第324話 ソラマメは勃◯した野菜である
「なんか農作業が久しぶりな気がします」
「そう? まぁ、春休みが終わったんだし、これからうちに来る頻度は少なくなるよね」
「ええ。残念です」
「ねぇ、私の目を見て言ってくれない? 胸見ないでよ」
あなたの本体は胸ですからね。このおっぱいが。
天気は曇り。4月上旬の今では曇りだと少し涼しく感じる。気温的にも日中の今でも20度に達しない程だ。個人的には外で仕事するのに心地よい気温である。
そんな今日は巨乳長女こと葵さんとバイト野郎の二人で、これからソラマメを収穫する予定だ。
「葵さんはつい先日、大学の入学式があったんですよね」
「うん。陽菜の入学式は直売店の日だったけど、私は定休日だったから両親と行ったよ」
「スーツで出席したんですよね。葵さんのスーツ姿見たかったぁ」
「だから胸見て言わないでよ」
ざーめん。じゃなくて、さーせん(笑)。
絶対、お胸の辺りが窮屈そうなスーツ姿であったに違いない。許されるのであればその日一日だけ葵さんが着るスーツのボタンになりたかった。きっと我儘な巨乳を押さえつけるのに苦労したのだろう。
くッ! 俺は見れなかったけど、周りの男どもはそんな葵さんを見れたのか! なんて羨ましい!
これがNTRた気分か。※違います。
「そういえば陽菜の入学式のときお世話になったらしいね」
「え。ああ、まぁ、成り行きです」
「ふふ。あの日の朝に陽菜が制服に着替えて家を出ていったんだもん。『絶対、和馬君のとこだぁ』ってわかっちゃった」
「そ、そんなことわざわざ言ってこなくていいですから」
「照れてるのぉ〜」
葵さんは隣に居る俺の頬を指で突いて煽ってくる。
巨乳がうぜぇぞ。いや、巨乳はうざくないんだけど、巨乳に付属している葵さんに腹が立つ。
ちなみに、陽菜の入学式以降、あいつと学校で会うことは無かった。正確には何度か廊下ですれ違ったくらいで、大した会話は無かったと言うべきだろう。理由としては単純に入学したての陽菜と二年生である俺とでは一日のスケジュールが全く違うからだ。彼女曰く、授業が一切無い一週間らしい。
毎朝一緒に登校するのかと危惧していたが、駅で友達と待ち合わせしてるとか、俺の早朝バイトによる影響とかで入学式以降、あいつが我が家に訪れることは無かったのだ。
故に今日は高校二年生最初の中村家でのバイトである。
「陽菜、可愛いもんねー」
「その話は置いといて。葵さんはどうなんです? 次の日はキャンパスに行ったのでしょう?」
「うん。なんか新入生をゲットしようとすごい数のサークルが私たちを待ち伏せしてたよ」
「さ、さいですか。何か気になるところでも?」
「うーん。スポーツに興味があるわけではないけど、テニスのインカレ――」
「駄目です」
「え、でも他の大学の人たちとも交流――」
「駄目です」
許さん。偏見だけど、インカレサークルに所属なんて許さん。しかもテニス。いや、偏見もいいとこだけど、ヤリサーかもしれないじゃないか。
所属しようものなら雇い主にチクるわ。
「な、なんでそこまで否定するのかな......」
「葵さんの貞操が危ないんですって。理解してください」
「いや、その思考が危ないからね?! なんですぐそっちに行くの?!」
「ヤリ目だったらどうするんですか! 知らず知らずのうちにお酒を飲まされて、ホテル連れて行かれて膜プッチンされたらどうするんですか!」
「人の初めてをプッチンプリンみたいに言わないでッ!!」
「もっと慎重に選んでくださいよ!」
仕事もせずに言い合いを始める先輩と後輩である。
たしかに葵さんが大学に行く目的の一つに、異性との交際を図るためと言ってたよ? でも性事情に特化した関係なんて駄目だ。
俺にそんなこと言う義理や義務もないが、それでも頭から否定するのが一匹のオスの定め――じゃなくて、誠実なお付き合いをしてほしいと願う俺の切実な願いだ。
うん。
......なんというか、葵さんのイメージがもう完全に処女女神なんだよな。葵さんが膜無い中古女とか普通に泣ける。
いや、言い方クズすぎるな、俺。
「さて、そろそろ口より手を動かそうか」
「そうですね。で、今回の仕事はソラマメの収穫ですよね」
「そ。和馬君は初めてだっけ?」
「なんて卑猥な......。ええ、葵さんも初めてですよね?」
「そういう意味で言ったんじゃないんですけど!!」
どういう意味ですかぁ?
