第51話 朝食はチョーショックでした

 「おはようございます」

 「おは.........くすっ、すごい寝ぐせだね」

 「あはははははっ!! 何それあんた鏡見たの?!」


 今日は曇り。朝から暑くて本当に困るな。おかげで昨日、お風呂あがった後に髪の毛を乾かしても寝汗のせいか、朝起きたら寝ぐせとなってしまった。


 ちなみに寝癖の形状は東京タワーならぬ和馬タワーである。


 まぁ葵さんの笑顔が朝から見れてバイト野郎は幸せです。陽菜のバカ笑いも少し可愛いから許す。


 「ぶははははははっ高橋君、それなに?! 面白いね! 10点あげるよ」


 雇い主の笑い方やばくない? 世紀末覇者みたいで怖いんですけど。つかその得点なんか意味あんの?


 「ま、100点満点中なんだけど」


 10点満点じゃねーのかよ。馬鹿笑いしてそれなの? 100点の笑い方が気になるんだけど。


 「ほら、馬鹿言ってないで。あなた今日は直売の日よぉ? 早くご飯食べて支度しなさい」

 「はぁい」


 ガキか。とてもじゃないが50代大人の返事とは思えないぞ。


 「ほら、ほっぺにジャムついているわよ」

 「とってぇ?」


 ガキだった。あれ、朝だからかな。こんな幼児退行したオヤジなんか朝から見たくないんだけど。


 『バシッ!!』

 「へぶんっ!」


 痺れを切らしたのか真由美さんが側の頬をビンタした。


 「とれたかしらぁ?」

 「はい、とれました」

 「眠気はぁ?」

 「ばっちりです。よ、よーし今日も頑張るぞー」


 真由美さん怖っ。


 「ほら、陽菜も部活あるんでしょう?」

 「はい、すぐ食べます!」


 一回のビンタで他人にまで影響を与えるとか、それもう範囲攻撃です。


 「はい、おまたせ」

 「あ、ありがとうございます」

 「ふふ。アレは気にしないでね? いつものことだから」


 アレがいつものことなのね。今日だけじゃないんですね。不安です。いつかバイト野郎にもビンタがきそうで。


 俺は葵さんから朝食をいただく。メニューは食パンに、目玉焼き、ソーセージにベーコン、ちょっとしたサラダもある。普通の朝食だけど、すっごく新鮮。


 しかしひとつ欠点がある。


 「..................。」

 「な、なに? 高橋君?」

 「いえ、別に。いただきます」


 なんで普通のエプロンなんですか? 舐めてるんですか? そこは裸エプロンでしょうがぁぁぁぁああああ!!!


 まぁ2段とばして、水着エプロンでもいいですよ? とにかくそのジャンルなら文句なしの朝ごはんなのに。くそう。


 「あ、一応、千沙のも用意しとかないと」

 「そう言えばに昨夜、東の家あっちで会いましたよ?」

 「「「「..................。」」」」

 「え、どうしたんですか? 急に黙って」


 なにどうしたの? 会っちゃまずいの? 一応トイレでご対面したことは伏せておく。もちろん尻を揉みしだいたのも。そんなこと言ったら殺される。


 「和馬、あんた今までじゃなかったかしら?」

 「まぁ色々あってな」

 「仲良くなったってことだね。よかったぁ。そう言えば高橋君には、千沙はよく東の家あっちの部屋を使っているって言い忘れてたから、心配したよ」


 ほんっと言って欲しかった。すごく大切なことじゃんそれ。でも、人生で揉んだことないものを揉めた上に、指先が聖水を触れられたので不問とします。


 「.......千沙は元気だったかしらぁ?」

 「ええ、普通だと思います」

 「そう....ならいいの」


 真由美さんが心配そうにそう言った。昨日なにかあったんだろうか。


 「た、高橋君、今日は朝から直売店のことで私たちは忙しいから、一人で悪いけど里芋畑の草むしりをいいかな?」

 「了解です、任せてください」

 「お願いします」


 俺は葵さんから今日の任務をもらう。しっかりと遂行しなければ。


 「じゃあ俺は先に仕事してるわ」

 「私も。葵、あとはお願いね」

 「うん、すぐいくね」


 そう言って雇い主と真由美さんは家を出る。俺も食ったらすぐ行こう。8時30分から仕事を始めなくては。その前に寝ぐせも直さなければいけないな、みっともないし。


 「ごちそうさまでした。おいしかったです」

 「お粗末様です」

 「では自分も準備して行きますね」

 「うん、頑張ってね」


 これで“行ってらっしゃいのキス”があれば俺も愚息も元気になるんだけど、さっきの千沙の件でそんな雰囲気じゃないし、今日は諦めよう。


 俺はいっかい東の家あっちに行き、作業着に着替えなくてはいけない。


 「あ、私も行くわ。途中まで一緒でしょ?」

 「そうだな。着替えと寝ぐせ直してくる」

 「直さないほうがモテるかもよぉ?」


 陽菜が煽ってくるので、俺は陽菜のピーナッツバターを親指で拭きとる。なに、舐めやしない。そんなことしたらさすがにキモがられる。そういうのはイケメンの仕事だってちゃんと理解してるさ。.....ぐすん。


 「っ?!」

 「お前も、身だしなみはちゃんとな?」

 「わわわわわわかってるわよ!!」

 「顔赤いぞ」

 「うっさい! 滅べ!」

 「ほ、滅べって....」


 俺は陽菜と言い合いしたあと家を出る。そして東の家に戻り、ツナギ服に着替えてから外に出た。畑の場所は事前に聞いてたし、後は鎌と、草を入れる籠だな。


 中庭には俺を待っていた部活のジャージ姿の陽菜が居た。手には俺が草むしりで必要な物を持っている。


 「おっそいわよ! ほら、これ必要でしょ」

 「ありがと。....なら早くいけばいーじゃん。置いてっていいんだよ?」

 「待ってあげたのよ? 感謝なさい」

 「はいはい、何なりとお申し付けください」

 「え。いいの? そうね、じゃあ帰ったらマッサージお願い」

 「葵さんのね。いいよ、むしろウェルカム」

 「私よ! わ・た・し!!」


 朝から元気な奴だなぁ、ほんと。そんなにお望みなら、俺が巨乳マッサージをお前の貧相な胸にしてやろうか?


 しかし、千沙のこと気になるなぁ。まぁ気にしても仕方ない。そんじゃ、今日も頑張りますか。

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