第84話 桃花、種マシン〇ンだ!!
「お兄さんの馬鹿ッ! 私の下着返してよぉー!!」
「馬鹿野郎ッ! サンダル挟んでドア少し開けといただろ!!」
俺はまたしても桃花ちゃんを止められなかった。現在、19時20分。白のTシャツにショートパンツ姿の桃花ちゃんが俺んちに来た。来ることは予想できたんだがな...。
バイト野郎は住み込みバイトの生活から3日間の休日をいただいた。今日は休日1日目となる。といってももう夜も遅いので、今夜は早く寝て明日の陽菜との買い物に備えなければ。
「あ、ほんとだー(棒)」
「絶対気づいてただろ?!」
俺は十中八九、部活を終えた桃花ちゃんが俺んちに来ると思ったから、玄関のドアにサンダルを挟んで「中に居ますよ」アピールしたのに、こいつ無視しやがった。
「胸が大きいから下の見晴らしが悪くてわかんなかったー」
「...。」
「きっも! お兄さん、ガン見しないでよ!」
「し、しししてねーよッ!!」
「お邪魔しまぁーす」
「あ、おい!」
くっ。絶対わざとそのけしからん胸を見せつけただろ! 気をとられた俺は、その隙をつかれて桃花ちゃんの侵入を許してしまった。まぁ別に拒否るつもりはなかったけど。
ちなみに桃花ちゃんのおっぱいの大きさの順では可愛い子巨乳ランキング2位を誇る。後に続くのは千沙、陽菜の順になる。1位は言わずもがな。例のスイカ娘である。
「久しぶりのお兄さんの家だぁ」
「なに感極まってんの? お前のとこと一緒だろ」
「ううん。お兄さんちは角部屋だから多少違うし、なにより...」
「?」
桃花ちゃんが家に入っていきなり辺りを見渡し始める。なんだ、珍しくためらった言い方して。
「なんでもなーい」
「は?」
「気にしない、気にしない」
「はぁ。で? なにしに来たの? ないなら俺から言いたいことあんだけど」
俺は要件を聞く。まぁ桃花ちゃんの場合、用事なくても嫌がらせだけしてくることがあるから今日もそうなのかもしれない。
まじで人んちの前でアレ言うのやめてほしい。ご近所さんの俺に対する偏見とか態度が変わる。てかすでにもう何人かは、下種野郎でも見るかのような目で俺を見てくるし。
「え、ないけど?」
よし、じゃあ俺のターンな。
「わっ! なに?!」
俺は戸惑う桃花ちゃんの背後に回り、両肩をがっしり掴んだままベランダまで向かう。雨戸はせず、網戸だけの窓に彼女を連れて行き、その場の惨状を見せた。
「これなんだと思う?」
「さ、さぁ?」
そして俺は桃花ちゃんの胸倉を掴む。
「ぐっ?! ちょっ苦しいんだけど!」
「お前! 人んちのベランダになんつうもんばらまいてんだ?!」
「す、スイカの種のことなんか知らないよ!!」
「誰もスイカの種なんか言ってねーよ!!」
こいつ罪を一瞬で自白しやがった。よく一瞬でわかったな。
俺は桃花ちゃんの胸倉を掴んだまま揺さぶる。その際、彼女の襟元が広がって谷間と水色のブラジャーがチラ見できたのは幸いである。役得、役得ぅー。ぐへへ。
「誰かー! 犯されるぅー!! JCが犯されるぅー!!」
「あ、こら! またそういうこと言って!!」
「だって視線が私の下着にいってたじゃん! バレバレだよ!!」
バレてましたか。くっ、そんなに視線ってどこいってるかわかるもんなのかな。
「はっ! ここは角部屋だぞ? ちょっとやそっとで誰も気にしねーよ!」
「開き直った?!」
「犯してやろうか?!」
「ごめんなさい、ごめんなさい! それだけは許してください!!」
「......。」
...言っといてなんだけど、そこまで言われるとなんか萎えますね。もちろん犯す気なんて微塵もないが。俺、童貞だし。...ぐすん。
「ったく」