『和馬君は初めてだっけ』って絶対に
ごめんね? さっきから「中古中古」って連呼して。最低だよね。自覚あります。
でも童貞にとって新品か中古はすごく大切なことだから。
そこを気にしなくなるのは一線を超えた人たちだけだから。
“お互い初めてが理想”って有限人類のこの世で厳しいけど、捨てちゃいけないロマンだから。
ビバ・処女ぉぉぉおぉぉおおおぉおおおお!!
「もうちょっと真摯になれば全然アリなのに......ごにょごにょ」
「はい?」
「ごっほん! で、ソラマメの収穫なんだけど、まだ生り始めだから大した量は採れないと思います!」
「は、はぁ」
脳内で処女を絶賛していた俺に彼女は何か言っていたが、ごにょごにょ言っていたせいか全然聞き取れなかった。
そしてやっとお仕事の話になるらしい。
「ん?」
「なに?」
「収穫量が少ないのなら自分が手伝う必要ありませんよね?」
「っ?!」
いつもは収穫量が多いと単純に人数を増やしてさっさと収穫を終わらせるのだが、今回は収穫量が少ないとわかっているくせに俺を呼んだだと?
「こ、これには訳があってね! 少ない仕事量でも二人でやれば一瞬で終わらせられるという効率面の理由があるの! それに仕事をする前に、ここの畑に来る途中で助手席の和馬君からいつもみたいに私の運転を褒めてくれれば私のやる気にも繋がるしね! 仕事の上でやる気ってすっごい大切だと思う! 決してこの前、和馬君に言われたことに動揺したとかじゃないから! 和馬君と一緒に仕事したいとかそういう私情は一切無いから! 和馬君に対してマメマメする要素は持ち合わせていないから! 金輪際ッ! 天上天下唯我独尊ッ!」
「すっげぇ喋る」
「すっげぇ喋っちゃったよッ!!」
“マメマメする気持ち”ってなんだ。以前もこんなことがあったような......。
まぁでも、要は仕事量に関わらず、今のうちにどんな仕事でも経験させとけば、今後も俺一人でお任せできる仕事を増やせると踏んでいるのだろう。
葵さんの顔が真っ赤なのはよくわからないが、きっとそういう意味なんだろう。
「それにしてもソラマメって面白いですね」
「え、どこが?」
「ほら、ソラマメが勃◯してます」
「和馬君はそろそろ自重しないといつか捕まるよ......」
失礼な。セクハラする人は選んでます。
俺が指した数あるうちのソラマメの
まるで勃◯のようだ(大切なことなので2回言いました)。
また面白いことに全部のソラマメが勃っているのではない。ちゃんと30代男性のおちんちんのようにゴツゴツさを兼ね備えているモノや、もう機能を果たさなそうな60代男性のおちんちんのようにグダッと生っているモノまである。
もうソラマメがおちんちんにしか見えないや。
「厭らしい......。なんで上を向いているんでしょうね」
「悲しいよ......。なんでそんな考えばかりするの......」
さぁ? 強いて言えば“遺伝”ですかね。
そしてこんな思考に即陥ってしまうバイト野郎の危うさ。もう末期なんじゃないかって自覚しちゃう。俺、
とりあえず、言いたいことがある。
全国の健全な農家の皆さん、こんなイカ臭い男が農業に携わっててごめんなさい。心、洗います。
地元の消費者の皆さん、こんなイカ臭い手で収穫した野菜を提供してごめんなさい。手、洗ってます。
「すみません、また話が脱線してしまいましたね。収穫の説明をお願いします」
「......。」
「葵さん?」
「よし、和馬君にお灸を据える目的で、久しぶりに“アオイクイズ”を開催しよう!」
ふぁ?! こいつ正気かッ?!
なんでここでアオイクイズ?! 人の思考がどうのこうの言ってたけどあんたも大概だよ?!
「あ、葵さん。それより仕事を......」
「これ決定事項だから! 拒んだら父さんに和馬君のセクハラが以前より増したってチクるから!」
「んなッ?!」
なんて奴だ......。そんなこと雇い主に知られたら
逃げられない俺は大人しく彼女の提案を受けるしか選択肢は無かったのであった。
――――――――――――
ども! おてんと です。
ということで、次回は第六回 アオイクイズを開催します。許してください。
それでは、ハブ ア ナイス デー!
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