第102話 久しぶりの妹とH(izamakura)

 「お前に兄を想う優しさは無いのか」

 「兄さんに妹を想う優しさは無いんですか」


 俺は中村家の皆と三日ぶりの夕食を終え、今日は疲れたので少し早いが寝ようとしていた。あの皆のゴミでも見るかのような目。しばらく忘れることはないだろう。理由は言わずもがな。


 そんな俺の就寝時間にパジャマ姿の処女妹が遊びに来た。


 パジャマ姿の千沙に露出してるところなんて無い。兄にサービスがなっていない妹だな。ランジェリー姿で出直してこい。


 「なぁ千沙。今日は少し疲れたんだ。勘弁してくれないか?」

 「なんですかその言い方。まるで私が強要しているみたいじゃないですか」

 「とりあえず眩しいから懐中電灯の明かりを消せ。こっちに向けるな」


 してんじゃん。俺の部屋にノック無しで、明かりを消した部屋で寝ていた俺に明かりを当ててんじゃん。目が死ぬわ。


 『チカチカ........』

 「兄さんがメールしても全然私の部屋に来ないからですよ」

 「明かりをチカチカさせんのやめろ。話が頭に入ってこないだろうが」

 『チカチカチカチカ........』


 未だ、なに一つとして兄の言うことを聞いてくれない妹。もう兄をやめたいと思う俺は早計だろうか。


 「さ、早く私の部屋に行きましょう」

 「...俺、今お前の部屋に行ったら、腹いせでお前を襲っちゃうかも。で」

 「ちょっ、やめてくださいよ! 妹ですよ?! よくそんな平然として言えますね?!」

 「な? 嫌だろ、こんな兄。じゃ、おやすみ」


 今日の俺はそう簡単に譲らない。すっごく眠いのだ。高々三日ぶりの農業をしただけなのにな。


 「...兄さん。よく考えてみてください。この三日間、私がどんな想いで一人でゲームをしていたと思うんですか」

 「結局ずっとゲームしてたんだよね? 寂しさを紛らわすとかじゃなくて、徹夜するほど夢中にゲームしてたんだよね?」


 「おかげでここ三日間、生活リズムが乱れました。どうしてくれんですか」

 「俺は兄になってからずっと生活リズムが崩れっぱなしです。どうしてくれんですか」


 なんだこいつ。今日はやけに積極的にくるな。いやまぁ、いつも俺が折れるまで辛抱強いんだけどさ。


 「仕方ありませんね。奥の手です」

 「なんだエロ本か? AVか?」

 「エロ本なんか持ってませんよ」

 「AVは持ってるのか........」


 妹が所持しているAVほど気になる物はない。いつもの三割増しで自家発電できそう。


 「膝枕してあげます」

 「あれどっちも苦痛じゃん」

 「に、兄さんがこれで断るなんて思ってませんでした...」

 「いや、そりゃあ嬉しいけど、お前次の日筋肉痛になるし」


 こいつ膝枕で翌日筋肉痛になったからな。そんでもって足が碌に動かせないからって朝飯、昼飯抜いた上に、トイレまでほふく前進して腕も筋肉痛になる馬鹿だ。自分自身にどんどんデバフをかけていく妹が哀しいよ。


 「ふふ、甘いですね? 私が苦手なことをそのままにしておくわけないじゃないですか」

 「な、なんだと?!」


 俺は千沙の一言に驚いた。早寝早起き、夏は暑くて外に出たくない、仕事したくない、ピーマン嫌いなどなど。瞬時にこいつの苦手なものがたくさん思いつくのに、未だそれらは何一つ未解決のままだからだ。


 「そのまま」にしているくせにどの口が言ってんだ。


 「なんと膝枕の対策として、正座しながらダンベルを太ももの上に乗せるという訓練を続けました!」

 「な、なんだと(2回目)?!」


 俺は千沙の一言に驚いた。行動がバカすぎてお兄ちゃんがついていけないからだ。


 「っていうか、ダンベルってこの部屋にあったやつか?」

 「ええ。二つあったので一つ拝借しました。三日前に」


 「人が休暇でいない間に勝手に部屋入るんじゃないよ。プライバシーってもんがあるでしょうが」

 「知りませんよ。TE〇GA EGGほっぽっといたまま実家に帰った兄さんに言われたくありません」


 「なんで知ってんだよ?! ボストンバッグの中に仕舞っておいたんだぞ!」

 「あぁー、すみませーん。ダンベルを探しててぇー」

 「確信犯すぎるッ!」


 兄のオナホグッズを見つけた妹。よく普通に接するよね。もしも俺が千沙の部屋でディ〇ドとか電〇を見つけたら、「そんなものより俺の新品懐中電灯を使ってくれ」って申し出るのに。


 はぁ......。ほんっとなんでこうまでして一緒にゲームをしたがるのかな。まぁ理由は何にしろ、ここまで俺のことを慕ってくれたんだ。少しくらいゲームに付き合った方がいいんじゃないのか、そう思ってしまっている自分がいる。


 「仕方ない。少し付き合うか」

 「やったぁ!......です」


 普段、冷静な顔つきの千沙が無邪気に喜ぶ。しょうがない、他でもない処女の頼みだ。そのうち童貞を貰ってくれるかもしれないのでここは我慢しよう。その日に期待しよう。その時がきたら赤玉出るまで中出〇しよう。


