第66話 葵の視点 こ、これが発情スイッチ

 「さっそく始めよっか!」

 「し、しかし」

 「寝て?」

 「ほら、遅いと真由美さん―――」

 「寝て」

 「千沙が来るかも―――」

 「寝なさい」

 「あ、はい」


 彼のマッサージのせいか、今はすっごく頭がふわふわする。これ、恍惚っていうのかな。自分で自分を制御できない感じ。今なら素直に彼に甘えられそう。


 「ではうつぶせになるので目を瞑ってください」

 「なんで?」


 彼が変なことを言う。別にうつぶせになるのに、私が目を瞑る必要なんてないよ。


 「あぁー! UFOだ! 見てください、葵さん!」


 彼が大声を出して窓の外を指出す。必死に私の視線をどっかに向けたいらしい。


 私はなぜわかったのか、彼の下半身を見た。たぶん彼が軽く前かがみになっていたのを、私はそれが不自然に思ったからだろう。そこにはパンパンになったがいた。


 「あぁそういうこと。高橋君って本当にエッチだね?」

 「......。」

 「わー。に宇宙人住んでいるんだね。......ねぇ反省してる?」

 「...はい」

 「じゃあ、はやく寝て?」


 彼は虚ろな目をしながらうつぶせになる。宇宙人は苦しそうにしていた。


 こんな弱気な彼が可愛わしく見えたのか、私はついイジメたくなってしまい、うつぶせになった彼のに私はわざとまたがった。


 「おふっ!!」

 「どうしたのぉ?」

 「あっ葵さんわかっててやってますよね?!」


 わかってます。反応が楽しくてわざとやってるんです。


 私はぐりぐりと彼のお尻に体重をかけた。当然、宇宙人に負担がかかるだろう。


 「なんのことかなぁ?」

 「おっ......ぐっ....満足です....かっ?! これでぇ...」


 なんかとっても変な気持ち。感情が昂っていて、私自身、しちゃいけないことだってわかってても止められない気分だ。


 「満足? なわけないじゃん。上、脱いで?」

 「え」


 「なんで服着ているの? 馬鹿にしてる?」

 「そ、それはさすがに....」


 「ほらぁお詫びでしょぉ? 昼間の件、許さないよぉ」

 「....。」


 彼はうつぶせのまま器用に上半身の服を脱ぐ。まったく、下も剥ぎ取らないだけマシでしょ。感謝して。


 「うわぁ。こ、これが、あの背中」

 「....。」


 「この盛り上がっているところはなんて言う筋肉なんだろう。ねぇ高橋君?」

 「....さ、さぁ」


 「知らないのぉ?」

 「すみません......」


 「じゃあ、お待ちかねのマッサージ開始だね!」

 「......わ、わーい」


 私はマッサージという名のなにも力を込めていない“おさわり”を始めた。


 「デコボコしてるぅ」

 「...くっ!.....くすぐったいです、葵さん」 


 「そう? あ、背中に力入れてみて」

 「ま、マッサージとは......」


 「すごっ。硬貨挟めるんじゃない? そうだ! 良いこと考えた」

 「ひゃうっ!! なに?!」


 彼が変な声を出す。ただのさっき飲んでいたスポーツドリンクだよ? 驚きすぎじゃない?


 私はこのスポドリを彼の力んだ背中にできたに垂らした。こぼれないようにぎりぎりを狙って。


 「え、スポドリだけど」

 「本当になんつうもん背中にかけているんですか!」

 「あっプロテインが良かったですかぁ?」

 「ごめんなさい! さっきのは許してください!」


 さっきとは完全に立場が逆である。なにこれすっごく楽しいんだけど。そんな反応されたら、もっとイジメたくなっちゃう。で責任取ってもらお。


 「あっこぼれちゃうじゃない。布団汚れるよ。耐えて?」

 「き、きついです。勘弁してくださいぃ」


 「しょうがないなぁ。休憩ね?」

 「ひゃうっ!! 今度はなにんですか?!」


 「え、舐めただけだよ?」

 「なっなな舐めた?!」


 また彼が変な声を出す。こぼして布団が汚れても困るので、私は背中に垂らしたスポドリを。これ好きでしょ? 高橋君の顔が赤いもん。まんざらでもないってすぐわかったよ。


 うん、我ながら最高のマッチポンプな気がする。筋肉の無駄遣いをしているね。ぞくぞくしてきた。


 「じゃあ第2ラウンドね?」

 「またですか?!」


 「さーて、何分耐えられるかなぁ」

 「ほんっと許してください!」


 「やだぁー」

 「葵さん!!」


 再びスポドリ地獄の開始だ。彼は涙目で必死に耐える。それがとっても面白くて、つい悪戯したくなった私は、少し腰を上げて今度は彼の肩の筋肉を触る。


 さっきまで筋トレしていたからか、山のように盛り上がっていて、岩のように硬い。


 しばらくさすって遊んでいたら、いつの間にか先ほどの背中に垂らしたスポドリはこぼれていたことに私は気づいた。


 「あーあ、こぼしちゃったね」

 「せ、せめて明確な時間を設けてください......はぁはぁ」


 「うーん、さっきより短いかな?」

 「いや絶対記録更新してましたよ!!」

 「いいから、お仕置きね!」


 私はさらなる望みを口にする。


 「仰向けになって?」

 「え」


 「胸筋や腹筋のほうが第3ラウンド長引くでしょ」

 「まだやる気ですか......じゃなくて、問題は違うところにあります」


 「なに?」

 「いや、えーっと、がですね...」


 「あー、気にしないからいいよ別に」

 「じ、自分が気にします」


 む、意外と抵抗するね。困ったなぁ。他にもシたいこと山ほどあるのに。まだ22時にもなってないよ? 夜は長いんだから。


 そんなことを思った瞬間、


 『ガラガラガラガラ』

 「兄さん、寝てますか? 昼間寝すぎて寝れないのでゲームに付き合ってく―――」

 「「っ?!」」


 「な、何をしているんですか?」


 千沙がノックもなしにこの部屋に入ってきた。

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