第21話 葵の視点  自分って意外ともろい

 朝起きると違和感を感じた。昨日からちょっと喉が痛かった。風邪かなぁ。やだなぁ。


 「どうしよう」


 朝、私は風邪かもしれない症状に悩まされていた。カーテンを開ける。天気は晴れ。仕事日和だ。


 今日は金曜日。今週の水曜と木曜の2日続けて雨が降っていた。たぶん原因はその2日間、雨の中、夜まで時々外で仕事していたからだろう。あー風邪には気を付けなきゃいけなかったのにぃ。


 「うーん。皆にうつさないようにマスクすれば良いかな」


 とりあえず、他人にうつさないように玄関に寄って、置いてある使い捨てのマスクを取ってから、リビングに行く。


 「なに葵、風邪なの?」

 「かなぁ、喉がちょっとね」

 

 ガラガラになった声で私は母さんに応えた。


 「ほんとだ。葵姉が風邪なんて珍しいわね」

 「学校は休むのだろう?」


 陽菜と父さんは朝ごはんを食べていた。テーブルの空いたスペースには私と陽菜の分のお弁当がある。母さんがいつも作ってくれるのでとっても助かる。


 「マスクすればギリ行けるかも...........」

 「またそういうこと言って。いい? 休みなさい」

 「でもお弁当が............」

 「そんなの後ででいいでしょう? それにお友達にうつしたらどうするのよ?」

 「うぅ」


 そう言われると痛いよぉ。熱は測ってないけど、これじゃ時間の問題かな。


 「えーっと、それじゃ私行くね? 葵姉、大人しくしててよ?」

 「うん、行ってらっしゃい」

 「気を付けて行ってね」

 「陽菜、部活頑張るのよ? あ、いや、そろそろテスト期―――」

 「行ってきまーーーす!!!」


 陽菜が学校に行く。私に朝練とかはなく、陽菜より少し遅れて学校に行くので陽菜と比べるとゆっくりである。


 私は朝ごはんを食べながらため息をつく。


 「はぁ、何しよ」

 「暇なの? よし、仕事はたくさんあるんだ。まずはネギ畑の草む―――」

 「あなた」

 「わかってます。..........葵、部屋で大人しくしてなさい。薬も飲んでね」


 風邪なんてここ数年ひいてないから急に暇になった気分。そうだよね、父さんのいう通り、ネギのとこの草むしりやらないといけないんだよなぁ。なんで風邪ひくんだろ。バカみたい私。


 「なんというか、ごめんなさい」

 「「?」」

 「ほら、本当は日曜日の直売店に出す野菜は今日から少し取り始めるじゃない? 他の仕事もあるのに風邪なんかひいちゃって」


 金曜日は週で1番お客さんが来る日曜日の準備を収穫し始める。私はいつも学校終わって帰宅したらすぐに取り掛かるのだが、この調子だと難しい。その分二人に迷惑をかけてしまう。


 「それくらい平気よ、この人に頑張ってもらうから」

 「そうそう、大したことないよ.....って、真由美!」


 「ふふ、冗談よ」

 「まったく君の冗談はまるでチッパーをやらせた高橋君の仕事ミス並みに冗談通じないよ」


 「なにかしらそれ、初耳なんですけれど」

 「あっいや、これは」


 私は巻き込まれないよう早々に自分の部屋に戻った。


 暇だよぉ。一応、薬はさっき飲んだし、あとは寝て治すくらい。本でも読もうかな。あっいや、この前、高橋君に教わったスマホの復習でもしようかな。こういう時間があるときに使って慣れていかなきゃ。


 「ここはこう。それでこうかな。それと」


 いつの間にか私は寝落ちしていた。




 「んん、まだ痛い。いや、少し楽になったかも」


 起きたら14時43分と時計に表示されていた。昼食の時間は過ぎたが眠気のせいかお腹が減らない。こういうのは栄養とっておとなしく寝ていればすぐ治るんだけど、食欲が全然わかない。


 「す、少しだけなら動いても平気だよね?」


 そう言って私は着替えて外にでた。


 「あら葵、動いて大丈夫なの?」


 母さんが、心配そうに言ってきた。スナップエンドウの収穫をしてきたのかな。軽トラの荷台にはスナップエンドウの入ったコンテナがあった。


 「うん。薬のおかげかな?」

 「ならいいけど、でもまだ安静にしていたら?」

 「大丈夫、大丈夫。ところでソラマメはまだだよね? 採ってくるよ」

 「そう? 無理しないでよ」

 「うん」


 別に草むしりみたいな体力仕事じゃないし、少しくらい平気だよね。歩いて5分ほどの畑にソラマメがあるので私はそこへ向かった。


 帰ったら陽菜が居た。どうやら部活はお休みして仕事を手伝ってくれるらしい。私は本当に良い妹をもったなぁ。


 そういえば千沙は元気にしているかな。農業機械科高校に入って2カ月は経つ。どうやら1年間の寮生活を希望して行ったみたい。1年間家族が1人減ると思うとお姉ちゃん寂しいよぉ。まぁ夏休みに会えるらしいけど。




 そして次の日、私の風邪が悪化した。


 「うぅ、どうしよう」

 「ほら言ったじゃない。安静にしてなさいって」


 明日の準備があるのにぃ。それに彼がこれから来るし、どうしようかな。母さんも父さんも今日は収穫で忙しいし、陽菜も手伝ってくれるからたぶん大丈夫だけど、彼の仕事どうすればいいかな。


 収穫なんて大してやらせたことないから、いきなりは難しいだろうなぁ。それともお任せで草むしりとか草刈りなんかはどうだろう。


 「とりあえず寝なさい」

 「はぁい」


 私は熱を測った、38.2と表示される体温計を見て、改めてショックをうけた。


 「普通に高熱だ」


 私は薬を飲み、しばらくして副作用により眠気が引き起こされ眠った。





 起きたら13時24分だった。リビングに行くと誰もいず、テーブルにはラップがかかったお昼ごはんがあった。皆、もう昼食を終えて、午後の仕事をしに行っているんだろう。


 そして突然マスクの片方の紐が切れた。


 「はぁ、ついてない」


 私はまた玄関まで行って新しいマスクを取り出す。


 「こんにちはー」

 「っ!?」


 高橋君がアルバイトに来ちゃった! そうだよアルバイトの時間じゃん!!

どうしよ誰もいない。とりあえず会って事情を話そう。なんで皆居ないのかな。陽菜辺りいつも彼を待っているくせにぃ。


 「こんにちは」

 「こんにちは。って風邪ですか!? 大丈夫ですか!?」


 あ、寝巻きで来ちゃった。



――――――――――――――


すみません、『葵』を『陽菜』とめちゃくちゃ間違えてました。修正しました。

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