「うぅ...襟が伸びちゃうじゃん」
「知るか、ドアホ」
自業自得だろ。ありがとうございました。下着はもう頭の中にインプットしたので、今度それを拝んだ時「ああ、それ、あの時のブラジャーね」ってセクハラしてやろ。...あるのだろうかそんな機会。
「ほら」
俺は彼女に掃除道具を渡す。理由は言わずもがな。
「え」
「え、じゃないよ。さっさと掃除しろ」
「なんで私がスイカの種の掃除するの?!」
「お前が種をばらまいたからだろーが!!」
「いや、だからって私が吹いたやつを掃除するのおかしいよ!!」
「いや、なんで俺が他人の口から出たヤツを掃除しなければなんねーんだよ!!」
「「はぁ......はぁ...」」
こいつ、ここまで馬鹿だとは思ってなかった。常識が著しく欠如してやがる。
「はぁ...はぁ...お、お兄さん」
「はぁ...はぁ......なんだ」
「これJCの口から出たスイカの種だよ?」
「いやJCとか関係ないから」
「お、お兄さんならむしろご褒美だと思ったんだけどなぁ」
「お前、俺をいったい何だと思ってるの......」
桃花の、
『プルルルル、プルルルルルル』
「あ、スマホが鳴ってる」
「私が出よっか?」
「なんでだよ。いいからお前は掃除してろ!」
「ぶーぶー」
馬鹿言っている桃花ちゃんをあしらい、俺はポケットにしまってあった振動するスマホを手に取る。お、高校の友達からだ。
「もしもし、
『そ。お久ー』
「おう。どうした?」
『いやね、今度、
ここんとこ...いや夏休みに入ってから同級生の奴と遊んでないから、久々にバカ騒ぎしたい気分だ。この休日の間なら絶対行こう。
「お、いいね。いつ?」
『具体的な日にちは決まってないな。希望とかある?』
「そうだなぁ。俺また三日後に住み込みバイト始まるし」
『ああ、例の? よく暑い中、農家でバイトするよなぁ』
俺が「農家でバイトしている」って言うと、みんな似たような反応する。そんなに変かな。
明日は陽菜と買い物だから行けないな。明後日でいいかな。
「じゃあ明後日はどう?」
『おう。たぶん他の連中も暇だからいけるぞ』
よし、これで休日の予定は全部埋まったな。楽しみだぜ。
「じゃあそれで―――」
「ああんッ! お兄さん激しい!!」
「『っ?!』」
桃花がなんか急に乱入してきた。見れば掃除はとっくに終えて、渡した箒に抱き着いて悶えている。
「ちょ! 桃花ちゃん、なに言ってんの?!」
「お兄さんがペースを上げるから、耐えられなくてッ!」
『...。』
「裕二、これは違うぞ! 近所の子の悪戯だ!!」
「あんッ! そんな...待って!」
『...お取り込み中悪かったな』
「待ってくれ!!」
「壊れちゃう! 私、壊れちゃうッ!!」
『じゃあな。......爆ぜろ、リア充め』
「裕二―――!!」
『ブツッ!』
「......。」
俺は桃花ちゃんを睨む。彼女はわざとらしく、自分で頭を小突いて、
「てへっ」
「......。」
なにが、「私、壊れちゃう」だ。俺の友人関係壊しやがって。
「なにしてくれてんの?」
「だってせっかくの休暇を、私のこと無視して遊び行こうとするんだもん」
お前と遊ぶより絶対あっちの方が楽しいじゃん。どうすんのこれ。俺、童貞なのに電話越しセックス配信しちゃったよ。
「...とりあえず帰ってくれ」
「はぁーい」
桃花ちゃんは罪を犯したという自覚なんてせずに、テキトーな返事を残して玄関に向かった。
「じゃ、お兄さん、また明日!」
「...。」
神様、これから三日間、家にいる時間が怖いです。
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