた連中がなんか言ってる。
既に回答済みの俺は、もちろんラストのアンケート内容もわかっていた。
俺だってすごく迷ったよ。でも息子は俺なんかと違って迷いなく答えを出していた。
だから俺はそんな息子に身を委ね、チンを走らせた。じゃなくて、ペンだ。
「私たちも順位付けるのに抵抗感ありますよ......」
「ね。というか、桃花ちゃんたちが居る前で、回答しなきゃいけないのが恥ずかしい」
「それにあいつら、和馬が回答したアンケート用紙を持ってるってことは、既に答え知っているのよ」
そう。陽菜の言う通り、このイベント主催者である桃花ちゃんと悠莉ちゃんは既に答えを知っている。
俺らの視線を受けた二人は、俺が記載したアンケート用紙と三姉妹を交互に見やってから口を開いた。
「お兄さんはやっぱりお兄さんだね」
「ええ。男ってのは本当に単純な生き物です。おっと、なぜか鼻血が......」
何に思いを馳せたのか、悠莉ちゃんが鼻血を垂らし始めた。
人んちなんだから遠慮してほしい。所構わずぶびぶびさせちゃってさ。このレズが。
二人の意味深な言葉に、三姉妹は揃って首を傾げた。
が、それぞれ『この人が一位。この人は最下位』と、悩みながらも手にしているホワイトボードに回答していく。
三姉妹が回答を終えたことを確認し、桃花ちゃんが開示の合図を取った。
「準備はいいですね〜。それではオープン!!」
葵さんの回答は[1位 陽菜 2位 葵 3位 千沙]。
千沙の回答は[1位 千沙 2位 陽菜 3位 葵]。
陽菜の回答は[1位 陽菜 2位 千沙 3位 葵]。
長女さん、妹二人に下に見られてるじゃないですか。メンタル大丈夫ですか。あ、目尻に涙が......。
「「「「「「......。」」」」」」
場に重たい沈黙が生じた。
それもそのはず、なんせ千沙と陽菜は長女に気を使うことなく、自分こそが一位と豪語しているのだから。
二人揃って、長女は最下位だろ、と舐め腐っているのだから。
長女なのにな......。
「そ、そのごめんなさい、葵姉」
「あ、謝らなくていいから」
「配慮に欠けてたわ」
「その言葉が一番欠けてるよ......」
長女に謝る末っ子。
場の沈黙に耐えきれなかったのか、陽菜は廃れきったツンデレで、『別に葵姉はエッチが下手そうなんて思っていないんだからね!』と抜かすが、効果は芳しくない。
むしろ葵さんの悔し涙の引き金となってしまった。
陽菜のツンデレって、本当逆効果ばっかだな。やんない方がいいよ......。
今度は千沙が口を開いて弁明した。
「わ、私は代わりに陽菜が気を使って、姉さんを一位にするかなと思いました......」
「言葉のナイフの切りつけ方がエグいよ」
「す、すみません。でも自分には嘘吐きたくないので......」
「心の切り裂きジャックかな?」
居た堪れないよ。本当に居た堪れない。
葵さんがいじけて部屋の隅に行く前に、桃花ちゃんたちが正解発表に入った。
「そ、それでは正解発表です」
「こ、これで姉さんが本当に最下位だったら、私と陽菜が色々と教えて差し上げますね」
「え、ええ。大丈夫よ、これからが大切なのだから、これからが」
「......。」
などと、自ら貶めた長女にフォローを入れる次女と末っ子である。
が、長女のHPがとっくに0なのは言うまでもない。フォローどころか止めを刺しに行っている気さえした。
「お兄さんの回答は......[1位 葵 2位 陽菜 3位 千沙]!」
「「ええ?!」」
びっくりして今日一で大声を出す次女と末っ子。
それもそのはず、自身こそが一位と信じて止まない内容が、まさか二位や三位だとは思ってもいなかったのだろう。
で、この回答を受けて、葵さんはと言うと、
「ふ、ふーん? わ、私が一位なんだ? ふーん?へー」
などと、さっきまでの落ち込みはどこへ行ったのか、満更でもない顔で明後日の方向を見ていた。
今にも引き締めた口が綻びそうで、喜びを隠せていない感じだ。チラチラっとこちらを見てくるところが、彼女の残念極まりないところである。
どうやらすぐに調子に乗るのが葵さんのブームらしい。
「な、なんで葵姉が一位なの?! この中で一番下手そうじゃない!」
「そ、そうですよ! あ、わかりました! 気を使ったんですね?!」
「ぐはッ」
その辺で止めて差し上げろ。さっきから『気を使った』とか連呼するな。
葵さんが普段、妹たちからどう見られてるのかを思い知らされて、本当に泣きそうだぞ。
俺は気乗りしない感じで、今回の回答に至った理由を述べることにした。
が、その前に、こいつらに言っておこう。
「正直、この順位付けには苦労したよ」
「あ、ああ、全員一位にしたかった的な意味ですかね?」
「ならまぁ納得してあげ――」
「二位と三位になッ!!」
「「そっち?!」」
ったりめーだろ! 陽菜と千沙のどっちを最下位にしようか死ぬほど迷ったわ!!
