第8話 まさかの4人家族


 「こいつ誰?」

 「うちで雇ってるバイトの斎藤 光彦君だよ。言わなかったけ。知らない?」


 雇い主がバイト野郎の名前を1ミリも覚えてないことが発覚。


 「知らない、というか言ってよ! そういうことはちゃんと!」


 俺も知らないそんなバイト野郎の名前。


 「正しくは高橋 和馬です」

 「そうそうその名前」


 よく思い出した感だせんな。さっき迷わず即答してたくせに。


 というかパパって君、中村家の子なの? さっき雇い主がポニ娘をって言ってたな。え、その胸で? 葵さんの妹だよね? まーじか。別に大きいほうが好きってわけじゃないけど。


 「え? なんで? うち、アルバイトなんか募集してなかったじゃない」

 「いや和馬くんが急にね。俺もびっくりしたよ。よくバイトしに来たなと」

 

 それはアポなしで来たという常識がなっていないことの文句か、それとも農家でアルバイトという珍しさの方か、答え次第でバイト野郎は軽く傷つく自信がある。


 じーっと俺を見つめるポニ娘こと陽菜ちゃん。


 「ふーん。そう、アルバイトねぇ.....」


 雇い主は陽菜ちゃんに訊く。


 「なんでここにいるの? 部活はもう終わったの?」

 「葵姉あおいねえが『少しやったけどまだ終わってない』ていうから草むしりしに来たの。キャベツ畑ここ、家から歩いて10分もしないで着くし。部活は午後お休みなのよ。だから久しぶりに家のお手伝いしようとね。で来たらよ」


 “これよ”て俺か。俺が最後までやったからやること何もないよ陽菜ちゃん。


 「...ほんと綺麗にしてくれたわね、ありがと」


 褒めてくれた陽菜ちゃんの顔は笑顔でめちゃ可愛い。やはりあの葵さんの妹なだけはある。思わずドキっとしてしまう。

 

 なにかキャベツ畑に思い入れでもあったのかな? んなわけないか、畑なんかに。まぁ仕事だからね、そりゃ頑張りますとも。


 それから俺たちは帰宅した。雇い主は軽トラで来たため先に帰ったが、バイト野郎とポニ娘はお互い自己紹介含めて話すことがあるため歩いて帰った。


 「へえ、あんた高1なんだぁ。私とあんま変わんないね? 私一個下よ?」

 「自分ももう少し歳が離れていると思ってました」


 小さいしな、どこもかしこも。


 「.......見た目で判断したでしょ?」


 そう言って陽菜ちゃんは右手で胸を隠すようにして俺に言った。無意識に貧乳を見てたかもしれないな。目線でばれたのか。さーせん。


 「..................いえ」

 「なによ今の間!? うっわ、ほんっとこれだから男は最低なのよ!」


 即答出来なかった素直な自分にカンパーイ。正直はときに人を傷つける。肝に銘じよう。


 「いい!? 今に葵姉みたいに大きくなるんだから! きっとこれはまだ成長期が来てないだけ!」

 

 自覚あったんだな。そりゃ身近におっぱい兵器がいたら警戒するよな。大丈夫、バイト野郎は巨乳や貧乳で差別しないから。美乳派だから。..........話題変えよ。


 「そういえば部活は何をしているんですか?」

 「あんたねぇ。..........バド部よ。中学から始めたわ」


 へえ、バドミントン部か。遊ぶ程度しかしたことないからルールとかわかんないや。

 

 「でもね最近、ちょっと迷っているのよね」

 「何がですか?」

 「部活にもっと力をいれるか、家業を手伝うかをね。今更だけど」

 

 なるほど、バイト野郎が今まで中村さんの家に行っても陽菜ちゃんが居なかったのはバドミントン部の活動をしていたからか。


 「......相談したいんだけど聞いてくれない?」


 上目遣い可愛いな陽菜ちゃん。


 でも長くなりそう、その話。そもそも俺ら会って30分もしてないのにそんな話する? もっと仲良くなってからというか、俺を信用してなのか、そんなんでいいの? 悩み深そうなんですけど。


 まぁ頼られたら頑張って相談に乗るよ。


 歩いて10分せず中村家に着くはずなんだが遠くに感じるのは気のせいか。憂鬱である。

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