第23話 桃花の視点 勉強は苦手、試験は得意
「桃花ぁ」
「ど、どうしたの? 急に泣きついてきて」
ホームルーム始まるまでまだ時間に余裕がある。私は珍しく朝早くに教室に着いた。そんな私に親友が泣きついてきた。
「体育館空いてなかったぁ」
朝でもバカは平常運転である。この子今日から試験期間なの知らないの? 昨日、担任が帰りのホームルームで言ってたじゃない。
「ほんっと馬鹿だね」
「ひどっ!」
去年からよく一緒にいるようになったけど、それまでは陽菜の印象は可愛くて、賢そうで、運動もできる完璧な美少女だと思っていた。
今では、勉強面に関して頼られる側だ。
あれ? この子、全然賢くない子だ。って思うようになっちゃった。仕方ない。普通に考えて完璧美少女なんていないってことだね。
それに、こういうのもなんだが、私はそこそこ頭が良い。ろくに勉強しなくてもだいたいの科目はいつも80点越え必須である。
やろうと思えばもっと上にいけるのだが、高すぎる点をとりすぎると周りから、特に親から変な期待をされかねない。普通が良いのだ。
「で、テスト対策してるの?」
「してると思う?! 私が!!」
逆ギレされた。
「ったく、しょうがわないなぁ。放課後、勉強会開こうね?」
「やったぁ! 桃花のそいういうとこ大好き!」
「私も(陽菜の馬鹿っぽさが好き)」
予定は私の家で行う。図書室はしゃべると周りに迷惑をかけるし。喫茶店はこの辺あるけど、試験期間は混むのでアウト。
「桃花はほんっと頭良いわね? 勉強しないんでしょ?」
“勉強しない”じゃなくて、“勉強する必要がない”である。ごめんね、天才で。でもまぁ復習はちょっとしようかな。
「復習くらいするよ?」
「復習だけして、テストに出る応用問題も解けるんでしょ?」
「ふふ、コツを掴めば解けるようになるの」
「それ教えて!」
「い、いつも教えてるじゃん......」
コツというか、試験は結局のところ、どこまで難しくても復習の塊である。気づけるかどうかで、問題を解けることに繋がるのだ。
それを毎回陽菜に言っているのだが、どうやら彼女にはそれが至難の業らしい。
「あ、そう言えば、3年になってから、桃花はおばあちゃんの家から通ってるんだっけ」
「そ。一応、おじいちゃんもいるよ?」
「ごめん。でもいいなぁ、家族と離れられるんでしょ」
「そうだね、別に嫌いなわけじゃないけど進路とかしつこくて」
「私も。今朝なんか葵姉に試験のことバレちゃった。家帰るのが怖いよ」
「お、お気の毒に。......葵さん、元気になったの?」
自業自得極まりない。
それに葵さんは風邪だったはず。もう元気になったのかな。おかげで陽菜が部活休むから、私の陽菜成分が足りないよ。
今日は勉強会と称して、成分を補充する目的は陽菜に黙っておく。
「うん。できればもう少し寝込んでほしかったかも。まったく、勘のいい姉は嫌いだよ」
「それ聞かれたら怒られるね?」
「はは。今朝しっかり怒らせときました」
なに、怒らせてきましたって。葵さん怒ると絶対怖いタイプの人間だよ。
放課後になり、試験期間なので部活がないため、下校するのだがこのまま陽菜と私の家に帰るには時間がありすぎな感じがした。
だってまだ1週間前だもん。謎の余裕が湧いてきた。
「ねえねえ桃花、このまま家に直行する前にスーパー寄らない? お菓子とか買ってさ」
「....。」
まさか陽菜と同じ思考回路だなんて......。一生の不覚だね。とてもじゃないが「勉強する気あるの?」なんて聞けない。
黙ってた私に陽菜が心配そうにこちらの顔色を覗く。
「も、桃花?」
「そうだね。今日はお菓子をつまみながら頑張ろうか」
「前夜祭だぁ!」
本当に勉強する気あるのだろうか。
あ、そうだ。お兄さんも巻き込も。
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