「この際だ。千沙と陽菜に聞こうじゃないか。“エッチが上手い”とはなんだ?」
「え? そりゃあもちろん、“気が狂うまで絶頂させまくること”ですよね?」
「惜しいわよ、千沙姉。正解は“赤玉が出るまで絶頂させること”よ」
二人の意見の違いがわからない俺は、二人の頭にチョップを叩き込んだ。
何するんだ、という抗議の眼差しを二人から受けるが、俺はそれを無視して葵さんに聞いた。
「葵さん、正解をお願いします」
「え? あ、いや、その......ふ、二人で気持ちよくなるのが理想かな、と」
「正解ッ!!」
葵さんがもじもじしながら答えてくれた言葉こそが、イチャラブエッチの醍醐味ではなかろうか。
が、そんな当然のことを!とさらなる抗議に出てきた千沙たちだが、俺はそんな二人にあることを聞くことにした。
「おい、お前ら。最近のアレで、お互い気持ち良くなったと言うつもりか」
「「?」」
俺のその言葉に二人は小首を傾げたので、ちょっとイラッと来てしまった。
「まずは千沙、お前だ。最近、俺の息子に何取っ付けてる?」
「「「「“取っ付ける”?」」」」
なんの凹凸も無い。強いて言えば、多少の反り返りを兼ね備えている肉棒に“取っ付ける”とはなんだ?と言わんばかりの視線を、この場に居る者たちが千沙に向けた。
千沙はそれに動じることなく、むしろ何が問題なのかと問い質してくる勢いで答える。
「コックリングですが、何か?」
「「「「......。」」」」
悪びれもなくそう言う千沙に、周りから『うわぁ、マジかこいつ』という視線が集まった。
あのリング、千沙のお手制なのか、しっかりと息子にフィットする上に、勃起すると超苦しいんだよね。
アレのせいで絶頂を迎えられそうなときに、変な感覚に陥ってしまうのだ。毎回気がおかしくなりそうで怖い。
たしかに我慢した先の絶頂は気持ち良いと言うけど、千沙の場合は本当に気がおかしくなるところまで我慢させられるのを、連続して強要されるから堪ったもんじゃない。
「駄目ね。千沙姉は何もわかってないわ。我慢させたら可哀想じゃない。その点、私は完璧ね。なんせ和馬に一切我慢させないもの」
「お前も論外だ、馬鹿野郎」
「な、なんですって!!」
「陽菜、男の射精ってのはな、『ドピュッ』とか、長くて『ビュルルル〜』なんだよ。なのにお前ときたら......」
「は? 『ジャバァァアアァア』一択でしょ」
「人の息子を壊れた蛇口みたいにすんな」
そう、陽菜に息子を委ねると、まるで放出量を抑えきれなくなった蛇口と化して、その管から止めどなく精液等が出ていってしまうのだ。
知ってるか、潮吹きは女の専売特許じゃないんだぞ。思い出したらち○こ痛くなってきた。
とまぁ、俺からの評価はこんなんで、“クラ○アン千沙”と“逆クラ○アン陽菜”という二つ名を二人に与えたい。
「せ、先輩ってそんなに出るんですね......」
「ちょ、悠莉、言い方」
「いや、兄さんがおかしいだけですよ。男優とは大違いです」
「面白いくらい出るわよ」
面白くねぇーわ。こっちはいつ心臓が止まるか、わかったもんじゃない。
イベント開催者の巨乳JK二人が俺の息子に視線を向けてくるが、俺はそれを無視して葵さんを見やった。
「葵さんはな、すごい上達が早いんだ」
「ほ、褒められているはずなのに、素直に喜べない......」
「最初は拙い感じだったけど、俺が言ったことはちゃんと聞いてくれるし、息子への気遣いがマ○ー・テ○サだったよ」
「マ○ー・テ○サに謝ろうね」
葵さんをべた褒めしたからか、千沙と陽菜が悔しそうな視線を俺に向けてきた。
まるで今までの自分たちの好意が報われなかったと言わんばかりである。
「あんなにシてあげたのに、あんたって本当に見る目無いわね!」
「はッ。言ってろ。今後は葵さんを見習って、加減ってもんを身につけるんだな」
「あったま来ました! うんと強い精力剤を盛って痛い目(物理的)に遭わせてあげます!」
「ちょ、ちょっと。共有物なんだから粗雑に扱うのはやめようよ」
「わ、私たち帰りますね......」
「お、お幸せに......」
しばらく和馬さんとその愉快な交際相手たちのちょっとした口喧嘩が続いたのであった。
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