 「ちなみにダンベルで練習をしていたのは最近なんだろ?」

 「ええ、そうですよ」

 「今はその練習のせいで筋肉痛じゃないのか?」

 「ぷち筋肉痛です」

 「それ大丈夫なのか......」


 ぷち筋肉痛...。なんか可愛いな。


 俺と千沙は、俺が借りている部屋を出て、二階にある千沙の部屋に向かった。いつになったら俺を返してくれるのだろうか。それだけが心残りである。






 「なぁ。この状態、思ったより集中できないんだが」

 「じゃあ起きてください」


 俺は千沙に膝枕をしてもらいながら、テレビゲームを一緒にやっていた。横になってゲームするって変な感じだわ。うまく操作できないもんなんだな。


 「起きたらゲームしに来た意味がなくなるだろ」

 「贅沢な話ですね」


 ああ、贅沢この上ない。だって頭の真下には処女があるんですよ? 膜が、未貫通ホールがあるんですよ? これだけで俺、先走りマッサージオイルが出ちゃいそう。


 「ちょっ! 兄さん、顔をうずめないでくださいッ!」

 「あ、わり」

 「全く悪びれてない『わり』ですねッ!」


 失礼な。親父譲りの誠心誠意の謝罪だぞ。


 俺は膝枕されたまま千沙の顔を見上げた。間近で見ても相変わらず美少女だと再認識させられるような顔立ちだ。


 「下の次は、今度は上を見上げるんですか。プレイに集中できてませんよ」

 「悪い、悪い。千沙が可愛くてさ、つい」


 「っ?!」

 「はい、隙ありぃー」


 「なっ?!」

 「プレイに集中できてませんよ」

 「せこいです!」


 俺らはそんなこんなでゲームをずっとやっていた。会話も途切れ途切れで世間話程度である。なにか話題を探していたわけじゃないけど、前々から疑問に思っていたことを千沙に聞くことにした。


 「あ、そういえば千沙に聞きたいことがあったんだ」

 「スリーサイズなら言いませんよ?」

 「......。」


 葵さんも千沙も俺のこと普段どんなヤツだと思ってんだろ。こんなに紳士なのに。


 「お前、なんで私立中学行ったの?」

 「あぁ、そのことですか」

 「以前、中高一貫の私立中学校に通ってたって言ってたじゃん。頭良いよなぁ」

 「ええ、自負してます。それに前も言いましたが髪を染めたかったからです」

 

 マジでそんな理由? でもお前だけとかすごいな。それに陽菜ならまだしも、葵さんがよくわかんないや。俺と同じ中学校出身だって言うのに全然、葵さんとすれ違った記憶すらないもん。変じゃね? あんな美人さんを意識しないとか。


 「本当に?」

 「そうですよ? まぁもう一つ理由はあったんですが...」

 「え、なに」

 「......あれですよ。周りがガリ勉とか先生や親の顔色ばっか気にしている生徒ばかりでしたので嫌気が差したんです」

 「あーそんな感じがする」


 たしかに偏見だけど、そんな感じがするわ。


 「あ、それと葵さんって中学生の頃どんな感じだった?」

 「っ?!」


 「ど、どうした急に」

 「い、いえ。...なんでそこで姉さんなんですか?」


 「いやね、葵さんは俺と同じ中学出身だったらしいんだよ。陽菜は『そういえばいたな』で思い出せたけど葵さんは全く思い出せないんだよ」

 「...そうですか」


 ちなみに千沙たち美人三姉妹は小学生の頃、ここより少し離れた小学校に通っていたらしい。俺はそこではない小学校に通っていたから接点はない。会っても中学生の頃からのはずだ。


 「まぁそれは姉さんに聞いてください」

 「?」

 「言うことではありませんので」


 なんだ、珍しく勿体ぶった言い方しやがって。でもそういうことなら今度葵さんに聞いてみよう。


 「あ、そろそろ時間ですので終わりにしてください」

 「名残惜しいが仕方ない。スーハースーハーしていいですか?」

 「お店の人おとうさん呼びますよ?」

 「嘘だよ。冗談、冗談」


 さっきから千沙の言い方、デリヘル嬢のように思えてきた。処女でデリヘル......。やばい、息子が。


 「ところで兄さん、明日はなんのお仕事をするのか聞いてますか?」

 「いや? おそらく葵さんたちは直売店の準備だし、たぶん草むしりとかな」

 「頑張ってくださいね」

 「おう」


 俺もいつか直売店の手伝いとかしてみたいな。と言っても、お店に出れるほど接客業の心得なんてものはバイト野郎には無いから遠い未来の話でもある。


 「俺って直売店の仕事できると思う?」

 「兄さんには向いてませんよ」


 「ほほう。その心は?」

 「兄さんが朝弱いからです」


 「朝頭が働かないのは誰のせいだと思う?」

 「私のせいだって言うんですかッ?! 見損ないましたよッ!」


 誰もお前のせいだなんて言ってねーよ。自覚あんならもう少し自重と思いやりを学んでほしいもんだ。


 でも、そんな血のつながっていない妹とアホみたいな生活を送るのも悪くないと思う俺がいる。難しいものだ。


 っていうか千沙と遊んでどのくらい時間が経ったのだろうか。俺は千沙の部屋でどこに時計があるか探す。


 「あ、ですね? おやすみなさい、兄さん」

 「......。」


 ...やっぱこいつは思いっきり反省した方がいいと思う。

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