閑話 千沙の視点 刃渡り1〇cmのモノ

 『ピピ! ピピ! ピピ!』

 「んふぇ?」


 現在7時。目覚まし時計に私は起こされました。


 「.....。」


 ああー、昨晩はたしか兄さんの部屋で色々とありましたっけ。


 私は記憶喪失をいいことに兄さんと一晩一緒に寝ようかと思って彼の部屋に行きました。結果、お互い卒業は果たせず、終いには帰らされるという結果となりました。

 

 「んがぁぁああああぁぁ!!」


 私はうつ伏せになって枕に自身の顔を押し付けます。


 「恥ずかしいですぅぅぅぅううぅ!!」


 半ばこちらが誘ったようなもんですし、これからどんな顔して兄さんに会えばいいのかわかりません。


 「しかも強姦紛いなことされましたし!」


 兄さんがあんな乱暴なことをする人だとは思ってませんでした。


 それにあのおちん......。


 「は、刃渡り10cm以上は確実にありましたよ......。なんて物騒な」


 あの大きさは予想外です。しかもガッチガチに固くて、ソッリソリに沿ってました。あ、あんなものをねじ込まれたら死にますよ。


 「これは少し、何かしらの対策が必要かもしれません」


 いつかの日のために下準備だけでもしておくことは妹として当然です。


 「あ! 兄さんには私の気持ちが伝わってしまったのでしょうか?!」


 それはマズいですよ。あんな行為までしてしまったらさすがの兄さんでも私の気持ちに気付いているはず。


 せ、攻めすぎましたね。


 「絶対に兄さんのことが好きだってバレましたよぉ」


 自室にて独り言に続き、嘆き始める中村家次女千沙ちゃんです。


 「ま、まぁ、じっくり攻略していきましょう」


 あんな男を好きになる女の子なんて私以外居ませんし。そこは安心できますよね。時間的猶予もあります。


 「それにしても変態性において他の追随を許さないあの兄さんがあそこまでヘタレだったとは......」


 中身がJSという属性がいけなかったのでしょうか。小学生に手を出したようなものですしね。


 「ま、考えすぎても意味無いでしょう。おち〇ぽのサイズを知れただけでも上出来です」


 さて、今日まで平日お休みを堪能しますか。



*****



 「おはようございます」

 「おはよ。千沙姉」

 「朝食準備するから待ってててねぇ」


 私は歯を磨きながら食卓に向かいました。


 その場にはお母さんと陽菜、それと記憶が戻らないでほしいと切に願うお父さんが居ました。


 「ふぁあ~。私は朝食を頂いたら二度寝します」

 「二度寝?! “私”?!」


 「兄さんが居ませんね。もう学校ですか」

 「“兄さん”って、千沙姉もしかして.....」


 「ああ、記憶喪失だったんですよね。もう治りました」

 「そんな風邪みたいなものかしらッ?!!」


 皆さん朝から騒がしいですよ。まぁ原因は私でしょうけど。


 お父さんが目をパチクリさせながら聞いてきます。


 「な、なんで記憶喪失だったって自覚あるの.....?」


 ギク。


 そうですよ。昨晩、JS千沙ちゃんは自室に籠るまで皆さんと一緒に過ごしていたんですから、きっかけが無いのにどうやって記憶が戻ったのってなりますよね。


 あ、そういえば。


 「え、えーっと、朝起きたら机にここ数日分の絵日記がありました」

 「「「絵日記?!」」」


 「それを見て大体のことは把握しました。わ、私、天才ですから」

 「絵日記が気になるわ! 見せてちょうだい!」

 「ええ! そんな尊いことしているなら家宝よぉ!」

 「千沙! 一生のお願いだから見せてくれ!」


 いや、私がどうやって現状を理解したのか気になってたんですよね? なんで絵日記の方を気にし始めてるんですか。


 「い、嫌ですよ。恥ずかしい」

 「まぁそうよねぇ。今の千沙が見せるとは思えないし」

 「千沙が学校に行ったら探そう」


 よし。後で即燃やしましょう。


 「はは。俺は千沙が戻って嬉しいぞ!」

 「ってことはもうあの千沙姉とはおさらばかぁ」

 「少し寂しいわぁ」

 「一昨日、私の記憶が戻って欲しくないと賭け事をしてたらしいですね?」


 「なぜそれを?!」

 「「......。」」

 「絵日記で知りました。お望みならもっと言ってあげます。存在が臭いです」

 「ぐはっ?!」


 お父さんに大ダメージ。娘が記憶喪失だっていうのにあんなこと言ったんです。こんなもんで済ませる気ありませんから。


 ちなみに、賭け事に関しては当然絵日記には書かれていません。


 「じゃあ賭けは私たちの勝ちでいいのかしらぁ?」

 「はぁ。別にどうでもいいんですが、娘で賭け事して楽しいんですか?」

 「ふふ。別にいいじゃない。減るもんじゃないし」


 私から家族への愛情が多少なりとも減りましたよ?


 「家事って言っても何をすればいいんだい」

 「洗濯物を干したり、料理をしたり、ラジバン〇リよ」

 「今日じゃなくていいわぁ。冬休みに入れば泣き虫さんも居るんだから、一緒にしなさいな」

 「に、兄さんに家事をさせるんですか。洗濯物とか料理にませんよね?」


 「た、他人の家でそんなことしたら異常だよ」

 「く、クビね。料理はまぁ別に―――」

 「陽菜ぁ、少し黙りなさい。任せても平気なことをしてもらいましょう。部屋の掃除とかねぇ」

 「それがいいです」


 陽菜がなにか話途中でしたがお母さんが遮ってしまいした。


 あの兄さんですからね。昨晩はお互いに緊張していたにも関わらず、あんなにもおっきさせてガッチガチだったんですから。


 中村家のどこをカピらせても不思議ではありません。


 「あ、そう言えば兄さんはもう学校に行ったんですか?」

 「ああ、なんか今日はいつもより早くここを出たな」

 「顔色が優れなかったのよねぇ。一体どうしたのかしらぁ?」

 「どーせ夜更かしのしすぎなのよ。息子のケアばっかしてるかね!!」

 「「「......。」」」


 だからってまぁ朝食中に言うことじゃありませんよ。


 ........そうですか、兄さんも昨晩のことを気にしてたんですね。


 「さて、良い天気ですし、二度寝しますか!」

 「ふふ。何を言っているのかしらぁ?」

 「っ?!」


 お母さんは全然目が笑ってない顔で微笑みかけます。


 片手には朝食を作る際に使っていたフライパンを持っています。


 「学生は学校に行きなさい」

 「え、で、でも私病み上がりですし―――」


 「行きなさい。あなた何日休んだと思っているのぉ?」

 「ふ、不可抗力だったんです!」


 「もう一度ショックを与えて小学生からやり直したいのかしらぁ?」

 「......。」


 ど、どいひー。


 はぁ。JK千沙ちゃんの恋路はまだまだ始まったばかりみたいです。

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